ケータイは“共同開発” スマートフォンは“日本向け機能強化”へ――ドコモ09年度決算会見

» 2010年04月28日 23時28分 公開
[山田祐介,ITmedia]

 NTTドコモは4月28日、2009年度の決算を発表した。売上高は前年度比3.7%減の4兆2844億円、営業利益は前年度比0.4%増の8342億円で、減収増益。音声収入や端末販売収入が減少したものの、端末販売コストやネットワーク関連コストを削減し、前年度とほぼ同水準の利益を確保した。

photo 前年度比の営業利益の主な増減要因

 月々の利用料金が安くなるバリューコースの契約増加などが影響し、ARPU(加入者1人あたりの月間売上高)の減少がつづいているが、今後はパケットARPUを増やすことで音声ARPUの減少を補う考え。そのために、2010年度は動画などのコンテンツ事業やスマートフォンの取り組みなどを強化する。同日開催された決算会見では、2010年度に向けた同社の施策が重点的に語られた。

「2010年度に音声ARPUとパケットARPUを逆転させる」

photo 代表取締役社長 山田隆持氏

 音声ARPU減少の一方で、2009年度通期のパケットARPUは前年比2.9%増の2450円となった。2010年度はパケットARPUを2560円にまで上げる目標で、「音声ARPUとパケットARPUを逆転させる」と同社代表取締役社長の山田隆持氏は説明する。逆転してもなお2010年度の総合ARPUは減少する見通しだが、2011年度は下げ止まり、上昇に転じると同社はみる。

 パケットARPU上昇に向けた取り組みとして、2010年度は動画などのリッチコンテンツの充実を図る。ユーザーが100万人を突破した「BeeTV」のさらなる拡大に加え、ディー・エヌ・エーとの合弁会社であるエブリスタが5月中旬に開設するサイト「E★エブリスタ」で、ユーザー参加型のコンテンツ事業に着手する。また、サービスのパーソナル化、地域密着化によるパケット利用の促進も目指す。エージェントサービスを提供する「iコンシェル」は、2010年度には前年度比約2倍の710万契約を目指すほか、都心以外での利用を促進すべく、地方向けサービスを充実させていく。

photophoto ARPUの推移(写真=左)と、端末の販売台数の推移(写真=右)。

 PCデータ通信分野にも大きな期待を寄せている。2009年度のデータ通信端末販売台数は前年度比で2倍ほど伸び、58万台を記録。契約数の純増の3〜4割程度はこれらのデータ端末が占めているという。2010年度は販売目標を約70万台に設定し、PCデータ通信分野でのシェア拡大を目指す。

 現在、同社のパケット定額契約率は約5割だが、2012年度までにパケット定額制契約率を7割にまで増やし、パケット2段階定額の契約者の半数を、定額の上限に張り付かせたい考え。

photophoto 2010年度はパケットARPUが音声ARPUを上回る見込み(写真=左)。パケットARPU向上に向けた施策(写真=右)。

おサイフケータイ対応スマートフォンは「2010年度中」。iPad向けSIM販売も

 インターネットサービスの利用を促進するスマートフォンも、今後大きく伸びる分野としてとらえ、精力的に展開する。4月に発売したAndroid端末「Xperia」は販売台数が「10万台を突破」(山田氏)する好調ぶりをみせている。同端末は秋に最新のOS「Android 2.1」へバージョンアップする予定だ。また、山田氏はスマートフォンに対するユーザーの要望として、iモードなどの従来のケータイ向け機能への対応があると説明。Xperiaは2010年度半ばにiモードメール対応を予定するほか、Android端末向けポータルサイト「ドコモマーケット」における料金代行サービスやコンテンツの拡充も進めていくとした。

photo Xperiaは秋にAndroid 2.1へバージョンアップする予定

 おサイフケータイに対応したスマートフォンを、2010年度中に提供する考えも明かされた。さらに山田氏は、「本年度は無理かもしれないが、iチャネルやiコンシェルのサービスもスマートフォンで使えるようにしたい」と、独自サービスの拡大に意欲を示した。同氏は2010年度の日本市場におけるスマートフォンの出荷台数を約300万台と予想し、そのうちの3分の1となる100万台の販売をドコモの「努力目標」として掲げた。

 携帯電話やデータ通信端末に加え、電子書籍端末やタブレットPCなどの新デバイスへの対応もパケットARPU上昇を後押しするとみる。会見で山田氏は、Appleの「iPad」に関して、「iPadはSIMロックフリーと聞いている。ドコモの回線を使いたいお客様がいるなら回線を提供したい」と話し、SIMカードの販売に向けて準備を進めていることを明かした。

LTEは一部施設で75Mbpsに対応。ケータイ開発は「いろいろと共同でやっていくことが必要」

 2010年12月のLTE運用開始に向け、2010年度はLTE向けに350億円規模の設備投資を想定。まずはデータ通信端末のサービスを提供する。対応エリアは、東京、名古屋、大阪の地域から展開を始める。基本的には下り最大37.5Mbpsのサービスを提供し、空港など一部の屋内施設では2波を利用した下り最大75Mbpsのサービスを提供する予定だ。音声端末向けサービスは2011年度の開始を見込む。

 LinuxとSymbianの両OSに対応したアプリケーションプラットフォームの共同開発に関する言及もあった。山田氏は「共同開発により、動画や音声などに関するアプリケーションソフトを安く開発できる。そうすると、海外での競争力にもつながる」と、取り組みのメリットを説明。「日本の携帯電話も、いろいろな部分を共同でやっていくことが必要」とした。

photo ケータイ開発の分野ではアプリケーションプラットフォームを共通化し、開発コスト削減や国際競争力の向上を図る

 総務省が方針を固めているSIMロック解除について質問が及ぶと、山田氏は「ユーザーからの要望には対応したい」とコメント。ただし、通信方式や周波数帯、キャリアが提供するサービスの違いを例に挙げ、「(サービスが他者では)使えない場合があることは、しっかりと言わなければならない」と話した。

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