ZDNet Mobile&ZDNet Broadband合同企画第1弾
IEEE 802.11aがもたらすワイヤレスLANのイノベーション

実測で約18Mbps程度のスループット

 さて,それでは世界初の製品となったソニーのIEEE 802.11a無線LAN製品を見てみよう。アクセスポイントは「PCWA-A500」,カードは「PCWA-C500」となっており,ラインアップ全体として「Carrier Gete」という名称がつけられている。アクセスポイントのPCWA-A500は,ブリッジモードとルータモードを実装しており,PPPoENATにも対応しているため,ADSLやCATVなどブロードバンド回線に接続して利用することもできる。

 筆者自身は,802.11aの策定以前から5GHzを利用した無線LANの高速化について関心を持ち,ウォッチしてきた。ようやく製品化されたものに出会えたということでは感慨深いものがある。米国ではこの秋の展示会に802.11a製品がいくつか出展されており,日本では少し遅れて来年初め頃の登場になるかと考えていたので,11月初めの登場は予想外に早かった,という印象だ。

 ところが,使おうとして,さっそく壁にぶちあたってしまった。それはカードであるPCWA-C500に用意されていドライバが,Windows 2000 ProfessionalとWindows XP Home Editionのみの対応ということだ。製品のホームページによると「Windows Me対応ドライバは,2002年2月頃にダウンロードでの無償配布を予定」となっている。購入の際には注意が必要だろう(なお,本製品はそもそもバイオギアの製品群の位置付けであるため,ソニーのWebサイトではVAIO製品での対応しか記載していない)。

 筆者自身は対応OSを搭載したノートPCをもっていなかったが,幸い知人の厚意でVAIOのノートPCを借り受けることができた。そこで,FTPサーバをネットワークに用意し,大きなサイズのファイル(約51MバイトのASFファイル)をダウンロードしてスループットを計測してみることにした。今回構築したネットワークはごくシンプルなものであるが,図のようになる。アクセスポイントの動作設定はブリッジモードである。

 アクセスポイントとクライアントのノートPCの間を直線で約4メートル程度離し,無線LANの暗号化の設定であるWEPを動作させない場合と,40bitのWEPを設定した場合での測定測定結果としては下記のところになった。

  WEPなし WEPあり(40bit)
1回目 18,570Kbps 17,748Kbps
2回目 18,016Kbps 15,862Kbps
3回目 15,377Kbps 16,614Kbps

 FTPでの実効速度としてはだいたい15〜18Mbpsといったところだろうか。また一般に,WEPを設定した場合はスループットの低下が問題視されるが,この製品では,40bitの場合においてはそれほど大きな低下はなさそうである(製品としては,WEPではさらに強固な128bitにも対応している)。

 アクセスポイントとクライアントの距離を離した場合はどうだろうかと,直線で10〜12メートル離して試してみた。この時はクライアントの位置は建物の中からは出てしまい,ガラス扉を挟んで建物前の道路ではかったのだが,電波は届いており,速度としてはWEPなしで11〜14Mbps程度だった。意外に使える感じだ。

約10メートル離れた屋外でも電波が届いた(ガラス扉の内側にアクセスポイントが設置されている)。カメラ目線失礼。※5GHz無線LANの使用が認められるのは、法的には屋内のみ

 壁を曲がった場合ではどうだろうか。建物内において,アクセスポイントから4メートル程度のところで壁を1回曲がって約3メートル程度行き,2階への階段を上りかけたところで測定したところ,この場合は約4Mbps程度と大きく落ちた。直線的な範囲ではなく,壁を曲がり込んだ形での利用は,やや制約があるかもしれない。ただ,このあたりは建物の構造や壁の材質等による影響も大きいと思われ,短い期間での評価ではなんともいえないのが難しいところだ。

 製品には,クライアント側の設定を行うためのワイヤレス接続簡単設定ウィザードや,電波環境を把握するための「Wireless Panel」というツールがついてくる。また,アクセスポイントの設定はブラウザで行える。このあたりは通常の無線LAN製品と同じだろう。

ワイヤレス接続簡単設定ウィザード

電波環境を把握するための「Wireless Panel」

アクセスポイントの設定はWebブラウザで行える

 ちなみにWireless Panelでの表示を見たところでは,アクセスポイントとの距離が4メートル程度の直線の環境ではこの数字が36/48/54Mbpsの間を変化していた。これが10メートルの直線距離では18/24/36Mbpsの幅であり,上述の壁を曲がった環境においては6/12/18Mbpsの間を変化していたことを記しておこう。

動画レベルのアプリケーションに対応できる802.11a

 ということで,世界初のIEEE 802.11a準拠5GHz帯無線LAN製品を評価してみたわけだが,「かなり使えそうだ」というのが感想だ。

 FTPで18Mbps程度の実効速度が得られるとすれば,動画等の配信にも十分対応しているといえる(54Mbpsに対して18Mbpsというと,やや遅いという印象だが,FTPやIP,イーサネットの各レイヤーのオーバーヘッドが加わっていると考えられる)。802.11b製品の場合で公称の伝送速度は最大11Mbpsと銘打っていたのに対し,実効速度はせいぜい4〜5Mbps程度であり,動画を伝送させる環境としてはやや苦しい環境にあった。802.11a製品ならば,MPEG2レベルの動画伝送において実用に耐えそうだ。実際,ソニーとしても将来的にそうした用途への利用を考えているようだ。AV機器メーカーでもあるソニーから世界初の次世代無線LAN製品が登場した必然はそこにあるのだろう。

次のページへ
「気になる価格は?」



モバイルショップ

最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
第3世代インテルCoreプロセッサー搭載PC ドスパラはスピード出荷でお届けします!!

最新スペック搭載ゲームパソコン
高性能でゲームが快適なのは
ドスパラゲームパソコンガレリア!