News 2001年7月3日 11:56 PM 更新

松下電器がトヨタでF1参戦。その狙いは?

松下電器がトヨタF1チームのタイトルスポンサーになることが決まった。同社が巨額のスポンサー料を払ってまで,F1を通じて手にしたいものは,いったい何なのだろうか。

 松下電器は7月3日,2002年からF1に参戦するトヨタ自動車のタイトルスポンサーになることで合意し,トヨタ・モータースポーツを含めた3社で契約の締結を行った。

 タイトルスポンサーの契約期間は,トヨタ自動車がF1に参戦表明をしている2002〜2006年末の5年間。スポンサー料は公開されていない。この契約により,トヨタのチーム名は「パナソニック・トヨタ・レーシング(Panasonic TOYOTA Rasing)」となり,F1カーのボディサイドとリアウイングに「Panasonic」の文字が入る。

 都内ホテルで行われた発表会場には,松下電器の中村邦夫社長,トヨタ自動車の張富士夫社長,トヨタ・モータースポーツのオベ・アンダーソン社長が出席した。


都内ホテルで行われた発表会。中央が張社長,右から2番目が中村社長,左端がオベ・アンダーソン社長

 会場では,パナソニック・トヨタ・レーシングカラーに塗られたF1カーの1/2モデルも披露。トヨタのF1カーは赤と白のツートンが特徴だが,パナソニック・トヨタ・レーシングとなったF1カーもカラーリングは同じもの。タイトルスポンサーとなった松下電器が得たものは,ボディサイドの白地の部分にブルーに光るPanasonicの文字だ。ボディカラーが紅白なので,対照的な色の青文字が目立つかたちとなっている。


握手を交わす3社の社長。F1ボディにPanasonicの文字が光る

 松下の“F1参戦”の狙いは,ズバリ「Panasonicブランドの認知向上」だ。中村社長は「F1はモータースポーツの最高峰。若いユーザーにも人気があり,世界的にもこれほど知られているものはない」と語る。

 F1が盛んな欧州を転戦することで,同市場にPanasonicブランドを一層浸透させることができる。もちろん対象は欧州だけではなく「全世界で繰り広げられるF1は,Panasonicブランドを世界中に知らしめる格好の媒体」(中村社長)となる。


「狙いはブランドイメージの向上」と語る中村社長

 松下電器とトヨタ自動車は,これまでも自動車向けのAV機器や,ハイブリッドカー用バッテリーの共同開発などを通じて,協力関係を築いてきた。F1プロジェクトにおける今回の提携を通じて,両社はさらに関係強化を図ろうとしている。また松下電器は,F1参戦にあたって必要な最先端技術についても積極的に提供し,トヨタF1プロジェクトを支援していくという。

 エレクトロニクスメーカーがF1に技術協力を行う代表的な例としては,チーム監督とレーシングドライバー間の連絡や,サーキットやピット内にいるスタッフ間の連絡に使われる無線通信システムがある。ただし今回の契約は,あくまでもタイトルスポンサーということで,技術的な支援に関する条項は,契約には盛り込まれていない。

 この件について中村社長は「Panasonicの最先端テクノロジーは,通信システムなどF1に生かせる部分が多い。要請があれば技術協力は惜しまない」とし,最新技術のカタマリといわれるF1カーの,エレクトロニクス分野でも積極的に支援する構えを見せている。

 松下電器には,もう1つの目論みがある。次世代TV放送として期待のデジタルテレビ放送のキラーコンテンツに,F1を持ってきたいのだ。2003年から始まる地上波デジタル放送では,モバイル環境での受信技術向上が特徴のひとつになっている。「現在の地上波放送では,車の中で画面が乱れるが,地上波デジタルでは,車の中でもクリアな画面が楽しめる。今後,車載デジタルシステムはさらに重要になる」(中村社長)。

 なお,今回の記者会見の模様は,インターネット総合サービス「Panasonic Hi-Ho」のサイト内で7月3日午後9時から8月2日までオンデマンド中継される。

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[西坂真人, ITmedia]

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