携帯電話の不具合問題を追う〜2 NTTドコモにて(1/2)

携帯電話の不具合に関して,最も気になるのは次のようなことだ。「なぜ不具合が起きるのか?」ここで通信キャリアへのインタビューを試みた。国内の携帯電話の半分以上のシェアをもつ,NTTドコモである。

【国内記事】 2001年6月18日更新

NTTドコモにて

 NTTドコモに取材を行ったのは6月13日,おりしも「SO503i」の回収が始まった日だった(6月12日の記事参照)。

 「この度は大変ご迷惑をおかけしまして,申しわけございません」

 ネットワーク本部サービスオペレーション部長の吉岡義博取締役のそんな言葉から,今回のインタビューは始まった。そして吉岡氏は,SO503iの回収に関して,ユーザーの皆さんにご迷惑をかけたことをまずはお詫びさせてください,と頭を下げた。

 P503i,SO503iと続いた回収騒動。問題となった不具合は,なぜ起こったのだろうか。通信キャリアとしての現在の状況を,吉岡取締役のほか,移動機開発部PDC・PHS移動機担当主任技師の平児玉功氏,広報部の瀬良将史氏に聞いた。

「不具合」の背景1 〜膨れ上がる検証項目〜

 「P503i」「SO503i」共に問題となった個所はソフトのバグだった,と吉岡取締役は話し始めた。iアプリという新しく搭載された技術に,それは起こった。

 「まず原因の1つは,経験が浅かった,ということだと思う」(吉岡取締役)

 携帯電話としての基本機能「つなぐ」「切る」の点に関しての不具合が起こることは,現在ほとんどないと吉岡取締役は言う。「電話」の技術の歴史は長く,積み重ねられたノウハウがあり,開発上のチェック項目も確立されているからだ。

 かつての携帯電話は,電話としての機能とせいぜい9600bps程度の通信ができる,という程度のもので,いわゆる「IT」にはまだまだ遠いものだった。それが今では,一般化するITアイテムの代表として扱われるようにまで進化した。

 「iモード以前は検証項目が3万〜5万件だったのが,今では10万件以上にもなっている」(吉岡取締役)

 iモード以前と比較すると,検証項目は単純計算で2倍から3倍に増えており,それは昨今の携帯電話の高機能化・高付加価値化を考えればやむないこととも思える。

 また,平児玉氏によると,その高機能を実現する携帯電話に内蔵されるソフトウェアの容量も3〜4倍に増加したという。これはiモードやJava機能の追加によるものだ。携帯電話の高機能化とそれに伴う便利さは,ひとえに,この増大量に粛々と立ち向かう通信キャリアや端末メーカーの努力によって成り立っている。

 とはいえ,高機能化した端末の検証時間がたっぷり用意されているかというとそうでもない。検証項目は増えているが,端末の開発期間はしだいに短くなり,ドコモだけでみても各メーカーは年に2回程度,新機種を投入している。

 ユーザーからはリリースのサイクルが早すぎるために開発が追いついていないのではないか,との声も挙がっているが,

 「間に合わないからペースを落とす,という後ろ向きの考えよりも,技術を改善して,より満足してもらえるものを作っていきたいと考えている。もちろん,開発をおろそかにしてリリースを早めるということでは,決してない」(瀬良氏)

「不具合」の背景2 〜開かれたシステム〜

 「不具合の起こってしまったもう1つの原因は,携帯電話がインターネットにつながった,ということだ」(吉岡取締役)

 以前は専用端末と閉鎖されたネットワークで完結していたシステムが,iモードの登場によりインターネットという外の世界へ開いてしまった。それによって「手の内にないもの」が増えてしまったのだ,と吉岡取締役は言う。

 iモードで見られる,またiアプリでダウンロードできるコンテンツは,どんなものが作られるのか完全に予想できるわけではない。だから,どんなことが起こるかおおよその可能性を想定して検証することはできるが,それで完全だとは言い切れない。

 その例が,今回のSO503iに起こった問題だった。まさに,どんなコンテンツが作られるか分からない,という部分を突かれた形となった。

 「今回のSO503iの問題に関しては,いわばハッカー(の仕業)みたいなものなんです」(吉岡氏)

 今回のSO503iの回収を決定する以前より,NTTドコモではその理由となったプログラム上の問題について認識をしていた(4月20日の記事参照)。ゆえにその当時,ユーザーに対してはコンテンツを作る際の注意事項として「こういうことをすると,こういうことが起きる,だからやらないで下さい」というお知らせをしていた。

 だが,そこから技術的な裏をかくような形でプログラムを作り,「ユーザー情報が漏れる」と提示した人がいたのだという。それを知って,NTTドコモは即座に発売停止を決定した。

 今回のSO503iのケースでは,以前に回収されたP503iに比べ,発売から時間が経ってからの回収になってしまった感もある。そのせいで回収台数が膨れ上がったのでは,との問いを,吉岡取締役は明確に否定した。

 「それは対応が遅れたわけではない。SO503iでは,問題の発覚が遅かったというだけで,それが分かった後の対応は迅速に行われた」(吉岡取締役)

 必要性があると判断されれば,その後のアクションは迅速に行える体制が整っているということだろう。発売停止の伝達や,回収交換の準備は速やかに行われたと吉岡取締役は言う。

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