ワイヤレス業界を「パートナーシップ」で結ぶPacketVideo

PacketVideoが16日発表した「PacketVideo Global Developer Network」およびPacketVideoのビジョンについて,同社のアプリケーション&サービス・ディビジョンのプレジデントであるRobert Tercek氏に話を聞いた。

【国内記事】 2001年7月17日更新

Photo
左からクリエイティブディレクターDavid Collier,アプリケーション&サービス プレジデントRobert Tercek,ディレクターAlesia Gainer

PacketVideo Global Developer Networkとは?

 PacketVideo Global Developer Networkというのは,デベロッパーがPacketVideoの技術を用いて,携帯電話やPDA向けにアプリケーションを制作できるようにするための支援プログラムである。

 ここで注目したいのは,“アプリケーションを制作するためのプログラムである”という点だ。従来の同社の技術は「PVPlayer」というプレーヤーを使ってMPEG-4動画を再生することが中心であったが,今回のプログラムによって,このMPEG-4の技術をベースにゲームやメールといったさまざまなアプリケーションを開発する環境を整えたということになる。

Tercek氏「携帯電話などのメディアはどのように使われていくのか,予測は非常に難しい。そこで我々は,デベロッパーに対して我々のプラットフォームを公開して開発を促進するため,今回のPacketVideo Global Developer Networkを発足させた。これはツール,技術/マーケティングのサービス,他社とのパートナーシップという3つの要素で構成されている。」

 「ツールについて例を示すと,例えば『Authoring ToolKit』を使えばオーサリング機能をアプリケーションの中に組み込むことができる。こうすることによって,例えば,携帯端末側からライブカメラをリモートでコントロールするといったことができる。またゲームを作る場合,我々のオーサリングツールを埋め込めば,ゲームの中でビデオをエンコードしてストリーミングするといったことまでできる。」

 「またPlayer Toolkitによって,我々のプレーヤーをアプリケーションの中に埋め込むことも可能になる。この場合,1つのアプリケーションに統合されているから,Webサイトのように別ウィンドウが開くというのとは違う。」

 このように,自社技術を惜しみなく提供し,他社と協調しながら展開を図ろうというのがこのプログラムの特徴である。

 さらに,作成されたアプリケーションについては中立の第三者機関によって認定試験が行われ,合格すれば,PacketVideoシールが貼られるという。

Tercek氏「このことによって,デベロッパーはPacketVideoプラットフォームを持っているすべてのユーザーをビジネスの対象にすることができる。」

 「我々は,あらゆる関係者を1つの円とすることを目標としている。そのため,ワイヤレス通信業者にコンテンツ制作業者を紹介するといったこともやっていく。」

「真のMPEG-4」だから注目される!

 こうした「1つの円」を目指す上で,日本という市場は決して軽くは見られていないはずだ。事実,今回発表されたプログラムの創設メンバーの中にも,日本のオルカビジョン,The Media Studioといった会社が名を列ねている。当然,日本の携帯電話についても視野に入っているはずだが……。

Tercek氏「いい質問だ。現段階で詳しく答えられないが,日本市場についてはじっくり見守っていただきたい。」

 「1つ言えるのは,世界中の通信業者がワイヤレスのマルチメディアに関心を持っている中で,特に我々が注目をされているのは,我々がMPEG-4,Javaといったスタンダードを遵守しているからだということ。」

 「我々のMPEG-4は3GPP(3rd Generation Partnership Project)に準拠しているが,これはとても重要な差別化だ。真のMPEG-4はオープンな規格だから,PacketVideoでエンコードすれば,あらゆるデコーダでデコードできる。」

 「しかし,それを採用しない会社もある。多くは言わないが……。そうすると,ワイヤレスのオペレーターは,1社の技術に依存しなければならないという困った事態が生じてしまう。」

 お分かりであろうか? ターセック氏がいうMPEG-4というのは,ファイルフォーマットとしてのISO標準のMPEG-4である。これに対して,マイクロソフトがWindows Media Technologyの中でいっているMPEG-4というのは,MPEG-4の中のビデオコーデックの部分のみを指しているに過ぎない(Windows Media Technologyは独自規格である)。

 PacketVideoの言うオープンな仕様はユーザーにとってありがたいものだが,同じコンテンツをあらゆるプレイヤーで再生できるというのは,競合も多いということになる。何といってもオープンスタンダードなのだ。

Tercek氏「その通り。一生懸命競争しなければならない。だからこそ我々はパートナーとの提携という道を選んだ。」

 「我々は,競争の中で成功するために最高のパートナーに最高のメリットを提供していこうと思っている。会社によってはパートナーの技術を盗むこともありますが,そういうことはせずに協力していくというのが,我々の理念だ。」

携帯端末ではパーソナルなコンテンツが求められている

 同社は,競争の中で生き残るためにもパートナーシップを非常に大切にしているというわけだ。この戦略によって,携帯端末ストリーミングの中のリーダー的な存在になる可能性もあり得るのではないだろうか。

 こうなってくると,「携帯端末に向くコンテンツとは何か?」という質問をぶつけたくなってしまう。

Tercek氏「ユーザーが望んでいるのは,テレビや映画のようなコンテンツではない。短時間のもので,ニュース性を持ったタイムリーでフレッシュなコンテンツだ。そして自分の子供の映像といったパーソナルなコンテンツ,ローカルなコンテンツなどだ。」

 「調査で一番人気が高かったのはライブカメラのアプリケーションだった。家庭の子供の様子,交通情報や天気を写したものなどだ。次がビデオメール,ビデオ付のメッセージで,その後にシティ・ガイド的なものが続く」

 「携帯端末では,世界中に発信するインターネット全般とは異なり,逆に個々のユーザーに向けて発信するコンテンツが求められているようだ。ですから,大手のメディア会社が持っているコンテンツも,携帯に流す場合には形を変える必要があるだろう。」

 「PDAはペンを使って画面に触れて操作する。将来のSmart Phoneもそうなると思う。自分により近いところでインタラクティブに操作できるわけだ。自分が主導権を握るという行為に,携帯端末は向いている。逆に,テレビのリモコンはインタラクションに向いていないと思う。」

シャープのLinuxベースのPDAにも搭載,その後は……

 やはり,既にコンパックやカシオ計算機のPocketPCで採用されているだけあって,PDAという機器の特徴をよく捉えている。ほかのOSのPDAへの展開はどのように考えているのだろうか?

Tercek氏「シャープのPDAでLinux OSを搭載したものが出荷されるが,これに我々の技術が搭載されることになっている。我々はOSに関してニュートラルだから,携帯電話においてもpSOSなどのOSでも動いている。Linuxでも走るようになるわけで,電話においても,今後,我々の技術がどんどん使われるようになってくるはずだ。」

 つい最近まで,自社のPDAで“真ではないMPEG-4”,つまりWindows Mediaフォーマットを採用してきたシャープまでが“真のMPEG-4フォーマット”を採用するようになったのである。

 この先,携帯端末の動画のフォーマットは真のMPEG-4,ということになっていきそうな気配である。そうなった時に,PacketVideoの知名度はきわめて大きなものになっているに違いない。

[聞き手:杉浦正武,姉歯康/文:姉歯康,ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.



モバイルショップ

最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
第3世代インテルCoreプロセッサー搭載PC ドスパラはスピード出荷でお届けします!!

最新スペック搭載ゲームパソコン
高性能でゲームが快適なのは
ドスパラゲームパソコンガレリア!