メール1つで100万人?──TSUTAYA onlineのモバイルマーケティング

「クリック&モルタル」。そんな言葉が流行る前から,実店舗とネットを融合して宣伝・販促を行ってきたTSUTAYA onlineが特に注力しているのは“ケータイ”。メール1本で100万人が動くという同社のサービスの実情とは?

【国内記事】 2001年10月19日更新

 NTTアドバンステクノロジ主催の「モバイル・インターネットの最新動向と今後の展望」で,TSUTAYA onlineの常務取締役の今井衛氏が講演し,TSUTAYA onlineのモバイルマーケティングについて実情を語った。

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いつどこにいても“割り込み”をかけるケータイ

 TSUTAYA onlineといえば,既存店舗とオンラインでの販促・マーケティングを上手く組み合わせた「Cricks & Mortar」の成功例として,折に触れて紹介されるサービスだ。

 PCのWebおよびiモード,J-sky,EZwebと複数のメディアで展開され,有効会員数は179万人(9月末)を誇る。月間に配信される情報メールは2700万通以上にも上るという。

 そんな中でもTSUTAYA onlineの中心となるのはケータイだ。3年前,TSUTAYA onlineはiモードユーザーに対して,アンケートを行った。このときの結果が,同社を携帯に傾倒させることになった。

 「iモード30分緊急アンケート」と題されたこのアンケートでは,iモードメールを用いてアンケートを送付。30分以内の返答を依頼した。金曜日の午後3時,発送された3万通のうち,6%に当たる1900通が30分以内に返送されたという。週末の午後。返信してきたユーザーの34%は職場に,15%は学校にいた。自宅にいたのはわずか29%。ほか路上,交通機関内など,ほとんどが“自由時間外”にあった。

 この状況を「メールでアプローチすると,いつどこにいても“割り込み”をかけることができる」と今井取締役は説明する。携帯の特にメールの強力なアプローチ力を示した実験だ。

 実際,TSUTAYA onlineの会員にメールで告知を繰り返したところ,店舗で販売している音楽CDの購入率は大幅に跳ね上がる。「特に音楽CDの場合,初動が大きく違う」(今井取締役)

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1999年末に実施されたメールによる販促活動の結果。販促活動を行っていない来店者では0.1%程度の購入者率だったのが,メールを送付したユーザーでは初動で0.5%にまで購入者率は上がった

100万人が動く,オンラインクーポン

 TSUTAYA onlineが推し進める特徴的なサービスの1つがオンラインクーポンだ。携帯の画面に“画像”としてクーポンを表示し,店頭で提示することでレンタル料が半額になったり100円引きになったりするもの。

 現在では10日間の期間を設けてクーポンを運用しているが「(平均して)98万人がクーポンを使ってくれる」と今井取締役は言う。クーポンの効果は絶大だ。「新作ビデオは(クーポンによって)半額になるので本数が伸びるが,旧作も伸びる」(今井取締役)。結果,大きく収益に結びついているという。

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通常のレンタル本数が多くても平均0.3本程度なのに対し,クーポン期間中は0.8本程度まで上昇する。しかも半額になる新作だけでなく,旧作まで大きく上昇しているのに注目

 クーポンによって来店者が増加することも分かった。TSUTAYAの店舗ではレンタルだけでなく音楽CDや書籍販売も行っているが,クーポン期間中は書籍の売上も36%ほど上昇したという。「販促効果は大きい。(平均して)売上10%増の効果が得られた」(今井取締役)

 実験を繰り返してノウハウを貯めたTSUTAYA onlineでは,今後他社のオンラインクーポンをTSUTAYA onlineユーザーに向けて提供することも構想中だ。25歳を中心にプロファイルもしっかり取られたユーザー群に,多くの企業が関心を持っているもよう。今井取締役は「新しいビジネスとして取り組んでいく」と意欲を見せる。

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TSUTAYA onlineが取り組む他社のオンラインクーポン。「ユニクロ」「カシオ」など若者に人気のメーカーのロゴが目に付く

 TSUTAYA onlineが会員向けに送付している情報メールは,コアなファン向けに細かくジャンル分けされ,中には数万人が登録されているものもある。情報メールに通販情報を入れた場合の反応は非常によく,「普通の通販に比べると,10〜100倍の割合で成約に結びつく」と今井取締役。

 今後は年内に開始予定のFOMAの新機能,短い動画を携帯上で再生する「iモーション」なども活用して,さらに強力な宣伝・販促を展開していく予定だ。「映像コンテンツはたくさんある」(今井取締役)

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iモーションの提供イメージ。レンタルビデオの紹介画面からiモーションを使って映像も再生

 「テレビやラジオでは宣伝はできるが,販促には直接結びつかない」と,今井取締役は携帯を使った販促活動に大きな自信を見せる。「しかも(携帯なら)商品を買ったあとも(双方向的に)マーケティングにも役立てられる」(今井取締役)

 携帯の効果も弱点も知り尽くした同社。今後の取り組みにも注目したい。

[斎藤健二,ITmedia]

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