「Pocket WiFi S II(S41HW)」(以下、S41HW)などイー・アクセスのAndroidスマートフォン最大の特徴が、端末がモバイルWi-Fiルータになる「テザリング」機能だ。
スマートフォンの通信回線を介してPCやタブレット端末などをネット接続させるテザリングは、実はほとんどのスマートフォンで技術的に可能なサービスだが、キャリアの都合などで無効化されていることもある。またテザリング可能な端末でも、利用時にパケット料金の上限金額が高くなるなど制約が多い。標準的なパケット定額料金だけでテザリングを利用できるイー・アクセスのAndroidスマートフォンは、なかなか貴重な存在といえるだろう。
さて、肝心の使い勝手は、機能のオン/オフは、ホーム画面にあるテザリング用ウィジェットをタッチするだけ、といたって簡単。設定メニューをたどることなく、気軽に利用できるのはうれしい。最初の設定も、セキュリティ設定でパスワードを入れる以外、とくに面倒な作業は必要ない。オンオフや設定などをタッチパネルで操作できるぶん、専用機のモバイルWi-Fiルータよりも使いやすい面もある。
いくらS41HWのテザリングが便利といっても、アクセス速度が遅いとなると魅力も半減だ。そこで、S41HWをテザリング利用した時の通信速度を実際に計測した。スピード計測には、回線速度を“○○級”というカタチでユニークな表現で評価してくれる「ブロードバンド スピードテスト」を利用、計測地点に新宿と飯田橋、三鷹の3カ所を選択して、時間帯を変えてそれぞれ数回速度を計測してみた。
まず、新宿で計測してみた結果だが、通信速度は平均2.84Mbsで“電車級”と判定。PCからのブラウジングでもストレスが少なく、わりと快適な環境という評価だ。次は飯田橋で計測。こちらは平均718Kbsで“軽トラ級”という判定だった。重いデータは、少々厳しいとの評価で、確かに動画の再生では待たされることもあった。最後は三鷹。結果は平均1.29Mbsで“デコトラ級”の判定だった。動画データなども快適に楽しめるという評価で、若干もたつくことはあるものの「遅い」とまでは感じなかった。
全体的な印象としては、ADSL回線程度を利用しているような感覚で、HD動画やFlashを多用した重いサイトを閲覧しない限り、とくに不満を感じることはないだろう。
S41HWのテザリングはWi-Fiだけではなく、PCとUSB接続する方法でも利用できる。PCのOSがWindows 7の場合、接続したいPCにUSBケーブルでつなぐと自動的にドライバーがインストールされ準備完了。S41HWの設定画面を開き「無線とネットワーク」の「テザリングとPocket WiFi」で「USBテザリング」項目を選択すれば、3Gモデムとして使える。
PCと端末を有線接続するメリットは、3G回線側の通信さえ確保できれば、安定してネットへのアクセスが可能な点にある。Wi-Fi接続ではPCとS41HWの距離や位置関係、他の無線LAN機器のノイズなどで通信速度が不安定になる場合があるからだ。安定度が増す分、若干だが通信速度の向上も望める。さきほどの3カ所(新宿・飯田橋・三鷹)ではUSBテザリングもチェックしているが、いずれも2Mbps前後の通信速度で利用できた。
唯一の難点は、設定画面を開かないとUSBテザリングのオン/オフを管理できないこと。Pocket WiFiウィジェットで呼び出せる設定画面にも、USBテザリングの項目はなく、毎回、設定メニューから切り替えなくてはならない。USBテザリングはWi-Fi環境で速度がでない場所などで有効な手段なだけに、いざというときにさっと利用できる仕組みが欲しいところだ。
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