News | 2000年11月1日 11:04 PM 更新 |
東京放送(TBS)の放送技術展示会「Media Parade 2000」2日目の11月1日,ソニーの出井伸之会長とNTTドコモの大星公二会長が基調講演を行った。出井会長は「放送と通信の融合はそう簡単ではない。一斉同時配信というTVの本質は不滅だ」との見方を示した。また大星会長は,TV用セットトップボックス(STB)にドコモのパケット通信網「Do-Pa」端末を組み込み,ECなどに活用する戦略を披露した。
出井会長は冒頭,「TVは不滅。ブロードバンド化しても本質に変化はない」と切り出し,聴衆の意表を突いた。というのも,基調講演のテーマは「ブロードバンド・インターネットの出現と,放送・通信・ITの融合」。内容からすれば“TVもネットも関係なくなる”云々といった内容の発言を大方が予想していたにもかかわらず,出井会長は「ビジネスモデルは変わっても,放送と通信の融合は難しいのでは」「TVがなくなるという人もいるが,私はそうは思わない。メディアはどんどん増えていくもの。TVは当分は不滅」と続けた。
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ソニーの出井会長。「ビル・ゲイツは以前,『TVはPCに併合される』なんて言ってたが,われわれは当時からそんなことはないと主張してきた。今ではゲイツは一言もそんなこと言わないし,ついにはXboxなんて発表した」とチクリ |
さらにTVとネットは,対象となるユーザーの広がりも異なる。インターネットはグローバルでオープンなメディアだが,TVはCATVや地上波放送のように,限定された地域内での情報配信に威力を発揮する。つまり「私の好きな谷村新司,あれは現代の演歌だと思うが,これは日本やアジアで受け入れられている。しかし坂本龍一の音楽はコルシカ島やシチリア島の住人にも通じるだろう。つまり地域的なコンテンツとインターナショナルなコンテンツが存在するということ」。従ってネットや地上波TV,CATV,BS/CS放送ではそれぞれコンテンツの内容が異なることになる。その上で「ネットとTVが組み合わせれば大メディアになるだろう」。これが出井会長の考えるネットと放送の融合だ。
ただし将来的にFTTHが一般的になり,家庭のブロードバンド化が進めば,あえて電波で放送を流す必要はなくなる。つまり電波使用のライセンスを前提にしていた現在のTVのビジネスモデルは「必ず変わる」。ここで出井会長お得意の“インターネットは巨大隕石だ”論を持ち出しつつ,「白亜紀の隕石落下の後でもほ乳類は生き延びた。ソニーもベータがVHSに負けたりと何度も崩壊してきたが,そのたびに進化を遂げている。同じようにインターネットは本質的な変化を世界に与えようとしているが,それに対応していく自己変革がすべてのキーになるだろう」と講演を締めくくった。
NTTドコモの大星会長の基調講演は「放送機能の進化と社会的インパクト」。大星会長によると,社長を務めていた1996年,携帯電話の契約数が急速に伸びつつあったにもかかわらず,「日本の人口は1億2000万人。普及が進めばいずれ“蛇口”は行き渡る。そこに流れる水の質を考えなければ」と危機感を抱いたという。そこで打ち出したのが「音声から非音声への転換」。大ヒットとなったポケットボードやiモードはこうして誕生した。
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NTTドコモの大星会長。AOLとドコモの提携について触れ,「ネットワークや事業がある程度の規模になると,色々なところから提携の話を頂くようになる。ドコモはカムカムエブリバディ」 |
こうしてTVや携帯電話を通じたネットワークが形成されれば,人と人のコミュニケーションの緊密化や,情報獲得手段と情報そのものの量の増加により,社会の知的レベルの底上げ,といったインパクトも出てくるという。「端末は細胞の核のようなもの。端末同士が接続されれば,社会全体が有機的につながることになる」と述べた上で,「例えば孤独な高齢者同士がつながることで前向きな高齢化社会になる」と社会のネットワーク化の効用を指摘した。
Media Parade 2000最終日の11月2日は,NECの西垣浩司社長と米Microsoft副社長の古川亨氏が講演を行う。
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