KDDI、韓CDNetworks社を買収――“3M戦略”を加速させる強固なネットワークを目指す

» 2011年10月12日 20時07分 公開
[田中聡,ITmedia]

 KDDIは10月12日、韓国CDNetworksへの出資について、同社株主と同意したことを発表した。KDDIは2011年10月中にCDNetworksが発行する普通株式の85.5%を約1億6700万米ドル(約128億円)で取得し、CDNetworksを連結子会社化する予定。

※初出時に買収額を「約16億7000万米ドル」としていましたが、正しくは「約1億6700万米ドル」です。お詫びして訂正いたします(10/13 20:00)

 CDNetworksが提供しているCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)サービスは、コンテンツプロバイダーが提供するコンテンツサーバから、ユーザーにより近い場所に配置された“エッジサーバ”にコンテンツを一時的に格納、配信し、インターネット通信を高速化するもの。エッジサーバを分散することでネットワークの負荷が軽減し、トラフィックとサーバ負荷を抑えてコストを削減できることが特長だ。ユーザーは、ファイルのダウンロードやWebサイトの画像表示などが速くなるといった効果を得られる。エッジサーバとコンテンツサーバ間の通信手順を最適化することで、コンテンツの表示時間は10分の1以下に短縮されるという。どのエッジサーバを経由するかについては、コントロールサーバ(GSLB)がルーティングして最寄りのエッジサーバに誘導してくれる。KDDIはコンテンツプロバイダーに向けて、インターネット網とCDNを組み合わせた新たなサービスをグローバルで展開していく。

photophotophoto 世界におけるコンテンツデリバリーネットワークの市場規模(写真=左)。コンテンツデリバリーネットワークによって通信時のイライラが解消される(写真=中)。CDNetworksの会社概要(写真=右)
photophotophoto CDNサービスの強み(写真=左)。世界31カ国70都市にエッジサーバを提供している。日本では東京で提供中だ(写真=中)。コンテンツアクセラレーションにより、ダウンロード時間を短縮する(写真=右)
photophoto インターネットのプロトコル最適化により、コンテンツサーバとユーザー間の通信を高速化する(写真=左)。CDNサービスの導入により、トラフィックが10分の1以下に抑えられる効果も出ている(写真=右)
photo KDDI松田氏

 KDDI グローバル開発本部長の松田康典氏は、「今回の出資は戦略的に意義の深いステップ。CDNetworksはここ4年間で年率24%ほど売上を伸ばしている。今後伸びていくことに期待して出資した」と買収の理由を説明する。CDNサービスは韓国、日本、中国、米国、欧州を中心に世界31カ国70都市(エッジサーバの設置個所は130)で提供されている(2011年5月時点)。特にアジア市場で高い競争力を有しており、コンテンツ配信のレスポンス速度は「他事業者と比べて3分の1以下」(松田氏)だという。

 CDNサービスの回線増強は、アジア・太平洋を中心に行い、日本、韓国、中国で足場を固めていく構えだ。「アジア・太平洋のトラフィックは2013年には北米と拮抗し、2014年には世界一になる」と松田氏は予測する。「今までは通信事業者とCDN事業者は別の事業として動いていたが、この2つは補間関係にある。世界の通信事業者はトラフィックの増加に苦しんでおり、設備投資をしてネットワークの容量を上げないといけない。(CDNを活用して)ネットワークをより効率よく使うことで、安価で快適なコンテンツサービスを提供できる」(松田氏)

 日本でもスマートフォンの普及でトラフィックが増大していることを考えると、アジア重視の流れは必然ともいえる。2010年度から2015年度にかけて、日本のモバイルトラフィックは約25倍に増大するとKDDIは予測する。「トラフィック増によってネットワークの容量を拡張することで、コストが増えていく。回線を効率的に使ってコストを抑えることが品質の低下につながる恐れもある。それを解決する方策としてCDN技術が使える」と松田氏は考える。今後はKDDIのモバイルプラットフォームにCDNサービスを取り入れ、モバイルトラフィックの負荷を効率よく軽減していく。

photophotophoto アジア市場のトラフィックが急増していることから(写真=左)、KDDIはアジア太平洋を中心にネットワークを展開する(写真=中)。スマートフォンの普及によりモバイルトラフィックが増加している(写真=右)
photophotophoto CDNによってトラフィックを削減し、コンテンツダウンロードが速くなる
photo KDDI重野氏

 KDDIはかねてから「マルチデバイス」「マルチネットワーク」「マルチユース」の3M戦略を進めているが、CDNを導入することで、3GやWiMAXなどの裏側にあるコアネットワークの強化を目指す。同社 グローバル事業本部 グローバル開発本部 グローバル事業開発部長の重野卓氏は「モバイルの無線部分を速くすることはなかなかできないが、モバイルネットワークの後ろにエッジサーバを置くことで、ケータイには小さいデータを送る、タブレットには大きなデータを送るなどデバイスによってコンテンツの品質を調整できる。また、ネットワークの混雑状況によってビットレートを変えて速度制御をすれば、お客様にストレスを与えずにダウンロードしてもらえる」と説明する。2012年4月の提供を予定している「EV-DO Advanced」に加え、CDNサービスの導入により、auユーザーにとっては理論値からは測れない通信の“体感速度”が向上することが期待される。

※初出時に「EV-DO Advanced」を「EVDOマルチキャリア」と記述していました。お詫びして訂正いたします(10/13 12:55)

photophotophoto CDNをKDDIのモバイルネットワークに導入し、スマートフォン時代に適したネットワークを構築する(写真=左、中)。CDNetworks社買収のメリット(写真=右)

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