テレビ朝日，モバイルインターネット戦略を語る - Wireless Conference 2001

テレビ朝日は7月18日，Wireless Japan 2001のカンファレンスで，同社のモバイルインターネット戦略を語った。ブロードバンド化に向けてクロスメディアを実践していくという。

【国内記事】

2001年7月18日更新

　東京ビッグサイトで開催されているWireless Japan 2001のWireless Conference 2001において，テレビ朝日常務取締役の堀鐵藏氏が登壇，同社のモバイル・インターネット戦略について語った。

　テレビ業界では，昨年12月にBSデジタル放送が開始され，2003年には地上波デジタル放送が始まるなど，大きな転換期を迎えようとしている。また，パソコンがテレビの，携帯電話が固定電話の出荷台数をそれぞれ上回ったことや，インターネットのブロードバンド化が急速に進んでいることから，テレビとインターネットの特性を補完しあう新しいコンテンツが生まれつつある。

ブロードバンド化によってテレビ朝日が目指す方向は

　堀氏は「ナローバンド環境下では，テレビとインターネットの連動は，番組をより楽しむための予告サービスや，番組の中で紹介した情報を掲載するアフターサービスを行うにとどまっていた。ブロードバンド時代を間近に控えた今，コンテンツプロバイダとして，さまざまなプラットフォームと連携した番組づくりを行っていかなければならない。決断を誤ると脱落していく」と，放送業界の転換期に向けた迅速で的確な戦略が重要であることを強調した。

　また，これまで地上波放送では広告に頼っていた収入源も，インターネットのブロードバンド化によって変わってくると堀氏は語る。「ブロードバンドの普及，次世代携帯電話の登場により，いつでもどこでも好みの番組を閲覧できる環境が整ってくる。テレビが世帯向けのマス情報を提供してきたことに対し，通信によって提供される番組はコアで能動的な情報だ。そこには新たなビジネスの可能性がある」 (堀氏) 。また，オンデマンドの放送が実現すれば，これまでの「つけっぱなし」というテレビの視聴方法とは異なる「検索，操作しながら」という新しいスタイルが生まれるとも言う。「ニーズに合わせて見たい番組を検索しやすい仕組みが必要になるだろう」 (堀氏)

　テレビ朝日の基本スタンスは「マス・ターゲットな放送からコアへ向けた映像提供」であるという。放送，通信の特性やメリットを最大限に活用した新しいビジネスの創造により，ビジネスチャンスを広げていく構えだ。従来通りのマス情報を提供する一方で，ネットと連動した双方向通信サービスによるニーズの吸収を行い，クロスメディアの実践を行っていくとしている。

クロスメディアの実現に向けたテレビと携帯電話の連動実験とは

　クロスメディアの実現に向けて，テレビ朝日では，テレビ番組と携帯電話をリアルタイムに連動させた実験を行っている。アナログ放送の連動型データ放送を携帯電話で実現する試みとして行われたものだ。

　実験は，KDDIおよびJ-フォンと共同で行われた。KDDIとの共同実験は，クイズ番組「タイムショック21」の番組中，視聴者が優勝チームと正解回答数を予想し携帯電話で登録すると，予想が当たった視聴者に番組特製クオカードがプレゼントされるというもの。J-フォンも音楽番組「ミュージックステーョン」で同様の実験を行った。

　テレビ朝日が行った実験後のアンケートによれば，「テレビを見ながら携帯を操作するのはどうでしたか」という質問に対し，参加者の65パーセントが「いつもよりテレビが楽しめた」と回答，98パーセントが「チャンスがあったらまた実験に参加したい」と答えているなど反応は上々のようだ。テレビ朝日は今後も「世界水泳福岡2001」「せきらら白書」といった番組で同様の実験を予定している。また，テレビ朝日では，今後は大多数の視聴者が参加できる環境が必要であるとし，全ての通信キャリアへの対応，通信キャリアの違いに関係なく製作できる標準設備仕様の構築を目指す。

　「これまでマスに対して提供していた情報を1対1で提供可能になる未来が見えてきた。BSデジタルは，まだ双方向通信の理想型とは言えないが，地上波デジタルが始まれば，いつでもどこでもユーザーと双方向で接することが可能になってくる。メディアの多様化に合わせて，テレビ朝日が友達や仲間のような存在になるよう，コンテンツ市場を盛り上げていきたい」 (堀氏)

[後藤祥子，ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

---