携帯端末向けマルチメディア放送を手掛けるmmbiは、4月1日に開局する「NOTTV」の番組編成などを公開。この会見に合わせ、NTTドコモはNOTTVを含む「モバキャス」を受信できるチューナーを搭載した「AQUOS PHONE SH-06D」と「MEDIAS TAB N-06D」を発表した。モバキャスは、地上デジタル放送への移行に伴い整理されたV-Highの帯域を利用した携帯電話向けの放送で、ワンセグを進化させた「ISDB-Tmm」という規格を採用している。電波は東京圏の場合、スカイツリーから送出。エリアは開局から1年かけて全国区に広げていく予定だ。このモバキャスで番組を放送するのがmmbiで、NOTTVは放送局という位置づけになる。いくつかの独自番組はあるものの基本的に地上デジタル放送の番組をサイマルで流すワンセグとは異なり、現時点では番組内容から編成まですべてをmmbiが行っている。新たに携帯電話向けの放送やチャンネルが1つ増えると考えれば、イメージを理解しやすいだろう。
同社ではNOTTVを「スマートフォン向け放送局」とうたっており、対応端末はスマートフォンやタブレットになる見込みだ。チューナーは直接端末に内蔵する方法のほか、「Wi-Fiルーターを経由して受信する方法もある」(mmbi 代表取締役社長 二木治成氏)といい、周辺機器としての対応も検討している。料金は月額420円で、チャンネルは3つ。今後は「プレミアム料金を払うと見られる番組も用意していきたい」(二木氏)とし、追加で専門チャンネルを設ける可能性もあるそうだ。また、帯域の空いた時間帯にデータを配信する、蓄積型コンテンツにも対応している。
「今見られる映像コンテンツは無数にある」というmmbiの常務取締役の小牧次郎氏が出した1つ目の答えが、「ライブ放送」だ。NOTTVでは独自に制作した生放送の番組が用意されており、Jリーグの中継なども行っていく。「最も役立つのがスタジアムで、他会場の状況を確認しながらツイートするのが当たり前になる」(小牧氏)といった利用シーンを想定しているようだ。2つ目がニュースで、日本テレビとTBSが制作した専門番組が半期ごとに交代で放送される。「『笑っていいとも』のテレフォンショッキングをソーシャル時代に作ったらどうなるか」(小牧氏)を考えて制作された視聴者参加型の番組や、楽曲配信サービスとも連動する音楽番組にも注力する。その上で、BSやCS、ケーブルテレビからもコンテンツを調達し、編成に厚みを持たせていく方針だ。余談だが、「MediaFLO」という方式を推し、参入をドコモと競ったKDDIグループのケーブルテレビ会社であるJ:COMもNOTTVに番組を提供する予定だ。
では、モバキャスやNOTTVはどの程度の視聴者数を前提にした放送局になるのか。mmbiでは2012年度に100万契約という目標を掲げており、「2015年度を1つの目安として、600万契約ぐらいを確保できれば単年度で黒字になるという見通し」(二木氏)だという。ドコモではモバキャス対応モデルを「2012年度、300万台販売する計画」(NTTドコモ プロダクト部長 丸山誠治氏)を立てており、単純計算で端末を購入したユーザーのうち、3人に1人がNOTTVを契約する見込みだ。2012年度上期中に、未発表の5機種が追加される予定。「秋冬モデルではさらに数が増える」(mmbi関係者)ことになる。ISDB-Tmmは日本の独自規格だが、「グローバル端末も対応していく。上期に発売する5機種にも、そういったものがある」(丸山氏)といい、ワンセグのように幅広く内蔵されていく可能性が高い。参入審査時にはソフトバンクも端末を開発する計画があることが明らかにされており、「システム的には他社も対応できるようになっている」(二木氏)そうだ。
ただし、普及への道のりは決して平たんではない。会見では二木氏が課題として「端末の普及」を挙げていたが、有料放送のため、番組に魅力があると思われなければ、いくら台数が伸びても契約に結びつかないこともある。取材をした限りでは、従来のテレビにはない番組を放送していきたいという意気込みは伝わったが、それがユーザーにどう評価されるのかは未知数だ。また、小牧氏は「料金は決して高くない。むしろ安いかもしれない」と述べていたものの、放送に対してお金を払うこと自体が敬遠される可能性はある。編成を見た限りでは、地上波のようなバラエティは出ていたし、1つ1つの番組のクオリティは高いのかもしれないが、画質のよさや蓄積型コンテンツなどを抜きして考えると、無料のワンセグでも十分質の高いコンテンツを視聴できるからだ。NOTTV以外の放送局が参入していないのも不安要素といえるだろう。番組の詳細が分からないまま契約するのは抵抗があるというユーザーは、対応端末を2週間無料で利用できるキャンペーンを利用し、コンテンツが自分の好みに合っているかどうかを見極めるようにしたい。
シャープが開発した「AQUOS PHONE 104SH」が、間もなくソフトバンクから発売される。この機種は、最新OSのAndroid 4.0をいち早く採用し、防水・防塵仕様を実現。CPUはリードデバイスの「GALAXY NEXUS SC-04D」と同じ「OMAP4460」だが、クロック数は1.5GHzとなっており、1210万画素の裏面照射型CMOSカメラや、720pのHDディスプレイも搭載する。Android 4.0を日本メーカーとしていち早く採用したことからも分かるように、この機種は「グローバルメーカーと戦える、ナンバー1レベルのパフォーマンス」(シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業本部 商品企画部 林孝之氏)を目指したものだ。Android 2.3のときは、OSの発表から初号機の発売までに「約6カ月かかっていたが、104SHはその半分の3カ月でできた」(林氏)というように、最新OSの追求もコンセプトの1つだ。ハードウェアの要件をあらかじめ想定しながら開発しておき、Android 4.0が公開された後、ソフトウェアを実装していく方法で短期間での発売にこぎつけた。
シャープは2011年に組織を変え、「米サンノゼに拠点を置き、シーズやニーズをつぶさにキャッチする組織体制を取っている」という。最新OSへのキャッチアップが早くなったのも、こうした取り組みが功を奏したからだ。シャープの通信システム事業本部 グローバルマーケティングセンター 所長兼プロダクト企画部長の河内厳氏が「メジャーアップデートは大きな流れとしてやらなければならない。お客様が2年間使うことを考え、メーカーとしてもできる限りサポートはしていきたい」と語るように、同社は2月13日に「Android 4.0対応への取り組みについて」と題するお知らせをWebサイトにアップし、ハイエンドモデルを中心にバージョンアップを行う宣言をした。グローバルメーカーでは徐々にアップデートの計画を発表するようになったが、日本のメーカーとしては非常に珍しい。こうした姿勢の変化も、組織変更の一環と見てよさそうだ。
ただ、河内氏は「そこで分かったことを、どのように商品に反映するのかは別の次元」と語る。実際、104SHは短期間で開発したものの、UI(ユーザーインタフェース)にはシャープ独自のカスタマイズが加えられており、使い勝手は標準のAndroid 4.0とは別物だ。例えば、通知パネルにはWi-FiやBluetoothを制御するボタンが付けられていたり、アプリのトレイをジャンル別に分けられたりと、Android 2.x系で好評だった機能が受け継がれている。「システムにかかわることなのでキャッチアップに時間がかかるが、要望が多いのでギリギリで対応した」(通信システム事業本部 グローバルマーケティングセンター プロダクト企画部 澤近京一郎氏)というのぞき見防止の「ベールビュー」も、シャープならではの機能だ。また、2011年秋冬モデルから標準搭載を進めている「エコ技」にも対応。設定内容や使い方にもよるが、バッテリーの持ちは「通常モード」と「技ありモード」で1.9倍ほどの違いが出るという。
UIにはカスタマイズを加えた一方で、おサイフケータイ、ワンセグ、赤外線のいわゆる“三種の神器”は、搭載が見送られた。特に「各種機関の認定や、ドライバ開発に時間がかかる」(林氏)ためで、開発期間を短縮化するための仕様ともいえるだろう。「コンセプトをしっかり見極めた結果で、ネガティブには感じていない」(林氏)というが、売れ筋端末の動向を見ていると、やはり“全部入り”が強い傾向にある。最新OSがいいのか、日本に合わせて徹底的に機能を盛り込んだ方がいいのか――こうした動向を把握する意味でも、104SHは発売後の動向にも注目しておきたい1台だ。
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