News 2001年5月21日 09:12 PM 更新

第2のDVDを目指すPS2

SCEによると,PS2のブロードバンド対応は3つの方向性を持っているという。そのうちの1つが,インターネットをインフラとしたオンデマンドの映像放送を受信するプレーヤー,つまりPS2を「第2のDVD」とすることだ。

 E3(Electronic Entertainment Expo)3日目。ゲーム専門誌の取材陣より一足早く帰途につき,原稿の続きを書こうと空港のラウンジを訪れると,そこはゲームコンソール関係者が集う社交場となっていた。ちょっとでも「XXXはイマイチだったなぁ」なんて叫ぼうものなら,そこら中から視線を集める。そんな雰囲気だ(いや,実際にコレをやって,たしなめられてしまったのだが)。

 その中には,顔見知りのソニー・コンピュータ・エンターテイメント幹部の姿もあった。ハードウェアとデベロッパサポートを担当してきた幹部氏は,現在,PlayStation 2(PS2)のブロードバンド事業に取り組んでいるという。

PS2を第2のDVDに

 彼の話によると,PS2のブロードバンド対応は3つの方向性を持っており,そのうちの1つが,PS2を第2のDVDとすることなのだという。E3会場では「RealPlayer 8」を用いた1Mbpsのストリーム再生と,20MbpsのHDTVストリーム再生が行われていた(5月18日の記事を参照)。インターネットをインフラとしたオンデマンドの映像放送を受信するプレーヤーとして,PS2を活用するというわけだ。

 現在,こうしたインターネットのストリームデータを再生する装置は,PC以外にはほとんど普及していない。リビングでくつろぎながら映像を楽しむとき,果たしてPCのディスプレイで満足するか? いや,決してそんなことはないだろう。その役目は,テレビ受像器が担当するべきだ。

 そのためにはセットトップボックスがあるではないか,という意見もあるだろうが,これまでインターネットを活用したセットトップボックスが普及したことがあっただろうか? しかし,PS2はゲーム機として広く普及する可能性がある。そのPS2が,容易にブロードバンド対応でき,かつインターネット上のさまざまなメディア,コンテンツを再生可能になるなら,そこには単なるセットトップボックスよりも大きな可能性があるかもしれない。

 そうした意味で,PS2を第2のDVDに,という考え方は,それほど間違ってはいないようにも思える。ただし成功が約束された世界,というわけでもないだろう。

リアルタイムのコミュニケーションをゲームユーザーに

 一方,AOLとの提携ではリアルタイムのコミュニケーションをゲームコンソールのユーザーに与えることが主たる目的のようだ。1つのサーバに仮想世界を作り上げ,その上で大勢のプレーヤーがゲームを楽しむ,大規模オンラインゲームが近年注目されてきた。

 しかし,一度サーバを構築し,ユーザーを集め,規模を拡大してしまうと,ユーザーに不利益を生じさせないためには規模の縮小を行いにくい。ユーザーがそのゲームを常にやり続けるため,さまざまな工夫を1つのゲームに対して継続的に行わねばならない。これはゲームベンダーにとって,大きな経済的負担になる。

 幹部氏も「大規模型はこれまで,Ultima OnlineとEverQuestの2つしか成功例がない。われわれが考えているのは,もっとライトなオンライン対応。たとえば対戦ゲームを楽しみたいと思っても,仲間と連絡を取ったり,新しい対戦相手を求めてOne to Oneのマッチングを取るための枠組みが存在しない」と話す。そのために,AOLのインスタントメッセージングサービスを取り込む必要があったわけだ。

 ここからは筆者の想像だが,一人でパズルゲームででも遊んでいると,そのうち友人がネットワークに接続したメッセージがポップアップ。連絡を取り合って別のゲームで対戦。あるいはログインして友人のリストを眺めると,現在,どんなゲームで遊んでいるのかをモニターでき,暇そうなヤツにメッセージを送って対戦。なんてことができれば,オンラインを通じたゲームの楽しみも広がるだろう。しかし,そのためにはすべてのゲームが,同一のオンラインコミュニケーションのフレームワークに沿った形で開発されなければなrない。

 SCEはネットワーク対応のためのコンポーネントをゲームデベロッパに提供するという。この中に,そうしたフレームワークが含まれているのかどうか?を訊く前に,飛行機の最終搭乗案内が放送された。

 そうそう,液晶ディスプレイやキーボード,マウスのセットは,どんな利用場面を想定しているのだろうか? ネット端末としてのビジネスモデルは確立したの? と最後に訪ねると「ネット端末でもなんでも,アドオンで台数が出てくれればいい。普及台数が増えることはゲームコンソールベンダーにとって,絶対的に良いことなのだから」と話しながら,幹部氏は成田行きの飛行機へと乗り込んでいった。

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[本田雅一, ITmedia]

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