ケータイからスマートフォンに乗り換えてまず最初にぶつかる壁が「操作性の違い」だろう。テンキーがタッチパネルに変わり、待受画面の構成も違う。アプリがたくさんあるというが、何を使っていいか分からない――。そんなスマートフォン初心者に向けて企画されたモデルが、ソフトバンクの「Yahoo! Phone 009SH Y(以下、Yahoo! Phone)」だ。同モデルはYahoo! Japanとコラボしており、専用のホームアプリ「Yahoo!ホーム」を搭載するほか、Yahoo! JAPANが提供するAndroidアプリ13本がプリインストールされている。さらに、Yahoo!プレミアムの会費が2年間無料、Yahoo!ショッピングのポイントが2年間で10倍になるという特典も付く。
なぜあえて“Yahoo! Phone”として1つの端末を企画したのだろうか。ヤフー R&D統括本部の開発部長 坂本守隆氏、R&D統括本部 企画の菊地裕信氏、R&D統括本部 プロダクトマーケ 長田健二氏に話を聞いた。
坂本氏によると、Yahoo! Phoneは、ソフトバンクモバイル、シャープ、ヤフーの3社で1年ほど前から開発を進めていたという。ターゲットとしてまず考えたのがスマートフォン初心者。「iPod touchやiPhoneを使っていてタッチ操作を熟知しているお客さんは多くいますが、AndroidはOS、キャリア、端末ごとに挙動が統一されているわけではなく、アンケート調査でも『Androidは分かりにくい』『スマートフォンを買ってみたけど、どうやって使っていいか分からない』といった声が多く挙がりました。ブックマークやアプリのダウンロード方法など、スマートフォンを初めて触れる人の中には、基本的なところが分からない人もいらっしゃいます」と坂本氏は話す。
そこでヤフーが考えたのが「端末を起動して簡単に使えて、必要なアプリをあらかじめ用意する」ことだ。「Yahoo! JAPANは、もともと“インターネットの入口”を強みにしているので、それをスマートフォンでも応用しようと考えました」(坂本氏)
この入り口でこだわったのが、プリセットしたホーム画面「Yahoo!ホーム」だ。Yahoo!ホームは「トップスクリーン」と「カスタマイズスクリーン」で構成されている。トップスクリーンにはYahoo! JAPANのトップがまず表示され、左方向にフリックすると、Yahoo!トピックスをジャンルごとにまとめた「ニュース」、路線や地図などの「地域」、Yahoo!ショッピングやYahoo!知恵袋などの「生活」、トレンド情報を集めた「エンタメ」、Twitterやmixiなどと連動したYahoo!タイムライン、Yahoo!カレンダーなどの「パーソナル」に切り替わる(計6ページ)。つまりホーム画面全体が“Yahoo! Japanコンテンツ”になっているわけだ。
このトップスクリーンは、第1階層のコンテンツについては「圏内にいて端末を起動していれば、裏側で通信をしてある程度キャッシュをしており、電波の届かない場所でも閲覧できる」(菊地氏)という。地下鉄で移動しながらニュースをザッピングしたいといったときに重宝する。なお、より詳しい内容(記事全文)を見る際にはオンライン環境にいる必要がある。
カスタマイズスクリーンには、通常のホーム画面と同じく、アプリのショートカットやウィジェットを自由に配置できる。トップスクリーンとカスタマイズスクリーンは、画面右下のアイコンを押すと切り替わる。常時トップスクリーンを表示させておけば、ユーザーは初期状態からYahoo! JAPANが提供する豊富な情報にアクセスできる。「あらかじめ必要な情報を入れておくことで、初めての人でもヤフーが提供するコンテンツを簡単に閲覧できます」と菊地氏は利便性を説明する。
「ケータイの使い勝手を目指した」(菊地氏)という「メニュー」にもこだわった。通常のホームアプリでは、メニューにはインストール済みのアプリ一覧が現れるのみで、目的のアプリを探しにくいことが多い。Yahoo!ホームのメニューでは「メール」「設定」「電話帳」「ツール」などの項目が5×3(15個)のアイコンで表示される。画面構成もケータイのメニュー画面と似ており、ケータイからスマートフォンに移行したユーザーも迷わず目的の機能やアプリを呼び出せる。このメニューとは別に、ダウンロードした全アプリとYahoo! JAPANの各種Webサービスを呼び出せるボタンも、ホーム画面の左下に用意されている。アプリ一覧は利用順、名前順、新しい順に並び替えることも可能だ。
このように、Yahoo! ホームはYahoo! JAPANのサービスをうまくミックスさせながら、スマートフォン初心者もそうでない人も違和感なく使えるよう考慮されている。菊地氏は「ホームアプリはショートカットの配置やページの遷移を司るのが一般的ですが、弊社の場合はコンテンツも見られた方がいいということで頑張りました。その分、チューニングや社内でのコンテンツの調整が大変でした」と苦労を話す。
ホームアプリの挙動についても社内で検討した。Yahoo! Phoneの端末メーカーはシャープだが、シャープには「バグなどのテストをしてもらった」(菊地氏)のみで、ホームアプリのチューニングはすべてヤフーが行った。Yahoo! ホームはYahoo! Phoneの発売当初は他の機種では利用できず、「反響を見て検討する」(坂本氏)としていたが、現在はAndroid マーケットで無料配信されている。気になる人は使ってみてはいかがだろうか。ダウンロードは以下から。
スマートフォンの入り口を用意するという点で考えると、Yahoo!ホームアプリを配信するだけでよかったようにも思える。しかし坂本氏は「スマートフォン初心者はアプリのダウンロードに行き着くまでが大変」だと話す。「Android マーケットも使いやすくはなっていますが、どこにどんなアプリがあるのかが分かりにくい。初心者にはダウンロードするという行為自体のハードルが高いので、最初からアプリが立ち上がる方が楽だろうと考えました。ここ1〜2年のスマートフォン普及期には、そういうニーズが高いのではないでしょうか。カスタマイズできる設定もありますし、ガチガチに閉じた世界にしているわけでありません」(坂本氏)
あえてYahoo! Phoneを出さずに、例えばソフトバンクのAndroidにYahoo! ホームをプリインストールする方法も考えられるが、「ホームアプリは画面を占有するので、自分でカスタマイズしたい人には邪魔になるかもしれない」(坂本氏)というデメリットもある。「こういった商品(Yahoo! Phone)を出して、どんな反応が来るかをマーケティングしていきたいですね」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.