ワイヤレスジャパン2010のNTTドコモブースでは、マルチメディア放送(以下、mmbi)が、ISDB-Tmm規格の携帯端末向けマルチメディア放送のデモを実施している。
携帯向けマルチメディア放送は、2011年のアナログテレビ放送の停波後に空いたVHF帯(207.5MHz〜222MHzの14.5MHz)を用いて提供する新しい放送サービスで、2012年の商用サービス開始を予定している。このVHF帯を用いた放送免許を獲得できるのは1社のみ。ドコモやフジテレビらが設立したmmbiと、MediaFLO規格を推進するメディアフロージャパン企画が名乗りを上げている。
mmbiが提供するマルチメディア放送は、リアルタイム型放送(ストリーミング)と蓄積型放送(ファイルキャスティング)の2種類に大きく分けられる。前者は文字どおりリアルタイムで視聴できる映像で、後者は端末に保存されたコンテンツ。ファイルキャスティングは映像のみならず、電子書籍など映像以外のコンテンツの提供も想定されている。いずれも既存の3G回線ではなく、放送波を使って全国一斉に配信できるのが特徴だ。
ISDB-Tmmのコンテンツや対応端末などの詳細は、これまで披露される機会が少なかったが、今回はドコモのスマートフォン「Xperia」を使って具体的なユーザーインタフェース(UI)が紹介されており、デモコンテンツを体験できる。映像の解像度はVGAで、フレームレートは30fps。ブースにはフジテレビが特設スタジオを用意し、お笑いコンビの「どぶろっく」が会場で披露したコントを、ISDB-Tmmチューナーを内蔵した試作機と、Wi-Fi経由でXperiaへ配信するデモも実施していた。
Xperiaのデモに使われていたアプリは「直感的な操作」を目指して開発されている。アプリのトップ画面にはコンテンツ一覧が表示され、任意のコンテンツ(アイコン)をタップすると、番組が小さい枠の中にプレビュー表示される。さらに、この枠をタップすると全画面表示に切り替わる。モーションセンサーと連動した操作法を採用しているのも特徴の1つ。ストリーミング番組の視聴中に端末を90度傾けると、その番組に関連した情報が透過表示され、その裏で映像が流れ続ける。例えば、ニュース番組の視聴中に端末を傾けると、出演しているアナウンサーの詳細情報が表示されるという具合だ。
さらに反対方向へ180度傾けると、視聴中の番組をベースにした関連コンテンツ一覧が表示される。テレビのチャンネルをザッピングする感覚で、「一覧からというよりは、コンテンツ経由で楽しんでもらうことを狙った」という。一方で、ストリーミングについては番組表も用意している。
ほかのジャンルの番組を見たくなった場合、関連コンテンツ一覧の画面左下のアイコンをタップすると、ジャンル一覧が表示され、他ジャンルの番組を視聴できる。デモ機では、ここから雑誌・書籍一覧を呼び出せるようになっていた。ただし、コンテンツのジャンル一覧をトップページから呼び出せる作りにはなっておらず、例えば雑誌を読む際は、番組視聴中に端末を傾けて関連コンテンツ一覧の表示後に、ジャンル一覧を呼び出してから雑誌にアクセスする必要がある。このあたりの操作はやや煩雑な印象だ。
また、トップページでは、どのコンテンツがストリーミングか、ファイルキャスティングかは判別できないようになっている。「あえてユーザーに意識させないようにしている」(説明員)とのことだが、最終的な仕様ではないとのこと。このmmbiのアプリは1年前から開発が始まっているが、今回使われているのは1年前のアプリだという。説明員は「まだ使いやすいといえるレベルには達していない。UIは改善の余地がある」と話していた。
このほか、よく見るコンテンツを「お気に入り」に登録すると、トップページの「お気に入り」アイコンから呼び出して視聴できる。「デスクトップアイコンのようなショートカットとして活用できる」(説明員)
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