通信カーナビは業界を「成功」へ導くか?サーバに地図データを置いて通信ナビゲーションに利用するための技術「iフォーマット」が策定された。関連業界各社によるフォーラムも設立され,来年のサービス化を目指す。
インクリメントPは10月12日,地図データフォーマットおよびサーバ―クライアント間の通信プロトコルなどの技術体系である「iフォーマット」の仕様書を開示したと発表した。同時にこの技術を用いてモバイル技術事業の発展を促進すべく,関連業界の意見交換などを行うための「iフォーマット・フォーラム」を設立する。
iフォーマットとは,車載端末やPDA,携帯電話などに通信型ナビゲーションを提供するための,サーバ技術体系だ。 「従来のカーナビゲーションでは『KIWI』のような,ディスクにデータを入れてナビゲーションに利用するフォーマットが一般的だった。しかしiフォーマットでは,サーバ側にデータを置いておき,端末から必要なデータのみをダウンロードするようなサービスを提供できる」(インクリメントP) サーバでデータを管理することで,道路が新しく開通した時にすぐ更新できるなど,ユーザーに最新の情報を提供できるようになる。経路検索や経路誘導といった処理はサーバ側で提供でき,PDC方式の携帯電話のような低速回線でも利用が可能だという。 「端末に一定のキャッシュメモリを用意すれば,いつも通っている近所のデータなど変化がない場合,キャッシュだけでナビゲーションすることも可能になる。特定のプラットフォームには依存していないため,(カーナビなどで一般的に使用される)ITRONベースのOSや(Pocket PCなどに搭載される)Windows CE,(携帯電話にも搭載されている)Javaなどでも利用できる」(インクリメントP) 具体的には通信機能を備えた専用の車載端末でカーナビゲーションを行ったり,GPSモジュールを接続したPDAやGPS内蔵の携帯電話で歩行者ナビゲーションを提供したり,といったサービスが予想されている。カーナビ市場は年間150万台の勢いで伸びるという見込みもあり,こうした市場に上手く通信カーナビをのせていきたい考えだ。 現在フォーラムにはインクリメントP,クラリオン,ザナヴィ・インフォマティクス,三菱電機など13社が参加している。この中でメーカーが端末を開発し,インクリメントPらがサーバの運営・管理を行うことで,さまざまなシーンでのナビゲーションが実現される見込みだ。
端末メーカーはどう見るか?1つ気をつけなければならないのは,iフォーマットを使った具体的なサービスの話はまだ何もないことだ。iフォーマット・フォーラムでは2002年のサービス開始を謳っているものの,参加各社が今後どういった動きをとるのかは不明。この点について,フォーラムに参加する某メーカーの「テレマティクプロジェクト担当部長」に実際の情勢を聞いてみた。 「こうした話は業界で一番ホットなところ。インクリメントPは『iMapFan』(2000年3月27日の記事参照)などで地図検索のコンテンツを既に持っており,コンテンツを運営する上でのサーバのオペレーションにも信頼がおける。今回こうしたフォーマットを発表したことで,業界関係者としてはフォーラムに参加したいところだ」 「しかしうちが通信カーナビサービスに対応する専用の端末を開発するとは,まだはっきり決まったわけではない。通信機能を付けたカーナビは端末価格のほかに別途通信費もかかってしまうわけで,コストメリットという点で問題が残る。従来型のカーナビもだいぶ値段が下がってくるだろうから,そちらに対抗できるのかどうか」 彼が語るところでは,まだ通信カーナビは「ビジネスモデルが見えない」段階だという。ほかの参加者にも聞いてみたが,課金をどうするかといった問題や,従来型のカーナビとどう住み分けるのかといった面も含めて,疑問点は多い。 ただし,前述のメーカーのテレマティクプロジェクト担当部長はこう語る。 「みんな,こういう(通信カーナビの)方向に行くことは分かってるんですよ。それでいて,なかなか先が見えないでいる」 始まったばかりの通信型カーナビゲーションサービス。関係各社をうまく“ナビゲーション”してビジネスとしての成功に導くことができるかどうかは,これから“経路”次第といったところだろうか。 [杉浦正武,ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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