プッシュ型配信はPocket PCブレイクの起爆剤となるか?

Pocket PCにデータ通信カードを挿しておくだけで,携帯電話のメールのように,情報の着信を知らせてくれる。そんな時代が到来するのも間近なようだ。この機能はPocket PCの普及の鍵となり得るのだろうか?

【国内記事】 2001年11月16日更新

 NECが発売するPocket PC「PocketGear」には,Wake On Ring機能というプッシュ型の情報を受けるためのエンジンとドライバがあらかじめ内蔵されている。プッシュサーバさえ用意されれば,Pocket PCにデータ通信カードを挿しておくだけで,ケータイメールのように情報が自動的に送られ,通知される。

 11月16日に行われた,Pocket Gearソリューション展示会のセミナーで,アイコンの荒武達男代表取締役は,同社のWake On Ring機能に対応したソリューション「AICON Wake-Up System」を紹介,Pocket PC向けプッシュ型配信の実現が間近なことを印象づけた。

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アイコンの荒武達男代表取締役

 「AICON Wake-Up System」は,ネットワークサーバからのプッシュ型配信サービスを,通信カードを装着したPDAのWake-Upミドルウェアで受けられるようにするための実行管理ソフトウェア。対応するOSはWindows 2000とLinux。コンテンツサーバとAICON Wake-Up Systemがインストールされたプッシュサーバを併用することで,PDA側にコンテンツサーバの更新情報を送ることが可能となる。

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AICON Wake-Up SystemのプッシュサーバとPocketGearの概念図。サーバ側には呼び出し機能を付加するだけ。PocketGearにはあらかじめエンジンとドライバが組み込まれている

  PocketGearでは,本体の電源オフ時でもデータ通信カードには通電している。そして,トリガーとなるメッセージをこのカードが着信すると,カード側から本体を起動させることができるドライバとエンジンがあらかじめ内蔵されている。プッシュサーバから呼び出しがかかると,この機能(Wake On Ring)が働いてデバイスの電源が自動的に入る。次いでプッシュサーバの呼び出し情報を元に,その求めるアプリケーションが起動,データの送受信が行われる。送受信が終わると,電源は自動的にオフになる。対応するデータ通信カードはNTTドコモのP-in Comp@ct,P-in m@sterのほかDDIポケット系のカードにも対応している。

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PocketGear側の設定画面

 例えば,プッシュされる情報がメールの場合,メールサーバに新規メールが届くと,トリガーとなるメッセージが待ち受け状態となっているデータ通信カードに送信され,イベントとしてPocketGearに通知される。するとPocketGear側の電源が自動的に入りメールソフトが起動,自動的にメールを受信する。

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Wake On RingによるPush配信の概念図

 デバイス側のアプリケーションを拡張すれば,社内データや在庫管理システムなどといったデータベース情報の更新通知や同期,株価の情報自動配信やサーバ監視システムなどといったリアルタイムな情報が必要とされるエンタープライズ系のソリューションとしての用途が広がる。またプッシュサーバ側のAICON Wake-Up Systemでは,情報配信のタイミングをサーバ側で細かく制御できるため,情報の重要度に応じた配信の設定が可能となっている。

 Wake On Ringは既に機能として存在していたが,ノートPCなど起動の遅いマシンでの利用価値はなかった。ワイヤレスデータ通信のインフラが整備され,起動の速いデバイスが出てきて初めて生きてくる機能であり,Pocket PCが続々と登場しているこのタイミングでのAICON Wake-Up Systemの登場は,まさにタイムリーだ。

 アイコンによれば,ほかのPocket PCにも,ドライバやエンジンを搭載することでWake On Ring機能を利用することも可能だが,「PocketGearにはあらかじめ搭載されているので,サーバが対応すればすぐにでもこの機能を利用できる」。また,プッシュサーバ用ソリューションとしては日本初のシステムであるという。

 Pocket PCなどのPDAは,ケータイメールに匹敵するようなキラーアプリが存在しなかっため,爆発的な普及は難しかった。しかし,Wake On Ring機能がその役割を果たす可能性は高い。携帯電話同様リアルタイムで情報を入手でき,携帯電話より大きく見やすい画面で情報を閲覧できるなら,利用したいと思うユーザーも増えるはずだ。NECは,BIGLOBEがWake On Ring機能への対応を検討であると話しているが時期は未定。また,同社でも独自でWake On Ring機能対応ミドルウェアを開発中だ。

 アイコンでは,ISPやコンテンツプロバイダへの具体的な導入時期はまだ決まってないというが,すでに引き合いは来ており,社内ソリューションとしての導入については既に進行中の会社があるという。Wake On Ringが,PDAのキラーアプリとなるかどうかは,来年以降の普及の度合いによって見えてくるだろう。

[後藤祥子,ITmedia]

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