FOMAが実現する“通信カーナビ”──NTTとホンダ

NTTとホンダが開発した「次世代車載情報提供システム」は,FOMAならではの機能を大活用したもの。サーバと車載端末の連携が特徴のシステムで,FOMAが果たした役割とは?

【国内記事】 2001年10月22日更新

 現在の場所を判断して,リアルタイムで位置に関連した情報を,しかも音声で配信してくれる技術が開発された。NTTとホンダが開発したこの「次世代車載情報提供システム」は,実はNTTドコモのFOMAがキーになっている。

 本田技術研究所の商品・技術戦略室の川合誠氏は「FOMAを前提に開発した」と語る。

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一見,普通のカーナビに見えるこれが「次世代車載情報提供システム」の車載部分。操作は音声認識で行い,タッチパネルでの操作も可能

ハンズフリーで,電話・メールの応答やエリア情報取得

 「次世代車載情報提供システム」の主な機能は以下の通りになる。

位置・時間に応じた最適情報が得られる「地域密着型情報配信サービス」
音声で素早く最適情報が入手できる「カスタマイズ情報検索サービス」
運転中でもメールの読み上げ,返信ができる「ドライバーズ・メールサービス」
いつでもどこでも,適切な電話への対応ができる「快適モバイル電話サービス」

 これらのサービスは,すべて車載端末とセンター側のサーバが連携して実現される。

 例えば「地域密着型情報配信サービス」ならば,GPS衛星を使って取得した位置情報を数秒おきに車載端末がセンターに送信する。センター側にはあらかじめ「このエリアでは午後1時から7時まで,園芸店の案内」といった情報が登録されており,位置・時間に合ったものを車載端末に送信。データを受け取った車載端末は,音声合成を行いユーザーに情報を案内する(各サービスの実体験レポートはこちら

 ちなみに「地域密着型情報配信サービス」では,センター側の情報をWebベースのインタフェースからリアルタイムに登録・変更できる。地域商店など,実際の案内文を作る広告主が簡単に情報を提供できる仕組みが既にできあがっている。

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情報サービスの情報登録画面。位置と連動して情報を流すため,車がどの位置にきたら情報を配信するか決定するための地図が表示されている。情報提供者は複雑な操作をすることなく,サーバに情報を登録できる

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左側の車載端末と右側のサーバをつなげているのがFOMAだ。データ通信用途だけでなく,通常の電話としても利用される

 この車載端末とセンターを結ぶ役割を果たしているのが,FOMAだ。「(音声とデータが同時に送受信できる)マルチアクセスが利用できること。そしてパケット料金も従来のiモード端末などに比べて安くなった」とFOMAのメリットを挙げるのは,開発に携わったNTTサービスインテグレーション基盤研究所の交通情報流通サービスクリエーションプロジェクトプロジェクトマネージャの下川清志担当部長。もちろん384Kbpsという高速な通信速度も利点の1つだ。

 「カスタマイズ情報検索サービス」では,マイクに音声で指示することでメニューを選択し,ニュースなどを合成音声で聞くことができる。これは車載端末側で処理しているのではなく,FOMAの音声回線を通じてセンターに音声を送っているのだという。センターではユーザーの音声を認識し,必要な情報を合成してFOMAの音声回線経由で送り返す。

 FOMAではマルチアクセスが可能なため,このように音声回線がふさがっているときもセンターとのデータ通信が可能だ。

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車内に設置された「FOMA N2001」。音声通話とパケット通信の両方を利用するため,USBポートとイヤホンジャックの両方が接続されている。N2001は現在マルチアクセスをサポートする唯一の端末だ(9月25日の記事参照

カーナビの未来は通信端末に?

 この「次世代車載情報提供システム」の特徴の1つは,このように車載端末側とサーバ側がFOMAを介して柔軟に役割分担しているところだ。

 例えば音声合成は車載端末でもサーバでも可能になっているが,「(サーバ側で音声合成を行うことで)高品質な音声品質を得ることができる」という。逆に「地域密着型情報配信サービス」では,サーバ側から送られたデータを車載端末が音声合成することで「送受信されるデータ量は1回1Kバイト程度」に抑えている。

 「カーナビは(将来)情報端末になっていく」(川合氏)という。

 車載端末側には通信機能のみを持たせてできる限り簡素化し,地図情報やルート検索もサーバ側でやらせるという構想も浮上していきているが(10月12日の記事参照),現在の通信料金のままではあまり現実味のある話ではない。

 この「次世代車載情報提供システム」では,地域に密着した情報のようにリアルタイム性が求められるものについては,通信回線を使って配信する。逆に地図情報などある程度情報が固定されているものに関しては車載することで,通信費の削減,電波のエリア外でも最低限の動作が可能になっている。

 提供できるサービスの概要は見えたものの,「コンパクトな車載機にまとめ上げること」(川合氏)や「サーバ側がさまざまな操作に対応できるようにすること」(下川氏)が技術的な課題として残っているという。

 2002年度以降には技術として完成し,「初めはホンダ向け。その後広めていって標準化したい」(川合氏)という。

[斎藤健二,ITmedia]

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