今までのスマートフォンは「ITリテラシーの高い人が使うもの」「法人ユーザーがビジネス用途に使うもの」というイメージが強かった。実際、ドコモも2008年冬モデルから「PROシリーズ」にスマートフォンをラインアップし、実用機能を重視してきた。
そんな中、ドコモが4月に発売を予定している新モデル「Xperia」は、4つのシリーズのどれにも属さず、同社がこれまで投入してきたスマートフォンとは位置づけが異なる。ケータイとWebのコンテンツをシームレスに表示する「Mediascape」、友人とのコミュニケーション履歴を一括またはアドレス帳ごとに表示する「Timescape」といった新しいUI(ユーザーインタフェース)を採用し、これまでにないエンタテインメント機能を追求した。タッチパネル対応の4.0インチフルワイドVGA液晶や810万画素カメラ、1GHz CPU、高画質モードのYouTube、上り最大2.0MbpsのHSUPAに対応するなど、ハードウェアの性能も高い。
1月21日にはXperia単独の発表会を実施したことからも、ドコモの同モデルへの意気込みが感じられる。Xperiaは今春から世界で発売されるが、“日本版Xperia”としてドコモがこだわった部分とは。そして、Xperiaの先に目指すものとは。同社 プロダクト部 第五商品企画担当課長の仲田正一氏と、プロダクト部 第五商品企画担当の小野木雅氏に話を聞いた。
ITmedia まず、日本でXperiaを発売するあたり、ドコモとしてこだわったポイントを教えてください。
仲田氏 2009年は「BlackBerry Bold」や「T-01A」など、薄くてスタイリッシュなスマートフォンや、日本初のAndroid端末として「HT-03A」を発売し、ユーザーの裾野を広げることを狙いました。そして今回のXperiaは、お客さんにもっと楽しんもらうことをコンセプトとしています。Xperiaそのもののデザインのよさはもちろん、MediascapeやTimescapeなど新しい感覚で使えるUIを用いて楽しんでもらえる商品を目指しました。
ITmedia あらためて、Xperiaの目玉ともいえるMediascapeとTimescapeは、何が新しいのでしょうか。
仲田氏 音楽再生中や写真表示中にInfiniteボタンを押すと、関連する楽曲コンテンツや人物とのコミュニケーション履歴を表示するなど、さまざまな機能がシームレスにつながっているところです。
ITmedia 日本独自の機能として、日本語入力システムに「POBox Touch 1.0」を採用しています。ここにはソニー・エリクソンのこだわりが感じられます。QWERTYキーでPOBoxを利用できるのはXperiaが初めてですね。
仲田氏 はい。QWERTYキーボードでは、かな入力モードにするとキーから「Q」が消えます。これはQから始まる日本語入力はないためです。1文字入力をすると、次に入力されるであろう文字、つまり必要なキーだけが表示されます。かな入力モードとアルファベット入力モードではキー配列が異なるので、表示中のモードが分かります。この操作性は、ソニー・エリクソンさんと一緒に相談しながら開発を進めました。
ITmedia ソニー・エリクソンがXperiaの開発を進めるにあたり、ドコモはどのような形で関わったのでしょうか。
仲田氏 ベースとなる部分はグローバルモデルと共通ですが、我々が発売するにあたり、「日本のお客さんにとって使い勝手がいいものは何か」を考えました。ドコモのネットワークへしっかり接続できて、今までのFOMAと同じ品質で使えることはもちろん、使い勝手やパフォーマンスも議論しました。もちろん、XperiaはFOMAプラスエリアにも対応しています。
ITmedia パフォーマンスというと、ソフトウェア全般の動作速度が気になりますが、ここも重視したのでしょうか。
仲田氏 お客さんが普段使う中で不満にならないレベルになるよう、ソニー・エリクソンさんと相談しました。最終的にはソニー・エリクソンさんのエンジニアが調整しますが、日本のお客さんに満足いただけるよう、アドバイスしました。また、1GHzのCPUを搭載しているので、例えばHT-03Aと比べても、体感速度はかなり上がっています。
小野木氏 特に、Mediascapeはメインのエンターテインメント機能なので、音質や、マルチタスクが音楽再生の操作に影響を及ぼさないかといった点をしっかりチューニングしています。
ITmedia TimescapeやMediascape周りのユーザーインタフェースは、ソニー・エリクソンが主導となって決めたのでしょうか。
仲田氏 はい。デザインやUIはソニー・エリクソンさんのアイデンティティなので、損なわないよう尊重しました。
ITmedia 開発ではどんなところに一番苦労されたのでしょうか。
小野木氏 汎用のプロセッサ上でマルチメディア機能を実装したところです。Xperiaはソニーブランドの端末なので、音楽機能にこだわるお客さんは多数いらっしゃいます。音楽に特化してハードをチューニングしたわけではありませんが、そういった方々にも納得いただける音質や再生機能を実現できたと思います。
ITmedia ソニー・エリクソンオリジナルのイヤフォンも同梱していますね。
小野木氏 実はこの同梱品にもこだわっています。グローバルモデルのイヤフォンはインナーイヤー型ですが、日本モデルでは、音漏れの少ないカナル型にグレードアップしています。最初は海外と同じイヤフォンをソニー・エリクソンさんから提案を受けたのですが、これではパンチが弱いと思い、変更していただきました。またmicroSDも、海外版は8Gバイトですが、日本版では16Gバイトのカードを同梱しています。
ITmedia ほかに、日本向けモデルとしてこだわったポイントはあるのでしょうか。
小野木氏 (初期状態で)TimescapeのSNSに登録できるサービスは、グローバルモデルではTwitterとFacebookのみですが、日本モデルではmixiを追加しています。Twitterは日本でも普及し始めていますが、Facebookの認知度はまだ高くありません。やはり日本で普及しているSNSはmixiだと思うので、ソニー・エリクソンさんに提案しました。mixiのデータは日記が最新5件、アルバムは最新7件をTimescape上に表示できます。
ITmedia GREEやモバゲータウンなど、ほかのSNSをTimescape上に追加できれば、さらに楽しくなりそうです。
仲田氏 TimescapeやMediascapeは、「UXプラットフォーム」上で動いています。ソニー・エリクソンさんは、このUXプラットフォーム上で動作する開発キット「WebSDK」を提供しているので、開発者がプラグインのような形で機能を追加できます。そういう意味では、ほかのSNSが追加される可能性はあるでしょう。
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