かさむXGP投資、PHSとの両立が難しく――ウィルコム 久保田氏経営破綻の背景は

» 2010年02月18日 20時17分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 ウィルコムの代表取締役社長を務める久保田幸雄氏が会見を開き、会社更生法申請の背景と今後の再建策について説明した。今回の申請は、XGPへの投資がかさみ、PHSサービスとの両立が難しくなったためと説明している。

 なお、現在提供しているウィルコムの通信サービスは、継続して提供するとし「安心してサービスを利用していただきたい。今後も端末開発を含め、満足いただけるサービスを提供していく」(久保田氏)と明言した。

Photo 経営破綻を詫び、頭を下げる久保田氏

かさむXGPへの投資、PHSとXGPの両立が難しく

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 PHS事業を展開するウィルコムは、他社にさきがけて音声定額やデータ定額、法人サービスを提供するなど、新たな市場を開拓して成長を続けてきたが、同社が強みとする領域に携帯キャリアが進出し始めたことから失速。契約数が伸び悩み、2009年秋には「月に3万から4万の純減」(久保田氏)となるなど、苦戦を強いられていた。

 同社が次世代高速通信規格として推進するXGPサービスについても、2009年4月にエリア限定サービスとしてスタートしたものの、リーマンショックに端を発した世界同時不況の影響で既存株主からの出資が思うように得られず、技術開発に投資するのが難しい状況となった。

 こうした背景から同社は、2009年9月に事業再生ADRを申請。事業の再生を目指したが、それが市場に悪影響を及ぼし、解約増を招くという“負のスパイラル”に陥った。その結果、「自主再建するシナリオが難しくなった」(久保田氏)というのが、今回の会社更生法申請の経緯だ。

 なお、久保田氏を含めた全取締役は、経営責任を取る形で辞表を提出。久保田氏は管財人として会社に残り、支援パートナーに協力する方向だ。また、今後のウィルコムの体制については、現状では社員のリストラなどで決まったことはないとし「今後パートナーと相談の上、どのような形にするかが決まってくるのではないか」と説明した。

具体的な再生計画はこれから

 同社は今後、企業再生支援機構、ソフトバンク、アドバンテッジパートナーズなどの支援を受けて再建を目指すが、現状、具体的な支援内容や出資額について久保田氏は「支援の要請を正式にしたところで、具体的な出資内容について決まったものはない」というにとどめた。

 なお、一部で報道された、PHSとXGPを分割した形での支援の可能性についても「PHSとXGPは技術的には異なるが、サービスを進める上で共通する部分も多い。事業を展開する上でどうするのが最適なのかを、今後の(パートナー企業との)話し合いで検討する」と、明言を避けている。

ナローバンド市場に可能性あり

 2010年末にはNTTドコモがLTEを導入するなど、モバイルブロードバンドの普及が加速すると予想される中、PHSの存在意義について問われた久保田氏は、どんなに通信の高速化が進んでもナローバンド(低速通信)マーケットのニーズはあるという見方を示した。

 安価なデータ通信は、カーナビやエレベーター、ATM、PCセキュリティソリューションなど幅広い活用の可能性があり、PHSの「音声や情報を安くネットワークで伝えられる」という特徴が生かせると話す。

 同社がPHSで学生向けに提供する、安価な音声定額サービスについても、サービス開始当初はマーケティング予算がかけられなかったことから伸び悩んだが、2009年末には月に2万〜3万の契約を取れるようになるなど順調に推移。2月には対象を大学生にも拡大してさらなる新規獲得を狙う。

 こうしたサービスにはマーケティング投資が必要で、今回の会社更生法申請は、その資金を調達するためでもあると久保田氏。「春夏商戦に向け、できるだけ元気に積極的なウィルコムをアピールしたい」と意気込んだ。

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