Android、音声通話、SIMロックフリー、データ通信――携帯市場の転換期となった2010年ITmediaスタッフが選ぶ、2010年の“注目ケータイ&トピック”(ライター坪山編)

» 2010年12月27日 10時45分 公開
[坪山博貴,ITmedia]

 2010年はケータイにとって転換期を迎えた年になったと思う。端末はスマートフォンへのシフトが明確になり、データ通信ではモバイルWi-Fiルーターが増加するなど、一時的なキャンペーンも含めてだがキャリアとしては手を付けたくない定額料金(の上限)競争が始まり、あわせてネットワーク利用の平等性を理由に通信速度制限も本格的に開始された。音声通話では、ウィルコムが条件付きながら、国内では実質どこへかけても無料のサービスを開始、そしてSIMロックフリー化への具体的な動きも始まった。

Androidの手応えを確実にした「Xperia」

photo 「Xperia」

 2010年冬モデルでは、各キャリアがFelicaやワンセグなどの国内サービスに対応したAndroid端末を発売し、好調な滑り出しを見せている。国内でAndroidが受け入れられる土壌作りに大きく貢献したのが、ドコモの「Xperia(SO-01B)」だ。

 Xperiaは登場時こそドコモの従来のスマートフォンと同様、キャリアメールなどには一切対応していなかったが、約50万台という記録的な販売台数となった。もちろんエリアやネットワーク品質で他キャリアを圧倒するFOMAネットワークで使えることも支持を集めた大きな理由だろうが、iモードと同じ「@docomo.ne.jp」のメールアドレスを使える「spモード」に対応したことで、キャリアメールにこだわるユーザーの支持を得ることにも成功した。

 ハードウェアはほぼグローバル仕様で、Felicaやワンセグに対応したスマートフォンの増えた今となっては、Xperiaの製品としての旬は過ぎたが、乱暴に言ってしまえば、iPhoneを模したデザインのスマートフォンが多い中で、ソニー・エリクソンらしさが光るデザインは今でも十分魅力的だ。実際、2010年冬、2011年春モデルの発表後にもXperiaを購入した人はけっこう多いと聞く。もちろん実売価格が下がった影響も大きいだろうが、「キャリアメールさえ利用できればAndroidは受け入れられる」ことをXperiaが実証したことは間違いはない。

 一方でAndroid 2.1へのアップデートは提供されたものの、2.2へのアップデートはいまだ明言されておらず、公式にAndroid 2.xへのアップデートが断念されたau「IS01」とドコモの「LYNX SH-10B」とともに、Android端末のOSアップデートについて話題を振りまいた端末でもあった。筆者は2.1でも随分と快適さが増したため、特に不満なくXperiaを利用しているが、日本では実質2年契約で利用する人が多いので、OSアップデートに期待するのも仕方ない話だ。

photophoto 「IS01」(左)と「LYNX SH-10B」(右)

 Xperiaに限らず国内ではスマートフォンのほとんどを販売するのはキャリアだが、そのOSアップデートは主に端末メーカーが担当し、その上でキャリアごとのカスタマイズを施すなど、フィーチャーフォン(従来のケータイ)とは異なる事情も存在する。キャリア目線で見れば、OSのバージョンよりもキャリア独自のサービスをきちんと提供していく方が収益面も含めて重要だと思うが、Androidに関しては、OSのアップデートとともに機能が追加されていくので、ユーザーの期待も大きくなる。そういうOSを搭載した端末を販売していることは、キャリアもしっかりと意識してほしいと思う。

通話の便利さと楽しさを再認識させてくれた「だれとでも定額」

photo 「だれとでも定額」と同時に発表されたウィルコムの「HONEY BEE 4」

 会社更生計画の認可を経てソフトバンクグループとして再出発を果たすことになったウィルコムが開始したのが「だれとでも定額」。月額2430円(新ウィルコム定額S+だれとでも定額の場合)で1回あたり10分、月に500回までの固定網やケータイへの通話が無料となるサービスだ。

 多くの人にとっては通話料削減が魅力に映るだろうが、実際に使ってみて再認識するのは、通話の便利さと楽しさ。今までは通話料金が気になり、通話をためらうような時間帯でもないのにメールで済ませてしまうことも多かったが、だれとでも定額適用後は通話の頻度が一気に増えた。筆者は母親とケータイで家族割を組んでいるので、母親が家にいるような時間帯でもまずケータイに電話するのだが、着信に気がついてもらえず固定電話にかけ直すという2度手間を踏むことも少なくなかったが、だれとでも定額適用後は最初から固定電話にかけるようになった。筆者宅は最寄り駅から徒歩でちょうど10分程度だが、この間に“ちょっと知人と雑談”なんてことも増えている。

 もちろん新たにウィルコムと契約する場合、月額2430円はそれなりの額だし、1通話あたり10分という制限が気になる人も多いだろう。なので「通話は不要」と思っている人にまで勧める気はないが、料金面が理由で通話を控えている人にはぜひお勧めしたい。ウィルコムには通話用、2台目用に適した軽量スリムなストレート端末も多い。特に「ケータイはスマートフォンに切り替えてしまった」なんて人には2台目の端末として魅力的だと思うのだ。

モバイルWi-Fiルーターが増加、料金競争も激化したデータ通信市場

 イー・モバイルの「Pocket WiFi」で火の付いた、WAN側の通信機能も内蔵するモバイルWi-Fiルーターは、2010年にはドコモ、auも対応製品を投入し、全キャリアで製品が出そろった。これでケータイが使える場所なら全国でモバイルWi-Fiルーターが利用可能になった。また、ドコモの公衆無線LANとハイブリッドで利用できる「BF-01B」、Androidスマートフォンとしても使えるイー・モバイルの「Pocket WiFi S」、UQ WiMAXに対応する屋内固定利用に特化した「AtermWM3400RN」など、端末バリエーションも一気に増加して、用途に応じた製品を選べるようになった。

photophotophoto 左から「BF-01B」「Pocket WiFi S」「AtermWM3400RN」

 3G USBモデムを接続して利用する「PHS300」の国内販売やウィルコムのW-SIMに対応する「どこでもWiFi」の登場が2008年秋なので、わずか2年でモバイルWi-Fiルーターはデータ通信市場を席巻する商材になったことになる。

 UQ WiMAXやイー・モバイルが低料金を打ち出していた一方で、ドコモも新規加入から1年間の限定だが、月額5985円から月額4480円まで上限料金を値引きしている。実質2年契約で1年のみ料金値引きというのは正直引っかかる部分もあるが、本格的に料金面の競争時代に入ったといえる。エリア面で不利なイー・モバイルやUQ WiMAX(MVNO含む)は、月額3000円台での攻防に突入している。

photo 「b-mobile SIM U300」

 また、ドコモのMVNOである日本通信が「b-mobile SIM U300」で月額2500円程度で定額利用を可能にしたのも大きなトピックだ。日本通信は従来から用途特化、時間制料金などキャリアとは違う視点のデータ通信サービスを提供していたが、U300では通信速度を最大300Kbpsに抑えることで、接続時間無制限で低料金を実現。実際、300Kbpsもあれば十分な用途も多く、動画を除いたスマートフォン利用もおおむねこれに該当する。通信料金に悩むモバイラーにとって今年の一番大きなトピックは、b-mobile SIM U300の登場だったのではないだろうか。

実質的に始まったSIMロックフリー化

 あくまで国内仕様が関係することだが、SIMロックフリー化も2010年に動き始めた。端末側は日本通信の「b-mobile Wi-Fi(BM-MF30)」、NTT東西がレンタルする「光ポータブル」(SIMロックフリー版、BF-01Bと同様の製品)などSIMのキャリアを選ばないモバイルルーターが正規に国内販売され、年末にはイーモバイルも国内でも他キャリアのSIMが利用できるPocket WiFi Sを発表し、日本通信も同社が国内サポートする形でHuawei製のAndroidスマートフォン「IDEOS」の販売を開始した。

photophoto 「b-mobile Wi-Fi」(左)と「IDEOS」(右)

 音声端末の動きはまだ少ないが、そもそも国内ではネットワークに互換性のあるドコモとソフトバンクでキャリアメールの方式が違うので、現状のままSIMロックフリー化されても大きなメリットがない。SIMロックフリー化のメリットが大きいのはスマートフォンやデータ通信モジュールなので、国内ではSIMロックフリー端末の実質的な流通が始まったといえる。

 通信サービス側ではやはり日本通信の果たした役目は大きい。b-mobile SIM U300や音声通話にも利用できる派生サービスにはFOMAカードを利用しており、それでいてネットワーク側で利用できる端末に制限がないため、SIMロックフリーの海外端末でもFOMAの充実したエリアで安心して音声通話や定額データ通信が利用できる。実質的には本家のFOMAカードでも端末制限は撤廃されているが(ただしFOMA端末以外での動作保証はない)、APNの設定を間違うと定額契約でもパケット通信料金が高額になる危険性がある。

 ともあれ、ユーザーに“速度より低料金”という選択肢が生まれた意味は大きいだろう。

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