失敗を恐れず、チャレンジするドコモへ――NTTドコモ 加藤薫社長に聞く(3/3 ページ)

» 2012年07月13日 08時30分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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―― 今秋からはKDDIとソフトバンクモバイルが、FDD方式のLTEサービスを開始します。こちらはドコモのXiとの直接競合になるわけですけれども、今後、どのように競争優位性を打ち出していきますか?

加藤氏 LTEは1年半前からXiとして提供させていただいていて、我々に一日の長があります。今年度中には人口カバー率も70%超にし、これはお客様に直接見える部分ではありませんが、3Gと協調させるネットワーク制御の部分でもノウハウの蓄積があります。

 あと基地局数を見ていただくとお分かりになると思いますが、Xiではエリア内の密度を重視して実質的な使い勝手の向上も重視しています。また、電波を建物内の奥まで届ける(=屋内エリアを充実させる)といった取り組みはこれまで地道に行ってきました。こういった部分は先行優位性と言えます。

―― 一方で、ドコモはWi-Fiを用いたオフロード戦略の部分で、他社より見劣りします。docomo Wi-Fiのスポットエリア自体は急ピッチで増えしているようですが、スマートフォン上でのdocomo Wi-Fiの設定や接続支援アプリのUI、ユーザー宅のWi-Fi化への取り組みはむしろ他社の方が進んでいるのが実情です。

加藤氏 それは我々の反省点で、Wi-Fi活用やオフロードの重要性について、我々の認識が甘かったと言わざるをえません。ソフトバンクさんは早くからスマートフォンでトラフィックが激増し、Wi-Fiの活用とオフロード戦略が重要になると予測されていましたが、ドコモはそれに懐疑的でした。しかし、これは前言撤回しなければなりません。今ではスタンスを変えて、Wi-Fiを積極的に活用するべく、docomo Wi-Fiの見直しと改善を急ピッチで行っています。

―― docomo Wi-Fiのスポットエリアを広げるだけでなく、使いやすさ向上や、ドコモユーザー宅のWi-Fi化サポートなども積極的にやっていく、と。

加藤氏 やっていきます。ドコモとしては、Xiのエリア拡大を愚直に行いつつ、Wi-Fi利用環境の改善や、トラフィック制御の高度化などにもしっかりと投資していく。これからスマートフォンが増えていくことを鑑みますと、インフラについて「これさえやっておけばOK」という簡単な答えはありません。できることはすべてやっていかなければいけません。

総合サービス企業としての強化と、M2Mへの取り組み

―― ここ数年、ドコモは「オークローンマーケティング」や「らでぃっしゅぼーや」「タワーレコード」など異業種企業を買収しています。これらの買収の意図はどのようなものなのでしょうか。

加藤氏 並べてみると脈絡なく買収しているように見えるかもしれませんが(笑)、これはドコモが総合サービス企業を目指すという戦略に基づいて行っています。その走りとなったのがオークローンマーケティングやらでぃっしゅぼーやの買収でした。その後も買収や出資を行っていますが、これは今後も積極的に続けていきます。

 では、この取り組みが何に結びつくかというと、先ほどのdマーケットです。ここでは今後、eコマースやヘルスケア、教育といった具合に生活全般のサービスを用意していくわけですが、その基盤作りのために異業種企業の買収や出資を行っていきます。

―― 今はコンテンツの方が目立っていますが、dマーケットが将来的に広がっていくための布石というわけですね。

加藤氏 そのとおりです。特に(dマーケットは)今後、リアルの方向に進んでいきますので、異業種企業との関わりはとても重要になっていきます。

―― もう1つ提携戦略についてですが、7月10日にスペインのTelefonicaはじめ海外オペレーター6社と、国際的なM2Mプラットフォーム構築を行うと発表されました。これは今後、どのようにビジネス展開していくのでしょうか。

加藤氏 これまでもM2Mへの取り組みを行ってきましたが、この分野に国境はありません。例えば、コマツさんは通信モジュールを用いて世界中の建設機械を動態管理しています。同様のことを自動車メーカーがやられるかもしれない。これからドコモがM2Mに本格的に取り組んでいくとすると、それはグローバルで利用できなければなりません。ですから、海外オペレーターと手を組み、各国の回線インフラをM2Mで使えるようにする枠組みを作ることは(今後のM2Mにおいて)必然だと思っています。

―― ということは、国際M2Mプラットフォームの参加キャリアは今後増やしていくのですか。

加藤氏 当然ながら、増えた方がいいですよね。

―― M2Mは2010年代の成長領域として重要なわけですが、今回の国際M2Mにおける提携はそこを本格開拓する一環である、と。

加藤氏 ええ。M2Mのビジネスは通信モジュールを売って通信料収入を得るという部分だけですとARPUが低いですので、今後はBtoBで“ソリューション”を売るという形になっていくでしょう。

ドコモらしさは「スピード」と「チャレンジ」に

―― 加藤新体制におけるドコモは、これからどのような個性や強みを打ち出していくのでしょうか。

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加藤氏 これは社長就任時にも申し上げましたが、やはり「スピード」と「チャレンジすること」です。今年ドコモは20周年を迎えたわけですが、我々もベンチャー企業だったことに立ち返らなければなりません。失敗があってもいいので、チャレンジを続ける。リトライしていく。そのような取り組みを続ける中で、お客様によりよいサービスが積み上がっていくのが、理想的な形だと考えています。

―― 2000年代後半くらいから、ドコモの創業期からiモード立ち上げ期にかけてあったベンチャー的な前のめり感が徐々に薄れていき、他社の様子を見ながら堅実に振る舞うようになったように思います。新たな分野には後続のポジションから入って実利を得るというスタンスも目立つようになってきましたが、それはこれから変わりますか?

加藤氏 変えたいと思っています。研究開発分野も含めてドコモの底力の部分を積極的に出していき、市場にうまく受け入れられなかったら、修正したり、形を変えてもういちどチャレンジすればいい。失敗を恐れず、チャレンジとブラッシュアップを繰り返しながら、高みを目指していけばいいと思います。

 時代がスマートフォンにシフトしていくことで、今は潮目が変わってきています。ここでじっくりと構えているわけにはいきません。元気なドコモになりますので期待してください。

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