Googleが期待する“日本の熱意”/開発者が注目すべきAndroid 4.0の新機能Google Developer Day(2/2 ページ)

» 2011年11月02日 09時18分 公開
[田中聡,ITmedia]
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美しくないアプリは受け入れられない

 「Androidの最新事情」というテーマのセッションでは、ブレイ氏が開発者にとって重要なAndroid 4.0の新機能をいくつかピックアップした。

 ブレイ氏がまず言及したのが「見た目」だ。「アプリ開発者の方は、視覚的な美しさには関心がないかもしれないが、そう考えていたら間違い。アプリはいかに洗練されているかが重要で、美しくないものは受け入れられない。視覚的な魅力で感情的なつながり、絆を築いてもらいたい」と話す。そんな考えのもとにGoogleが用意したのが「Robot」と呼ばれるフォントだ。幾何学的で丸みを帯びているというこのフォントは、「人に優しいもの」を目指したという。Robotは日本語にはまだ対応していないが、日本語向けには「モトヤフォント」が新たに採用されている(参考記事)。

photophoto 「Robot」フォントを新たに用意(写真=左)。左がAndroid 2.3、右がAndroid 4.0のGmail。右の方がシンプルで過度にデザインされていない印象を受ける。このように、Android 4.0では「ソフトウェアと親密になる」UIを目指した(写真=右)

HoneycombのUIを随所で融合

 戻る/ホーム/マルチタスクキーをソフトウェアキーとして用意したことも大きな変更点だ。戻るとホームキーはこれまでもおなじみだが、最近起動したアプリを呼び出せるマルチタスクキーは、割り当て機能という点からも新しい。Android 2.3以前の端末は、ホームキーの長押しで最近使ったアプリを呼び出せるが、一般ユーザーには知られていない知る人ぞ知る操作だという。アプリの履歴を常に呼び出せるボタンがあった方が利便性が高いと判断したわけだ。

 これら3つのキー(ナビゲーションバー)は基本的に常時表示されているが、アプリによって隠すこともでき、小さなドットでの表示(ライトアウトモード)も可能だ。実際、カメラアプリではナビゲーションバーは非表示(黒帯)となる。この黒帯をタップすると3つのドットが現れ、それぞれ戻る/ホーム/マルチタスクキーとして機能する。ブレイ氏は「ゲームアプリの開発者もライトアウトモードを使うことになるだろう」と考える。ただ、ライトアウトモードでは戻る/ホーム/マルチタスクキーの操作が無効になるわけではないので、ゲーム中や撮影中に誤って触れてしまう恐れもある。そうした誤操作をしないよう「ユーザー体験の質を維持することが重要だ」と説明する。

photophoto 戻る/ホーム/マルチタスクキーが表示されるナビゲーションバー。本体を横向きにするとキーも回転する(写真=左)。ナビゲーションバーは非表示にもできる(写真=右)

 Honeycomb(Android 3.x)の人気機能だという「アクションバー」は、アプリの機能ボタンを画面に配置できるもの。ただ、タブレットよりも画面サイズが小さいスマートフォンだとアクションバーの表示が複雑になるので、タブレットでは1行で表示していたものを、2〜3行で表示する必要がある。さらに、Android 4.0では「スプリットアクションバー(Split Action Bar)」を追加し、画面上部と下部に異なる機能ボタンを表示することも可能になる。縦画面+片手で操作することの多いスマートフォンは、画面下部にアイコンが置かれている方が操作しやすい場合が多いだろう。

photophoto Honeycombから採用されている「アクションバー」。アプリごとの操作ボタンが配置されている(写真=左)。タブレットよりも画面の小さいスマートフォンでは上下に分割してアクションバーを表示する方が分かりやすい(写真=右)

 画面上部をスワイプして現れる通知バーは、複数の項目を個別に消せるようになったことが大きな変更点だ。「これまではクリアボタンから一括で消せたが、通知バーの項目は、消したくないものと消したいものがある」とブレイ氏は説明する。さらに、通知バーの各項目の左側には、より大きなアイコンが表示されるので、「高解像度のアイコンを用意する必要がある」。カメラAPIには顔認識機能が含まれるので、これを用いたアプリも増えそうだ。

“長距離通信”ができるWi-Fi Direct

photo ティム・ブレイ氏

 NFCを使った短距離通信「Android Beam」は先にも述べたが、「長距離でも通信ができる』方法として紹介されたのが、Wi-Fi対応機同士で直接通信ができる「Wi-Fi Direct」だ。これもAndroid 4.0から提供される機能で、アプリを使い、アクセスポイントに接続しない状態でも写真や動画の共有が可能になる。「Bluetoothよりも何倍も速くデータをやり取りできる」(ブレイ氏)のも利点だ。その好例が「協調型のゲーム」で、「20台の端末があっても完ぺきに同期できるだろう」とブレイ氏は話す。便利なWi-Fi Directだが、この機能の利用中はアクセスポイントに接続することはできず、「Wi-Fi Direct」と「無線LANによるネット接続」は同時には使えない。

 毎月のデータ通信量を制限できる新機能もユニークだ。この機能では「バックグラウンドでどれだけ通信をしているのか」がアプリごとに分かるので、アプリ開発の視点からも役立ちそうだ。このほか、法人での利用を想定したカメラをオフにする機能、体温計など医療機器とBluetooth接続できる「Health Device Profile」、音声だけで電話をかけられる「Text To Speech」APIなども紹介された。

photophotophoto カメラの顔認証APIも利用できる(写真=左)。Android Beamでは特定のURLにアクセスさせるなど、インテントを利用した通信が可能になる(写真=中)。ネット接続せずにデータを交換できるWi-Fi Direct(写真=右)
photophotophoto カナダ、米国、欧州では携帯電話の請求書を見て、通信料の高さに驚くユーザーが多いという。日本も例外ではないだろう。そんなときに役立つのが、毎月の通信量を制限したり、アプリごとにバックグラウンドの通信量を把握できる設定だ(写真=左)。Webkitベースの標準ブラウザも進化している(写真=中)。BluetoothのHealth Device Profileもサポートしている(写真=右)

 APIをはじめとする開発者向けの情報は、「Android Developers」(http://developer.android.com/)で公開されている。Android 4.0でさまざまな機能が追加されたことで、よりリッチなユーザー体験を得られるアプリの登場に期待したい。

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