News | 2001年4月27日 11:58 PM 更新 |
NTTは4月27日,ピアツーピア(P2P)技術を応用したネットワークアーキテクチャ「SIONet」(Semantic Information-Oriented Network)を発表した。SIONetは,エンドユーザーの興味にマッチした情報を,ユーザーの環境に適した形でリアルタイムに配信する「意味情報ネットワーク」のプラットフォーム。デベロッパーは,共通化された基盤の上でP2Pアプリケーションを開発することが可能になるが,「Napster」に代表されるファイル交換ソフトのイメージが,ここでも足枷になっている。
SIONetでは,コンテンツプロバイダーが「イベントプレース」と呼ばれるネットワークにコンテンツを投げるだけで,その情報を求めるユーザーの元へ届けることができる。イベントプレースとは,サービスに応じて論理的に分割したネットワークのこと。例えば,「不動産イベントプレース」に不動産業者が物件情報を流すと,付加された物件の種類(アパート,マンションなど)や価格,地域,条件(駅から徒歩5分など)の意味情報から,条件に適合するユーザーに直接届けることが可能になるという。
コンテンツの提供や取得は,エージェントに代行させるため,ユーザーに煩雑な操作は求めない。エンドユーザーは「Internet Explorer」のような一般的なアプリケーションで意味情報ネットワークを利用することができる。また,コンテンツプロバイダー側は,ホームページなどを立ち上げる必要もなくなる。
NTTでは,将来的に種々のイベントプレースを設けることで,フォーカスを絞ったマーケティング活動やコラボレーション,企業内アプリケーションなど,さまざまなサービスへの応用が期待できるとしている。「SIONetを用いたサービスの研究を進め,多彩なP2Pサービスの早期展開を図る」(同社)。時期は明らかにされていないが,年内にも,SIONetに対応した最初のP2Pサービスが登場する見込みだ。
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SIONet自体は,IPネットワーク(レイヤー3)よりも上位のレイヤー7に位置するもので,ネットワーク上に専用のノード(SIONetルータやSIONetスイッチ)を設ける必要がある。各ノードが,ファイルに付加された情報の送信範囲や内容といったメタデータ(意味情報)により,最適な転送先と転送経路を決定する仕組み |
しかしながら,「Napster」や「Gnutella」といったファイル交換ソフトが作り上げたP2Pのイメージは,ここでも尾を引いている。
SIONetでは,アプリケーションと下位プロトコルを明確に分け,それぞれのアプリケーションに標準的なインタフェースを提供する。これにより,従来のP2Pアプリケーションのようにサービスごとに通信プロトコルを独自開発する必要がなくなり,アプリケーションの開発や連携が容易になる。逆に言えば,インタフェースさえ確保してしまえば,Napsterのようなファイル交換ソフトを簡単に開発できてしまうということだ。SIONetは,現在CORBA(Common Object Request-Broker)とIIOP(インターネットORB間プロトコル)に対応しており,SOAP(Simple Object Access Protocol)やJxta(別記事を参照)などもサポートする予定。
NTT第三部門R&Dビジョン担当の池内哲之氏は,「意味情報のメタデータは,ユーザーが書き換えてしまうと分からなくなる。バイナリレベルで解析することは事実上不可能だ」と指摘する。SIONetを開発したために,ファイル交換ソフトが氾濫してはたまらない。このため,NTTでは,仕様やインタフェースの公開は控え,「倫理的,社会的な視点から,しばらくファイル交換等への応用は行わない。まずはNTTグループ内の事業会社と共同で,企業向けサービスへ展開する」(池内氏)としている。
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