ソフトバンクは7月31日に決算会見を開き、営業利益が7期連続で最高益を更新し、1921億円に達したことなどをアピールした。ソフトバンクの代表取締役兼CEO、孫正義氏は「KDDIと倍以上の差を出すことができた。ユーザー数では我々を上回っているKDDIを、利益率で上回ることができた」とアピールし、2016年に営業利益1兆円を目指す方針を語った。
同社は、傘下のWireless City PlanningのMVNOとしてすでにサービスを展開しているTD-LTE方式(AXGP方式と完全互換とされている)に加え、秋にはドコモやKDDIと同じFDD-LTE方式のサービスも開始する予定だ。FDD-LTEは当初2GHz帯を利用する形となり、下り最大37.5Mbpsを実現する。FDD-LTEだけを比べると速度や利用する周波数帯のバリエーションなどで他社に見劣りする格好だが、孫氏は「我々はすでにTD-LTEを実現している」と述べ、KDDIよりも先行しているとの見方を示した。TD-LTE(AXGP)はウィルコムが売りにしてきたマイクロセルの思想を受け継いでおり、2.5GHz帯という高い周波数帯を利用するが、一方で1つの基地局がカバーする面積は非常に狭い。孫氏によると、こうした点がスループットを出す際に、他社に対しての優位性になるという。
「いまだに新聞、雑誌にはLTE=光ファイバー並みの速度と書かれるが、それは1基地局に1人しかつながっていないときの速度。実際には、1つの基地局に複数のユーザーが同時に接続しにいくため、何人その場でつないでいるかが鍵になる。その点、我々は他社より大きな小セルの数を実現している」
仮に次期iPhoneがウワサどおり2GHzのFDD-LTEに対応したとすると、速度ではTD-LTEを、端末ではFDD-LTEを売りにしていくことになるのかもしれない。
また“スマートフォン向けLTE”については、すでに5985円で定額という料金も発表されている。会見では孫氏も料金に言及する際には、あえてTDやFDDとは言っていなかったが、これは両方の方式でスマートフォン向けのサービスを始めるためだ。2つをどう使い分けるのかまでは明言されていないが、FDD-LTEを開始する際にはTD-LTEとブランドまでそろえ、端末は次期iPhoneがFDD-LTE、AndroidがTD-LTEという形で棲み分けるのかもしれない。なお、Wireless City Planningのサービス開始時には、音声発着信時にTD-LTEから3Gへの切り替えを行う「CSフォールバック」という仕組みに対応したことも明らかにされているため、スマートフォンが登場する可能性は高そうだ。
一方で、スマートフォン向けLTEの5985円は、月額4410円のiPhone向けの「パケットし放題フラット」と月額4935円のドコモのパケ・ホーダイ ライトを考えると、やや強気な設定にも思える。孫氏は5985円という価格の根拠を「これだけ多くの設備投資をし、性能が一気によくなるため」だと説明するが、LTEはビットあたりの単価が低下しているのも特徴だ。「トータルでのさまざまなパッケージを提供するので、一部分を取って見るべきではない。キャンペーンや乗り換え(MNP利用時の特典のことか?)も含め、トータルパッケージで後ほど見ていただければと思う」(同)というだけに、スマートフォン向けLTEのサービス開始時には、一時的な値下げが行われるのかもしれない。ケータイの料金は複雑で高すぎると宣言して新規参入したソフトバンクだけに、ユーザーメリットのある大胆なプランの登場を期待したい。
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