「CASSIOPEIA E-750」インプレッション 〜1週間使ってみて〜

カシオが7月9日より発売を開始したPocket PC「CASSIOPEIA E-750」(以下E-750) は,発売から1年が経過した人気モデル「CASSIOPEIA E-700」(以下E-700) をアップグレード,機能を強化したモデルだ。

【国内記事】 2001年7月25日更新

 この製品が発売になるというニュースを聞いて,すぐに購入の予約をした。購入後1週間使ってみて感じたことを中心にまとめてみた。

大きくて重い筐体

 本体は,残念ながら「E-700」と比較するとひとまわり大きくなっている。筐体の色が6色から選べた「E-700」とは違い,カラーも一色だけだ。実際に手に持ってみると,「持っている」という感覚がずっしりと腕に伝わってくる。一応ぎりぎりで手におさまるサイズなので,ホールドしづらいということはないが,片手でしばらく持っていると手首がやや疲れて痛くなる。

 筐体サイズが大きくなってしまった理由は,CFカードスロットの採用にあるようだ。また,カシオが採用している「MIPS」というCPUの熱量も影響しており,ある程度のサイズがないと冷却できないらしい。せめて「E-700」と同じサイズになると嬉しいところなのだが……。

CFスロットを使えば手軽に通信が可能

 デザイン面は比較的気に入っていた「E-700」だが,1つだけ不満に思っていたことがある。

 筆者にとってPDAによる外出先のメールチェックとWebブラウジングは欠かせない。しかし「E-700」でインターネットに接続するには,別売りの通信ケーブルを毎回つないで接続する必要があった。結局いちいちつなぐのが面倒になってしまい,「E-700」自体を使わなくなってしまったのである。それ以外の機能は便利であったとしても,別途通信用のマシンを持つ必要があるのなら,荷物が増えてしまうので「E-700」を持つ意味がない。

「E-750」は,コンパクトフラッシュ TypeIIスロットが搭載されている。このスロットを利用すれば,「P-in Comp@ct」や「CardH"64petit」などを使って,通信機能内蔵型PDAのように手軽にインターネットを楽しむことができる。これなら電車の中やちょっとカフェに座っているときでも,いちいちケーブルをバッグから取り出すというわずらわしさがない。

 CFカード型LANカードを利用すれば,LAN経由のインターネット接続やActiveSyncも行える。LAN経由でWebを巡回し,コンテンツをオフラインでブラウジングするという使い方もできるのだ。

バッテリーが変えられることのメリット

 外出先でこのように手軽に通信できると,バッテリー残量も気になる。まだまだバッテリー容量がマシンに対して不足していると感じるPocket PCの場合,内蔵型充電池を採用しているマシンでは,バッテリーがあがってしまう心配がある。しかもバックアップ用のバッテリーを利用できないマシンの場合,バッテリーが切れたまましばらく放置しておくと,本体内に記憶されているデータが消えてハードリセットされてしまう。

「E-750」は,このような心配はない。メインバッテリーとは別に,バックアップ用のボタン電池がセットできるのだ。この電池のおかげでバッテリーがあがっても本体のメモリ内容は消えずに保存される。ボタン電池の寿命は通常の使用で5年程度。メイン充電池のバッテリーが切れてから長時間放置すると,自動でボタン電池のバッテリーに切り替わってカバーするため,バッテリー切れによるメモリのリセットの不安からは開放されることになる。

 さらにメインバッテリーの充電池も入れ替えが可能になっている。このため別売りの専用充電池を購入して充電しておけば,万が一バッテリーが切れたときにも入れ替えるだけですぐに使うことができるのである。

 バッテリーの持ちについては,8月20日より発売される東芝のPocketPC「GENIO e」よりも長く持つ。「GENIO e」が約8時間であるのに対し,「E-750」は約10時間という数値となっている (メーカー発表資料に基づく。「GENIO e」は「Today」画面の連続表示,フロントライトOFF,周囲温度25度の場合で,「E-750」は連続入力とデータ表示を1:10の割合で繰り返したときで画面の明るさを最も暗めに設定した場合を元にしている) 。

 筆者は実際にマシンを利用する場合,操作音が鳴らないように設定し,画面もやや暗めにしている。これだけでもバッテリーの持ちは変わってくるのだが,自宅で充電したマシンを出先に持っていっても,よほど長時間連続で通信しない限り,帰宅までにバッテリー切れで困るということはない。

アプリケーションは「MIPS」対応のものをインストール

 PocketPCを便利に使うためには,サードパーティ製のさまざまなアプリケーションをインストールすることになる。「E-750」の場合,搭載しているCPUのタイプに合った「MIPS」対応のPocketPC用アプリケーションであれば,特に互換性の問題もなく動作するようだ。

 しかし,同じCPUでも動作しないアプリケーションが存在する。たとえば東芝の「GENIO e」の場合,「iPAQ Pocket PC」 (以下iPAQ) と同じ「StrongARM」を採用しているが,「iPAQ」にのみ対応しているアプリケーションや,ハードスペックに左右されるアプリケーションはインストールしても動作しない。これはほかの「MIPS」や「SH」でも同じことになる。

「E-750」の場合,「E-700」に対応しているアプリケーションを利用した場合の不具合はあまり報告例がなく,多くの「MIPS」対応のアプリケーションがそのまま利用できる。買ってすぐにさまざまなアプリをインストールできるため,楽しみながら自分に最適な環境を構築できる。

速度は快適! ストレスなし!

 CPUが高速化した「E-750」では,アプリケーションの起動や終了などの動作が快適になった。「E-700」ではもたつきがありストレスを感じることもあったが,この程度の動作速度であればストレスなく使うことができる。

 これをStrongARM/206MHzのCPUを採用し,現段階では最速といわれる「iPAQ」と比較してみると,「E-700」はクロックの数値的には「200MHz」とやや劣るものの,ほぼ同等の速度を持っている。

「PocketWord」で同じサイズの文章を同時に開いても,速度はほぼ遜色ない。「PocketWord」「PocketExcel」「PocketInternetExplorer」を同時に起動した状態で「WindowsMediaPlayer」による音楽再生を行っても大きな速度の違いは見られなかった。

 ギネスブックで「世界最強」と言われている「iPAQ」と比較しても,「E-750」はほぼ変わらない速度でアプリケーションを実行できることが確認できた。しかし,動作速度は本体メモリの空き容量にも左右されるので,あまり使わないアプリケーションは外部メモリカードに入れておき,頻繁に使うものや本体にインストールしなければ使えないものなどは本体に入れるなどして,普段から快適に使えるような環境にしておくことも必要だ。

今の私の環境は?

 さて,それでは1週間経過した私のマシンにインストールしたものを見ていただきたい。

 まず「Today」画面は「さいきっく for PocketPC」を利用している。アイコン登録もできて使いやすくなるのだ。

 主に使うアプリは「PocketIE」と「JS Landscape」の組み合わせだ。「JS Landscape」を利用して画面を高解像度に変更し,Webブラウジングを楽しんでいる。

 そしてメーラーは「E-Mailer」を利用している。たまに気になったニュースがあったときには「PVPlayer」を利用してニュースの動画配信を見ることもある。でも,同じ動画でお気に入りなのが,キヤノンが開発した「WebView Livescope」である。これはライブカメラをPocket PCで楽しめるソフトで,Pocket PC上で遠隔操作することも可能だ。鎌倉の海岸の夕日が,リアルタイムに手の中のマシンに映し出されたのを見たときは感動した。

 私はPalmデバイスも使っているのだが,文章の入力やメモ書きは主にPalmデバイスで行い,そのテキスト内容を赤外線通信機能を使ってPocket PCに取り込むのである。これは「手のひらからポケットへ」というソフトを使うことで実現できるのだが,さっと取り出せるコンパクトなPalmデバイスを手帳のように使い,さまざまな機能の搭載されているPocket PCで管理できるのは,筆者にとって非常に便利だ。

 このような情報を管理する場合,「E-750」に同梱されている「WordLinker」を使うと,さらにそのテキスト情報をツールとして活用できる。気になるテキストを選択すると,その語句に関連する内容をインターネット上から検索してくれるのだが,保存した情報に関連するデータを検索し,検索した結果をさらにそのテキストに追加して保存していくこともできるのだ。

 このように,ざっと1週間で構築した環境はなかなか快適だ。このほかにもタスク管理のユーティリティやゲームなど,さまざまなアプリケーションをインストールして利用している。これらのソフトを動作させても「E-750」であれば快適だし,通信環境も利用しやすいので,本当に使い方が広がるマシンだ。

では総合評価は?

 このマシンを使った感想を一言で述べるとするなら,「センスはイマイチなんだけど,中身はとっても素敵な人」というようなところか。

「E-750」が発表されたあと,Webの掲示板などを見ていると「新しさが感じられない」「買い換える意味があるのか?」「これなら安くなる前モデルで充分」という意見が多く見られた。

 たしかにデザイン面に大きな差がないため,新しさをあまり感じられない「E-750」は,「手頃に買える」ぐらいに値段が下がった前モデルと比較すると,魅力を感じられないのかもしれない。しかし,「200MHz」と高速なCPUを搭載し,TypeII対応のCFスロットを標準で搭載,バッテリーも比較的長持ちするというマシンでありながら,市場価格がおおよそ5万円というのは,ほかのPocketPCデバイスと比較してもコストパフォーマンスが高い。

 今年後半にかけてPocketPCでは新製品が次々と登場する。しかし,企業への導入も意識したこれらの製品は,個人がPDAを購入する際に検討する価格帯をはるかに超えた高価格だ。個人でも購入しやすい価格帯でありながら「iPAQ」とほぼ同等の実力を持つ「E-750」は,コストパフォーマンスに優れた製品であると言えるだろう。

[小田嶋絵里,ITmedia]

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