News 2001年1月10日 09:44 PM 更新

IP電話がマイライン参戦──フュージョン・コミュニケーションズが全国一律料金の長距離電話サービス

VoIP技術をベースとして,通常の電話と変わらない使い勝手の長距離電話サービスが始まる。通話料は市外電話が,距離に関係なく一律3分20円。

 マイラインの受付が開始された1月10日,通信ベンチャーのフュージョン・コミュニケーションズが既存の通信事業者とはひと味違うサービスを打ち出した。市外電話が,距離に関係なく一律3分20円。北海道や沖縄に電話しても,昼夜問わず同じ通話料だ。「市外通話は少数の事業者が高いシェアを握り,料金も高止まりの状態。他社もさまざまなサービスを組み合わせて値引きしているが,われわれはその半分にできる」(同社の角田忠久社長)。IPを使った電話サービスが既存の概念をうち破り,価格破壊を引き起こそうとしている。

 フュージョン・コミュニケーションズは,「IPにフォーカスした新世代の通信事業者」を謳って2000年3月に設立されたベンチャー企業。7月に「第1種電気通信事業免許」およびFWA(加入者系無線アクセス)免許を取得し,2001年春のサービスインを目指して準備を進めてきた。そのビジネスモデルは,全国をカバーする光ファイバーバックボーンを構築し,電話・インターネット接続・企業やISP向けのVPN(Virtual Private Network)といったサービスを提供するというもの(2000年5月の記事を参照)。現在のところ,自社の光ファイバー網は所有していないが,ダークファイバーをはじめとする各種の規制緩和により,サービスが可能になった。同社取締役の辻孝夫氏は「10年前なら2000億円近くかかったはずのインフラ整備が,今なら100〜200億円程度でできるようになった」と話している。

 サービスの第1弾となるのが,電話会社識別番号「0038」の市外・長距離電話だ。通常,日本の市外通話は距離によって段階的に料金が上がる仕組みになっているが,同社はVoIP技術の応用により,距離に依存しない国内初の長距離電話サービスを提供する。また,従来のIP電話では,通話品質の悪さをはじめ,FAXが利用できない,一旦市内のアクセスポイントにダイヤルしてから通話先の電話番号を再度入力する手間がかかるといった問題点が指摘されているが,「われわれのサービスは,通常の電話と同じ品質と使い勝手で利用できる。最初に0038をダイヤルするだけであり,マイラインを利用すればそれも必要ない」(角田氏)という。FAXやデータ通信も可能で,ISDN回線も対応できる。

 同時に開始するインターネット接続サービスも,全国共通のアクセスポイントを採用することで,距離を気にする必要がないサービスになった。電話サービスの加入者を対象に,月額基本料200円,通信料3分10円で提供する(プロバイダ料金込み)。なお,マイラインプラスでフュージョン・コミュニケーションズを選択した場合は,月額基本料が無料になる割引サービスもある。

マイラインで参入決定

 ユーザーが電話会社を選ぶ「マイライン」は,予め電話会社を登録することで,電話会社の識別番号をダイヤルする手間が省けるというものだ。識別番号を入力する手間が,公平な競争を阻害しているとして,主にNCC(新電電)各社の要望によって創設された。特に,最近は市内通話料金を巡って各社が激しい値下げ競争を繰り広げているが,実際は市内通話・県内通話・県外通話・国際通話という4つに区分され,それぞれに電話会社を選ぶことができる。同社では,この県内通話・県外通話の分野で「まず100万回線,2004年までには250万回線を目指す」(角田氏)。

 また角田氏は,マイラインがなければ市外通話市場には参入していなかったとも話す。「マイラインは,電話ユーザーのみならず,新規事業者にとっても非常にメリットがあるもの。ユーザーニーズに沿ったサービスさえ提供すれば,あとはユーザーが選んでくれるからだ」(角田氏)。

 既存の通信事業者が10銭単位の価格競争を繰り広げる中で,飛び抜けた低価格を提示したフュージョン・コミュニケーションズ。知名度の低さと未知数の通話品質を除けば,ユーザーに対する訴求力は高そうだ。

フュージョン・コミュニケーションズのサービスロードマップ
2001年1月マイライン受付開始
2001年2月FWA(Fixed Wireless Access)による広域LAN構築サービス開始
2001年4月市外電話サービス,インターネット接続サービス開始
2001年5月マイライン開始
2001年6月国際電話サービスに参入予定
2001年夏企業向けVPNサービスおよびバーチャルISP(ISP向けに回線を貸与)事業開始

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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