ウェザーニューズとKDDI、ケータイ・スマートフォン向け気象情報サービスで提携新サービス「ソラテナ」を開発

» 2010年09月29日 20時14分 公開
[園部修,ITmedia]
Photo KDDI 代表取締役執行役員専務の高橋誠氏(左)とウェザーニューズ取締役の石橋知博氏(右)

 ウェザーニューズとKDDIが9月29日、2社で協業し、11月下旬からauケータイとauスマートフォン向け気象情報サービスを提供すると発表した。

 今回の協業では、現在ウェザーニューズが提供している気象情報「ウェザーニュース」を、KDDIとの協業サイトとして提供するほか、全国約3000局のauの基地局に気象観測設備を設置して気象データを収集し、協業サイトやコンテンツサービスなどで利活用する。また、気象情報にコミュニケーションの要素を組み込んだauケータイおよびauスマートフォン向けの新サービス「ソラテナ」を11月下旬から開始する。

 ソラテナは、基地局に設置された観測装置をキャラクター化し、観測情報を元にした気象情報をつぶやいたり、ユーザーと会話したりする。数値以上の付加価値を持ってユーザーに気象情報を届けることを目指す。月額利用料は無料。

Photo 「ソラテナ」のサービスイメージ

「ユーザーとの接点拡大」を目指すKDDI

Photo KDDI 代表取締役執行役員専務の高橋誠氏

 記者会見で提携の目的を話したKDDI 代表取締役執行役員専務の高橋誠氏は、今回の取り組みが頓智ドットの「セカイカメラ」との連携やRekooと協力して提供する「サンシャイン王国」などと同様、ユーザーとの新しい接点を作っていく施策の一環だと話した。

 「天気は、誰もが1日に1回は気にする情報。そこでKDDIとウェザーニューズは、単なる天気情報ではなく、エンターテインメント要素も取り込み、新しいユーザーとのタッチポイントを作る」(高橋氏)

PhotoPhotoPhoto セカイカメラやサンシャイン王国などと同様に、さまざまなユーザーとの接点を新たに作るのが今回の提携の目的。ユーザー数の拡大につなげる。また基地局に気象観測設備を設置して情報精度を向上させるほか、天気情報にエンターテインメント要素を加えた「ソラテナ」を提供する。サービスはauケータイだけでなくauスマートフォンにも展開する

 具体的には、auのケータイとスマートフォン向けに提供している天気情報サービスに、すべてウェザーニューズと協業した気象情報サイト「ウェザーニュース」を採用し、ユーザー数の拡大を図る。

 ウェザーニューズは、すでにユーザー参加型の天気情報サービスを展開しており、約21万人のサポーターから1日あたり約30万件のリポートを収集し、ゲリラ雷雨情報や桜/花粉/もみじ情報、台風情報、地震情報など、幅広いコンテンツを提供中だ。そしてその情報を参照する約160万人の有料会員と、約2500万人の無料会員を抱える。KDDIのauユーザーは約3000万人おり、ニュースや天気などをプッシュ配信する「EZニュースEX」には100万人超の会員がいる。一部は重複するが、両者がウェザーニュースというサービスで協業することで、ユーザー数をさらに拡大できるというわけだ。

PhotoPhoto ウェザーニュースの有料会員約160万人、無料会員約2500万人と、auケータイのユーザー約3000万人のサービスが連携し、お互いのユーザー数の拡大を図る

 またサービスでの協業に合わせて、全国約3000のauの携帯電話基地局に、気象観測設備を設置して観測精度を向上させる。11月のトライアルサービス開始当初は、首都圏で約100局ほどの基地局にセンサーを設置し、サポーターからの情報などと組み合わせてより精度の高い情報を提供する。その後2011年4月をめどに全国サービスを開始。ウェザーニューズとの協業も4月から開始する。

PhotoPhotoPhoto ウェザーニュースのユーザー参加型気象情報サービスとauの基地局3000局に設置する気象観測設備を組み合わせることで、次世代型気象情報サービスの提供を目指す。また新サービス「ソラテナ」では、気象情報を楽しめるような仕掛けを用意する。ソラテナは11月にトライアルサービスを開始し、2011年4月から全国展開する

 ウェザーニューズとKDDIが提携して提供するサービスは、すべてauケータイとauスマートフォン向けに展開していく計画だ。

ケータイのアンテナピクトで思いついた「ソラテナ」

Photo ウェザーニューズ 取締役の石橋知博氏

 高橋氏の説明を受けてウェザーニューズ側の取り組みを紹介した取締役の石橋知博氏は、「携帯電話の基地局と気象観測機はものすごく相性がいい」と、KDDIとの取り組みが非常に魅力的なものであることを力説した。

 「観測用の機器を設置する際、必ず問題になるのが電源とネットワーク。サポーターの家に機器を設置してもらうときにも、壁に穴を開けなくてはいけなくなったり、電源を苦労して確保したりすることがある。その点、基地局にはすごい品質の電源とネットワークがある。しかも全国に設置されたauの基地局は、非常にいい場所にある。ここに観測機が置けたらいいな、という場所に基地局があり、そこが活用できるとより精度を上げることができる。また基地局は人口密集地に多く設置されている。つまりニーズが高いところに密集しており、需要が多いところで細かい情報が取得できる」(石橋氏)

PhotoPhotoPhoto 携帯電話の基地局と観測機器はとても相性がいいと石橋氏は指摘。その観測機器付き基地局を使って、何か面白いことができないかと考え生まれたアイデアが「ソラテナ」

 こうした優れた観測拠点を有効活用した新サービスとして石橋氏が考案したのが「ソラテナ」だ。もともとケータイの中で一番よく見るアンテナピクトで、うまく気象情報と結びつけた面白いことができないかと考え、アンテナが天気の状況をつぶやく、というコンセプトに思い至ったという。

 「雨が降ってきたら『ポツッときたー』とつぶやく。レーダーに写らないような雨でも、その場で降ったら知らせることができる。あるいは気温が高ければ『暑くてとろけそう』とつぶやく。そういうのがあったら面白いと思った。無機質な情報ではなく、天気というユーザーに近い情報を伝えるためには、エンターテインメント要素が必要だと考えた」(石橋氏)

PhotoPhotoPhoto ソラテナでは、アンテナが自ら気象情報をつぶやき、発信するほか、地域にいるユーザーに対して簡単な質問をし、体感情報を収集する

 ソラテナには主に情報を送信する機能と、情報を収集する機能がある。送信機能は、雨が降ってきたことを基地局周辺のケータイに通知したり、風の強さや気圧の変化、紫外線の強さなどを知らせたりする機能。一方収集機能では、エリア内の人に定期的に質問を送って答えてもらう。例えば「今、半袖?長袖?」といった質問をして、ユーザーの体感情報を集め、得られた情報をコンテンツとして配信する。

Photo 気象情報を予測精度で語るものから情報精度で語るものに変えていきたいと石橋氏は言う

 こうした仕組みができあがると、情報の精度が向上すると石橋氏は指摘する。「天気予報は、予測→実況確認→修正→予測の繰り返し。ソラテナが全国に網羅されれば、実況確認の精度は数段よくなる。詳細な観測情報が得られることで、予測→実況確認→修正のサイクルが強化される」。また、よく天気予報は「予測精度」について議論され、当たったか外れたか、という観点で判断されがちだが、石橋氏は当たったかどうかよりも、予報と実況との差が利用者にどれだけの影響があったのかが問題だと話す。

 「これからは予測精度よりも、情報として何が伝わっていて、その情報がユーザーにとってフィットしていたのか、リーズナブルだったのか、普段のリズムを崩さずに生活できたのか、という『情報精度』を重視する考え方に変えていきたい」(石橋氏)

 余談だが、基地局は位置情報とひも付くので、ソラテナには将来的にスタンプラリーのような機能を入れることも考えているという。

詳細なサービスのイメージはCEATEC JAPAN 2010で展示

Photo 発表会はウェザーニューズが保有する3代目南極観測船「しらせ(初代)」を改修した「SHIRASE」で行われた

 なおこの日は、コンセプトの説明が中心で、実際のサービスイメージを見ることはできなかった。ただ、プレゼンテーションの中に画面のイメージなどがいくつか出てきていて、アンテナがTwitterのようなイメージで気象情報をつぶやいたり、質問をしたり、お気に入りのアンテナを登録しておいたり、実際の観測データを参照したりできるような機能があることは分かる。

 サービスのデモは、10月5日から幕張メッセで開催されるCEATEC JAPAN 2010のKDDIブースで展示する予定で、詳細はそこで初めて明らかにされる。

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