カーナビにも進出するWindows CE──クラリオン「CADIAS」を2002年投入

Windows CEをベースとしたカーナビ「AutoPC」が，遂に国内でも発売される。“PCライクな通信端末”と謳われた「CADIAS」は，地図データもサーバから取得する通信カーナビだ。

【国内記事】

2001年10月24日更新

　「Windows Powered」。そんな名前の付いたカーナビゲーションに2002年，国内でもお目にかかれそうだ。10月24日から幕張メッセで開幕した「東京モーターショー」では，カーメーカーのコンセプトカーに混じって，車載機器メーカーもカーナビを参考展示していた。

　クラリオンブースでは，「Windows CE 3.0 for Automotive」を使った“カーデジタルアシスタント”「AutoPC CADIAS」が参考出展されている。発売は2002年の予定だ。

　CADIASはナビゲーション機能はもちろん，Webブラウザ，メール，DVDプレーヤー，MP3プレーヤーなど数多くの機能をサポートするマルチメディア端末だ。

　Windows CEベースであるため，DVDプレーヤー，MP3プレーヤーなどの機能は充実している。「Windows CE 3.0から車載用でもサポートされた」（クラリオン）という，プレーヤーのスキン機能を備えており再生時に文字や画像を表示させるのもお手のもの。

　外部インタフェースとして，USB，PCカードスロットなども備えており，まさに“カーナビの形をしたPC”に仕上がっている。クラリオンはCADIASを「ナビゲーション機能がウリなのではなく，PCライクな通信端末」と位置付ける。

　その思想はナビゲーション機能にも反映されている。CD-ROMやDVD-ROMに地図データを焼き込み，本体に内蔵していた従来のカーナビと異なり，CADIASは通信機能を使って地図をサーバからダウンロードする。本体にはキャッシュ用のメモリがあるだけで，特に地図データは持っていない。地図はインクリメントPが提唱している「iフォーマット」を採用。インクリメントPのサーバに接続して地図を表示するという（10月24日の記事参照）。

　PCカードスロットはストレージだけでなく通信カードにも対応しており，「カード型のPHSを使うことはもちろん，Bluetoothカードを差し込んで携帯電話とBluetoothで接続することもできる」（クラリオン）という。

カーナビから車載マルチメディア端末へ

　「ADDZEST」ブランドでオーディオからカーナビまで，車載機器を幅広く手がけるクラリオンが，次世代のマルチメディア端末としてWindows CEを選んだのはいくつかの理由があるという。

　1つはオープンプラットフォームであるということ。各社が異なったOS上にソフトウェアを個別に開発していくのに比べ，Windows CEベースであれば将来的にさまざまなソフトウェアを実行できる可能性がある。また2世代目を開発する際にも同じソフトを継承して利用でき，資産の活用に役立つ。併せて，全世界に開発者がいることも理由の1つだ。

　クラリオンではCADIAS向けのSDKを自動車メーカーなどに提供することも構想中だという。ただしPCの世界でいう“オープンプラットフォーム”とは少々意味合いが異なる。「コンシューマゲーム機の開発環境に近い」（クラリオン）

　実はクラリオンは，Windows CEを使ったカーナビゲーションの先駆企業だ。1998年にはWindows CE 2.0をベースにした「AutoPC」を開発，米国で発売している（1998年12月の記事参照）。世界の先端に位置するカーナビメーカーの1社として，クラリオンはMicrosoftとWindows CE for Automotiveを共同開発してきたともいえよう。

米国で発売された「Clarion AutoPC」

　当時はCDプレーヤー，DVDプレーヤー，ナビゲーションなどの車載機器をAutoPCとして統合することで，コストダウンを図れることが特徴とされていた。現在は車内にもマルチメディアが浸透し，第3世代携帯電話に代表される通信環境が車載機器にも求められるようになってきた。ソフトウェアも高機能化したことで，PCライクなAutoPCに注目が集まりそうだ。

　初代機は「1番のハイエンド機になる。価格も30万円程度にはなるだろう」とクラリオンは語る。Windowsの操作とWebブラウジングに慣れた人々に，国内初投入の“Windows CE搭載カーナビ”はどう映るのだろうか。

[斎藤健二，ITmedia]

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