テレビ電話にニーズはあるか?──3Gサービスの課題

384Kbpsのデータ通信やテレビ電話を引っさげて,ドコモのFOMAがスタートする。試験サービス時のトラブルも解決し,技術的には実用可能なようだが,果たして各種サービスのニーズはどのくらいあるのだろうか。そしてコストは?

【国内記事】 2001年9月25日更新

 来週,10月1日にはNTTドコモが第3世代携帯電話「FOMA」をサービスインする。通信業界の牽引役としても期待が高まる第3世代携帯電話だが,成功を収めるにはさまざまな障壁があるのも事実。

 問題の1つは第3世代携帯電話で提供されるサービスに,果たして需要があるかどうかだ。ドコモのFOMAでも,試験サービスでは提供されていた「M-stage visual」が本サービスでは提供されないなど,“技術的に”というよりも,“コストやニーズの面”で問題点が浮上してきている。

国内3社の第3世代携帯電話で提供予定のサービス

キャリア ドコモ KDDI J-フォン
テレビ電話 ×
動画クリッピング 2001年内 12月
動画配信 2002年春 2002年4月
音楽配信 2002年春 予定
UIMカード
従来のネットワークとのローミング 2002年度後半(導入未定)

テレビ電話はISDNの頃から失敗してきた──KDDI

 第3世代携帯電話の代表的なサービスは何だろうか? 「クリアな音声通話」「国際ローミング」「高速なデータ通信」と第3世代携帯電話の持つ特徴の中で,“高速なデータ通信”を生かすサービスとして,FOMAビジュアルフォンで利用できるのがテレビ電話だ。

 テレビ電話は目立つ機能であり,分かりやすいことからマスコミなどでも“これぞ第3世代携帯電話”と喧伝されることが多い。しかし本当にテレビ電話にニーズはあるのだろうか。

 「(テレビ電話は)ISDNの頃から失敗してきたという歴史がある。帯域保証的で(周波数)資源の無駄使い」と語るのは,KDDIのau事業本部au技術本部技術企画部長,沖中秀夫氏。NTTドコモにしても,同時に発売するスタンダードタイプの出荷台数が2万台少々なのに対して,ビジュアルタイプは数千台(9月3日の記事参照)。どのくらいテレビ電話に期待しているのかは微妙だ。

 KDDIは第3世代携帯電話投入に当たり,「双方向のテレビ電話的なものは考えていない」(KDDI,沖中氏)と語る。これにはテレビ電話を実現しにくいインフラの事情もあると思われる(7月30日の記事参照)。

 ちなみにJ-フォンは「ビデオストリーミングのサービスはいずれ提供する。双方向が望まれているのか,短い映像が望まれているのか。そのあたりのユーザーニーズが重要」(J−フォンの経営企画部長,Peter Barry常務)と,まだ煮え切らない。

動画クリッピングは期待大だが

 15秒程度の短時間の動画を流す,動画クリッピングも期待されるサービスだ。ドコモは年内に「iモーション」という名称で,KDDIは12月に「ezmovie」という名称でサービスを予定している。

 従来のWebコンテンツを拡充するものとして期待は大きいが,気になるのはコスト。以前ドコモの夏野氏が語った「100Kバイト程度」(3月9日の記事参照)というファイルサイズを元に料金を計算してみると,以下のようになる。

FOMA 160円
FOMA(パケットパック20) 80円
FOMA(パケットパック40) 40円
FOMA(パケットパック80) 16円
KDDI(現行のパケット料金で計算) 216円

 ほとんどの場合“15秒程度の動画1本”分の料金で夕刊を買ったり缶コーヒーを飲んだりできる。この料金を利用者がどう考えるかが,普及するかどうかのポイントだ。

 もっとも現在のコンテンツでも30円程度の受信料金がかかるページは多い。ユーザーはこの料金をあまり意識せずにコンテンツを閲覧しているとも考えられる。ふんだんに画像を用いたページなどは,情報を得るまでに100円近く通信料がかかってしまうことがあるのを考えると,“動画が100円なら安い”とも考えられるかもしれない。

積極推進のドコモ,コストに重点を置くKDDI,様子見のJ-フォン

 需要の面はともかく,技術面では第3世代携帯電話はスタートに向けて秒読みに入った。各キャリアのロードマップは以下の通りだ。

国内3社の第3世代携帯電話導入ロードマップ

時期 ドコモ
(FOMA)
J-フォン KDDI
(CDMA2000 1x)
10月1日 国道16号線内    
12月 WZweb
64Kbpsに高速化
2002年3月 全国主要都市
2002年4月 全国主要都市
2002年6月 国道16号線内
2002年10月 全国主要都市
2002年秋 CDMA2000 1xEV導入
2003年3月 全国(人口カバー率90%) 全国(人口カバー率90%)

 第3世代携帯電話への意識は,各キャリアで相当異なる。W-CDMAを推進し,世界中を眺めてもかなり積極的なのはNTTドコモ。

 KDDIは段階的なアップグレードが容易なQulacommの技術を生かし,CDMA2000 1xからCDMA2000 1xEVへと展開していく。その視点は“コスト”にあり,CDMA2000 1xEVでは定額制を導入すると語っている。

 ドコモと同じくW-CDMA方式を導入するJ-フォンは,姿勢が曖昧なところ。11月1日には各地域会社と合併を果たし(8月24日の記事参照),また英Vodafoneの影響力も強くなることから明確に方向性を打ち出すのは欧州およびドコモの第3世代携帯電話の様子を見ながら……というところだろうか。

[九条誠二,ITmedia]

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