「4,5年後にはKDDIとドコモのシェアは逆転する」──クアルコム

KDDIなどにcdmaOneチップを提供しているQualcommは,CDMA技術の第一人者。クアルコム・ジャパンの松本社長は,3年前から先を見通してCDMA技術を導入したKDDIの苦労が数年以内に実を結ぶと語る。

【国内記事】 2001年10月31日更新

 東京国際フォーラムで10月30日,「モバイル・ビジネス2001」が開催され,クアルコム・ジャパンの松本徹三社長が登壇。自社のCDMA2000テクノロジーの優位性を説き,「KDDIがドコモを抜くのは夢ではない。KDDIが(データ通信の有用性について)思い切った確信犯なら,4〜5年後にはシェアは逆転する」と言い切った。

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3年間苦しんだKDDIが優位に立つのは来年から

 松本社長がこう言い切るのは,同社が世界で初めて民生用に実用化したCDMAテクノロジーの将来性を確信してのこと。「CDMA(技術を使ったcdmaOne)は音声がきれいだが,これは副産物でしかない。真のメリットは周波数が有効利用できること。そしてデータスピードが上がることだ」

 この周波数が有効利用できるというメリットが生きてくるのは2002年,2003年からだと松本社長は語る。今はまだ携帯電話を音声中心で利用しているが,データ通信が増大するとすぐに周波数が足りなくなってくるというわけだ。

 「KDDIは(cdmaOneを採用することで)将来への助走をやった。この3年間の厳しさが果実となって出てくるのは来年,再来年」(松本社長)

 松本社長は,cdmaOneをライセンスしているという経済的な理由からKDDIを擁護するのではないことを強調する。「CDMA2000とW-CDMAが対立しているというのは現実ではない。FOMAもCDMAだ。実際にFOMA端末のメーカーからも(CDMA技術に関する)ライセンス料をいただいている」

 むしろ技術的に大きな問題があると松本社長が見ているのはGSM/GPRS陣営だ。今後データ通信の時代を迎えるにあたり,「(現在日本で使われているPDCや,GSMなどの)TDMAではだめだ。GPRSは問題外。CDMAでなくてはだめだ」とばっさり。

 現在GSMが主流の欧州では,第3世代携帯電話としてW-CDMAが予定されていたが,その前に第2.5世代としてGPRSを導入するキャリアが増えている。しかもW-CDMAではなくEDGE(用語)に移行するのではないかという見方も最近は多い。

 EDGEは第3世代方式として認められているものの,GSM,GPRS,EDGEと続くTDMA方式を発展させたものに過ぎない。松本社長は「GSM陣営はなぜ(いっきに第3世代に行くのではなくてGPRSという)2重投資をするんだ。(いっきにW-CDMAに移行する)ドコモのほうがよっぽどしっかりしている」と手厳しい。

 「GSMは成功体験が足を引っ張る。これから(欧州は)相当停滞するのではないか」(松本社長)

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一足飛びにW-CDMAに移行する日本のPDC陣営と,間にGPRSやEDGEを挟むGSM陣営の違いに注目

「5年以内にすべての自動車に無線通信機能が付く」

 松本社長が強く主張するのは,今後モバイルインターネットの市場が大きいということだ。固定電話があっても,携帯に慣れたユーザーは自宅でも携帯電話を使用する。「人はわずかなコスト差なら,使い慣れたものを使いたい」と松本社長。そしてこれは電話だけの話ではなく,インターネットにも当てはまることを指摘する。

 「今のPDAと通信機能を持ったPDAは別物。すべてのビジネスマンの必携ツールになる」と松本社長は予想する。もちろんここでいうPDAは,PocketPCのような機器だけを指すわけではない。今の携帯電話は既に“電話もできるメールマシン兼ブラウザであってゲームもできるPDA”だという認識だ。

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携帯電話の一部とPCの一部は融合していく

 そしてもう1つの大きな期待が“データ専用端末”だ。松本社長は“データ専用端末の台数が早晩携帯電話の台数を凌駕”すると予測し「5年以内にすべての自動車に無線通信機能が付く」と語る。「7000円程度のコストアップで,(通信機能の活用により)車の盗難はなくなる」とも。

 既にcdmaOne端末は車載向けに利用されており,無線通信機能とGPS衛星を利用して盗難車の捕捉が行えるようになっている。世界で初めてセコムがこのシステムを商用化した(7月19日の記事参照)。

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クアルコムが予測するデータ専用端末のマーケット。通信カーナビなどの車載機器をはじめとして“位置認識機能は必須”とされている。ここもgpsOneという“秘密兵器”を持っているクアルコムの強みが生かされそうだ(4月4日の記事参照

 現在の携帯電話は国内で6500万契約に達し,8000万〜1億が天井だと見られているが,国内で7000万台余りに達する自動車すべてに無線通信機能が搭載された場合,それだけでマーケットは2倍だ。自動車への搭載が進むならば,「今の携帯(の契約数)は,まだ市場の半分から3分の1だろう」という松本社長の予測もうなずける。

 ドコモのブランド力は,車載機器やPDAなどには威力を発揮しないだろうとも松本社長は推測。同じCDMA技術を使いながら,音声とデータを一括して扱おうというW-CDMAと,別々に扱おうというCDMA2000の違いも,クアルコムに追い風だ(7月30日の記事参照)。「電話とデータはまったく別物。合わせようとした試みはすべて失敗した」と松本社長はISDNの例を挙げる。

 技術面でのクアルコムの主張は非常に説得力がある。あとはコンテンツサービスおよびマーケティングでKDDIがドコモに打ち勝てるかどうか。技術が優れているからといってシェアを伸ばせるとは限らない。KDDIがドコモを逆転できるかどうかは,そこにかかっている。

[斎藤健二,ITmedia]

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