ユーザー目線で新時代を先取り auが目指す「スマートパスポート構想」の狙いとは?(1/3 ページ)

KDDIが新時代に向けて踏み出した第一歩。それがマルチデバイス、マルチネットワーク、マルチユースを掲げる「3M戦略」だ。その第1弾となる「スマートパスポート構想」とはどのようなものか。そしてどのような狙いがあるのか。KDDI 代表取締役 執行役員専務 新規事業統括本部長の高橋誠氏に聞いた。

» 2012年03月13日 10時00分 公開
[神尾寿,PR/ITmedia]
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 スマートフォンやタブレットなど“スマートデバイス”の登場と急速な普及により、国内外のIT市場は大きな変化の時を迎えている。スマートデバイスの波は、従来の“ケータイ”から端末の在り方を変え、コンテンツやアプリ(ソフトウェア)のビジネス環境を再構築し、インターネットの姿と役割まで新たなものにしようとしている。モバイルITが、世界を変えようとしているのだ。

 この変化の波から、通信キャリアも無縁ではいられない。とりわけ国内携帯電話キャリアは、2000年代を謳歌した「ケータイの時代」のノウハウを生かしつつ、スマートデバイスとモバイルITの新たな時代への適応を求められているのだ。

Photo KDDI 代表取締役 執行役員専務 新規事業統括本部長の高橋誠氏

 そのような中で、KDDIがこの新たな時代に向けて一歩を踏み出した。2012年1月に発表した「スマートパスポート構想」である。これはKDDIが新時代に対応するための基本戦略「3M戦略」の第1弾であり、今後登場する製品やサービスを貫く指針となるものだ。

 KDDIは「スマートパスポート構想」でどのような世界を目指すのか。そして、この新たな時代にどのような役割を担うのか。ジャーナリストの神尾寿がKDDI 代表取締役 執行役員専務 新規事業統括本部長の高橋誠氏に聞いていく。

「3M戦略」が昇華した「スマートパスポート構想」

――(聞き手:神尾寿) KDDIは2010年末から、マルチデバイス・マルチネットワーク・マルチユースという「3M戦略」を大きく掲げており、今回の「スマートパスポート構想」はその流れを汲む形で投入されています。これは2000年代の“ケータイの時代”とは、経営戦略の舵取りを大きく変えるものになっていますね。

高橋誠氏 「3M戦略」の背景にあるのは、もはや「1つの端末やネットワークだけを使う時代ではなくなった」ということです。コンテンツやネットの利用方法が多様化していますし、その中でシチュエーションに応じて最適な端末やネットワークは異なります。お客様中心において、不便なく快適にサービスをお使いいただくにはどうすればいいのか。そう考えたときに必然的な解になるのが、“3M戦略の世界”なのです。

 この3Mの考えは古くて新しいもので、我々も以前からFMC(Fixed Mobile Convergence=モバイルと固定の融合)の理想像として考えていました。それがスマートデバイスの登場や、コンテンツやサービスのクラウド化が本格化することによって実現可能になってきました。

―― 今年のCESなどを見ても、3Mの1つの要素である「マルチデバイス」などは大きなトレンドになっていました。KDDIが3Mを大きな方針として表明したのは2010年末からですが、構想としてはそれ以前から持たれていたのでしょうか。

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高橋氏 モバイル系の端末・サービスと、固定系の端末・サービスを連携や統合させる取り組みは、2005〜2006年の頃からFMCとして取り組んでいました。しかし当時は、技術進化やお客様側の受容という点で少し早すぎました。お客様側のニーズや周辺市場が醸成される前でしたので、モバイルと固定の両方のサービスを持つ我々(KDDI)の都合であるかのように見えてしまったのかもしれません。やはり、こういうトレンドというものは「タイミングが重要」だと思います。

―― 確かに市場トレンドと合致することは重要ですね。一方で2000年代には、KDDI研究所が異なる無線システム間でシームレスな切り替えを行う「シームレスハンドオーバー」を研究するなど、今の3Mを支える技術開発を続けていました。

高橋氏 先行技術は持っていましたし、技術的なイメージは当時からできていました。しかし、それをお客様側の利便性に直結させることができていなかったのです。

―― そういう意味では、周辺環境は重要ですね。かつては端末とサービスが連携・結合していた方が、多くの一般ユーザーにとって家電的で使いやすかった。しかし、今はあらゆるコンテンツ/サービス分野でクラウド化が進み、ソフトウェア技術やUIデザインも洗練されたことで、特定の端末やネットワークに縛られないことの方が利便性が高くなってきました。周辺環境の変化によって、「使いやすさの定義」も変化したわけです。

高橋氏 ええ。例えば、Gmailのようなものが登場し、スマートフォンで一般化したことにより、“端末に縛られずにメールが使える”方が便利だということが手に取るように分かってきた。お客様目線で、3Mの世界の便利さがイメージ可能になってきたことは重要なポイントですね。

 あと、もう1つ。ここまでお話ししてきたことはお客様目線での変化ですが、事業者目線だと、業界全体でトラフィック問題が深刻化したというのも(3Mが推進される)大きな要因になっています。スマートフォンの普及により、モバイル端末上で扱うアプリやコンテンツが、かつては考えられないほどの通信量を生み出すようになってきました。これを3Gのネットワークだけで支えられるかというと、それは不可能です。

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―― 逆説的というか少し意地悪な見方をすれば、スマートフォンから始まったスマートデバイス化への流れが、単一のネットワークだけでサービスを提供することを不可能にしてしまった。通信キャリアにとっては、好むと好まざるとに関わらず、爆発的に増えるトラフィックを固定網に逃がす「オフロード戦略」を取らざるを得ない状況になったわけです。KDDIは自社の優位性として(3M戦略で)マルチネットワークを掲げていますが、マルチネットワークをやっていかないと立ちゆかなくなるというのは、国内外のモバイルキャリアに共通した課題ですね。

高橋氏 ええ。ただ、マルチネットワークの部分でいうと、そういった(オフロードの必要性という)事業者の都合はありますが、提供サービスとしてはお客様のメリットを第一に考えています。お客様目線で、優れたお客様体験を実現していかないといけません。

 例えば我々は、お客様宅にWi-Fiをご提供して「自宅では、スマートフォンは固定回線+Wi-Fiでお使いいただきたい」と考えています。そこで「HOME SPOT CUBE(Wi-Fi HOME SPOT)」の提供を開始したわけですが、これはWi-Fiの設定が簡単にできるだけでなく、デザイン性にもとことんこだわりました。おかげで生産コストは高くなってしまいましたけど(苦笑)

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2012年4月12日