使って初めて分かった「みまもりケータイ」の正体(1):小寺信良「ケータイの力学」
Web閲覧やメール作成など、子どもに持たせることを前提に機能を制限した子ども向けケータイ。具体的にどんなことができて、どんなことができないのか? ソフトバンクモバイルの「みまもりケータイ」を買ってみた。
子どもと携帯電話の議論で、教育、ペアレンタルコントロールを越えてまず最初に表に出てくるのが、機能制限である。携帯が便利なのは分かるが、詳しいことは分からないから、とりあえず自分の知らない機能は全部止めたい、いわゆる子ども向けケータイのイメージとはそういうものではないだろうか。
小学生に持たせるケータイとして、子ども向けケータイという選択肢を否定するものではない。ただ勧めるにしろ批判するにしろ、実際に使ってみないことには、あまり具体的なことが語れない。そこで今年度、下の子どもが小学3年生になったのをきっかけに、ソフトバンクモバイルの「みまもりケータイ」を契約してみた。
ソフトバンクモバイルの場合、フィーチャーフォンのラインアップとして、一般向けの携帯電話以外はこのみまもりケータイと、高齢者向けの「かんたん携帯」しかない。だがみまもりケータイだけは料金体系が通常の携帯とは違うため、製品としては別枠となっている。
学校が始まる春休み中に動作確認しておきたかったので、3月末に購入したのだが、まずこの購入が非常に難航した。ソフトバンク直営店2件も回ったが、端末が品切れで入ってくる予定もないという。まもなく新モデルが出るのではないか? と従業員に聞いた見たが、そのような話は聞いておらず、単にうちの店舗に入ってこないだけだという答えだった。
仕方がないのであちこちの家電量販店を周り、ようやく販売代理店で在庫していた「みまもりケータイ 005Z」を購入できた。ところが約1週間後の4月7日、新モデル「みまもりケータイ2 101Z」が発売になった。
新モデルの発表が4月3日なので、一般の顧客に知らせる必要はないとは言え、形としてはまんまと流通在庫をつかまされたわけで、あまりいい気持ちはしない。春休み中の購入が特に多いと考えられるモデルで、新学期が始まってから新モデル投入というタイミングというのには、旧モデルの流通在庫払底を待っていたのではないかという疑問も感じる。
小学生低学年向けの特殊な作り
みまもりケータイの料金プランは、新モデルが出たことで2つになった。
両方を比較してみる限り、基本料金が新モデルは100円高い。新モデルは緊急地震速報の受信機能があるので、そのぶんが高いのかもしれない。ただキャンペーンで2年間は基本料無料なので、2年間で次のモデルに買い換えるなどするならば、実際両プランは同じと考えていいだろう。
新モデルのほうは3色のカラーバリエーションがあるが、どちらのモデルも機能的にはほとんど同じもののようである。本稿では旧モデルの005Zの機能で説明していく。
まずハードウェアとしての作りだが、普通のケータイに比べるとかなり小さく、サイズ感としては折りたたみ型の3分の2ぐらいだ。可動部分がほとんどなく、表面上で操作できるのは液晶画面下の押しボタン1つだけである。
本体てっぺんにはプルリングがあり、ここを引っぱると緊急アラームが鳴る。リングは抜けてしまうのではなく、根元の金具が引っ張り上げられるだけだ。この金具を押し込むと、アラームが止まる。
液晶の上にあるスリットが通話用のスピーカーだ。マイクは底面にあり、ストラップホールもそこにある。首から提げるという利用が想定されており、長さ調節が簡単にできるストラップが付属している。
電池やSIMは背面のフタを外して交換できるようになっているが、防水機能があり、フタの内周はゴムパッキンで覆われている。背面1カ所でネジ止めし、そこを付属のキャップでふさぐ。これらは自分で行なう必要はなく、販売店ですべて行なってくれる。
右側面の2つの端子は、クレードルでの充電時に接触する部分。フタでカバーされたMicro USB端子もあり、そこを使って充電することもできる。本機は汚れたら水洗いもできるが、このUSB端子部分の端子を押さえながら洗う必要があると、サイトのQ&Aに書かれている。フタの内部にはピンで押すタイプのスイッチがあり、それが電源ボタンだ。基本的には電源を入り切りするものではなく、常時入りっぱなしという前提だ。この構造を知らない者は、電源を切ることもできないし、入れることもできない。また飛行機に乗るなどするときは、なにか航空保安上問題のない範囲で先の尖ったものを持っていないと、困ることになる。
液晶はモノクロで、簡単な表示が出るのみだ。メール作成機能、電話帳機能、インターネット接続機能などはない。ただSMSの自動発信機能を備えており、GPSによる位置情報が分かる。
次回は具体的に何ができて何ができないのか、サービスの実際をご紹介しよう。
小寺信良
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia +Dモバイルでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。
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