DDIポケットが1MbpsのPHSを実現させるのに必要なものは?

東京ビッグサイトで開催されているWireless Conference 2001にはDDIポケットの平澤弘樹取締役が登場,講演の中で1MbpsPHS実現の可能性について触れた。

【国内記事】 2001年7月18日更新

 東京ビッグサイトで開催されているWireless Japan 2001では7月18日,DDIポケットの技術開発部長である平澤弘樹取締役が講演を行い,AirH"のサービスや総務省が発表した1MbpsのPHSなどについて語った。

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DDIポケットの平澤弘樹取締役

 平澤氏はまずAirH"について,「日本のPHSで初めてパケット通信に対応した」としてデータ通信としての優位点を説明した。

 同氏はパケット通信にした利点として,従来の回線交換と異なり制御チャンネルのほかに,4チャンネルがデータ通信に利用できることを挙げる。これにより多くのデータを扱えるようになった。また,そもそもパケット通信にしたことで,各ユーザーがつなぎっぱなしではなく必要な時に入り込んで回線を使用できるようになった。このため無線区間の利用効率は格段に向上したという。

 「回線交換で通信をしていた時と比較して,17.5倍のデータを扱えるようになった」(平澤取締役)

 さらに同氏は,DDIポケットの基地局は受信パワーを一定にコントロールする無線アンテナ“アダプティブアレイ”を採用していると述べた。「PHSのセルは小さいため,アダプティブアレイで隣合うセルでも同じ周波数を利用できる。(電波には限りがあるが)これらの技術により周波数利用効率はさらに高まるため,電波を使い切ってしまうことはない」

PHSのさらなる高速化へ向けて

 また同氏は,パケット通信の複数の電波を束ねて高速化を実現できることにも触れた。「そもそも携帯電話のセルは,きちんと区切られてどの基地局がどのセルを担当するかきちんと決まっている。しかしPHSはセルがあいまいで重なり合うこともあるため,同時に複数の電波を重ねられる」(5月28日の記事参照

 同社は4波を重ねて,秋から最大128Kbpsのデータ通信サービスを開始する予定だ。

 今回PHSの高速化ということでは,総務省が発表した1MbpsのPHS(7月3日の記事参照)についても,話題が及んだ。「魅力はある。そして携帯電話におけるcdmaOneなどのサービスと異なり,新しい技術はいらない。今までの技術を組み合わせることで実現が可能だ」(平澤取締役)

 同氏は総務省の発表した内容について細かく説明した。それによれば,まず64Kbpsのデータ通信において,電波環境に応じて速度が最大となる最適な変調方式を選択する。従来のPHSなどに利用されているπ/4QPSKから,より多くのデータを伝達できるQAM方式を変調に使うわけだ。ここで周波数帯域を3倍にし,チャンネル構成を効率化するなどした上で,これを4チャンネル使用すれば,1Mbpsのできあがりとなるという。

 「変調方式に関しては,電波の状態が非常に良くないといけない。悪くなると元のπ/4QPSKに落とすようなことになる」(平澤取締役)

 また空間多重技術(PDMA:Path Division Multiple Access)ということも紹介された。これは先述のアダプティブアレイをさらに高度化したもの。同じセルの中で同じ周波数を繰り返して使うことで,さらなる周波数効率を実現するのだという。

安さが最優先

 しかしこれだけの魅力的なサービスも,すぐ採用,というわけではにはいかなそうだ。

 「当面は既存のネットワークを使っていきたい。またいちから何千億の投資をしていくのでは,その分を回収しなければならないためにユーザーに向けて安さが実現できない」

 これらの技術は既存のものであり,開発が難しいというものではない。ただし実現するにはそれなりの設備投資が必要だ。簡単な工事でサービスを開始できたAirH"と異なり,1MbpsのPHSへ向けた道のりは険しい。それよりは安定してサービスを提供できる道を選ぶということのようだ。

 「みなさんの支持があれば,実現できる可能性もある。今後とも,宜しくお願いします」平澤取締役は,そういって,会場にアピールすることも忘れなかった。

[杉浦正武,ITmedia]

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