News 2001年12月27日 10:09 PM 更新

バンダイ戦略開発室が考える「ネットワーク対応ロボット」の可能性

ハイテク玩具が全盛だが,その勢いはとどまるこはなさそうだ。バンダイ戦略開発室では,子どもよりも,大人もターゲットにした本格指向の製品を開発中である。中でも,“ネットワーク対応ロボット”は大ブレイクが期待できそうだ。

 バンダイ戦略開発室は,「従来バンダイが作ってこなかった製品を開発する」ことをテーマに掲げている。1体5万円という価格にもかかわらず人気を博した完全自律型ロボット「BN-1」は,戦略開発室から誕生したプロダクトであり,最近では,無線LANで操作できる「ネットボーグ」を国際ロボット展に参考出展した。

 「プーチ」などを手がけるセガトイズとは対照的に,本格指向のロボット作りを目指すバンダイ戦略開発室。そのデピュティ ゼネラルマネージャーである芳賀義典氏にネットワーク対応ロボットへの取り組みを聞いた。(聞き手・中村琢磨)

ZDNet:「ネットボーグ」は実際に製品化するのですか?

芳賀:来年3月ぐらいには,製品化する予定です。といっても,デパートの玩具コーナーで販売するのではなく,最初はサンプル販売という形になるでしょう。ネットワーク対応ロボットという製品に対して,どんなニーズがあるかまだ分からないので,試験的に広めていこうと思います。台数としては,数百台は売りたいですね。


国際ロボット展に参考出品されたネットボーグ

ZDNet: 具体的には,どんな方法ですか?

芳賀:例えば,クルマのショールームに置いたりしたら面白いんじゃないですか? ほかには,企業のホームページで使うとか。社内を,ネットボーグで探検できたら,魅力的ですよね。そういった販売促進ツール的な商品にしていこうと計画しています。そのために,バッテリーだけで10時間は動くように設計しようと考えています。それと,キャタピラは評判がよかったので,そのままいきます(笑)


バンダイ戦略開発室のデピュティ ゼネラルマネージャーである芳賀義典氏

ZDNet:なぜ,一般向けには売らないのですか?

芳賀:まったく売らないというわけではありませんが,サンプル販売という扱いにする最大の理由は,アプリケーションの問題です。ネットワーク対応ロボットで,何をするのか? という問いかけに対して,まだ十分な回答が用意できていません。

 実際に何ができるのかということを調べるために,まずはサンプル販売するのです。いろいろとフィードバックを受けて,次の商品開発につなげていこうと思ってます。玩具業界も,社内で黙々と開発するだけでなく,外と協力していく時代になりました。国際ロボット展では,「離れて暮らす両親とのコミュニケーションに使いたい」と言っていた人がいましたが,そうした声を拾っていきたいですね。

 つまり,いかにして“プレイバリュー”を持たせるかということです。例えば,販促ツールとして使うよりも,ぬいぐるみに無線機能を搭載して“ベビーシッターロボット”として製品化したほうがいいんじゃないかという声もあります。最終的にどうなるのか,まだ全く分かりません。

 それと,価格の問題もあります。現状では,だいたい20万円くらいになる予定です。個人向けに売る場合には,もっとダウンサイジングする必要があるでしょう。

ZDNet:ダウンサイジングというと?

芳賀:価格だけのことを言うわけではないのですが,無線のインタフェースも無線LANだけではないと思います。システムのインタフェースも,見直さなければならないかもしれません。ネットボーグは,それ自体がWebサーバになりますが,コストを下げるのであれば,PCと何かの方法で接続して,サーバ機能はPCのほうに備えれば,価格は安くすることができます。

 ネットボーグの開発に着手したのは1997年のことなのですが,その頃から実験的にWebで操作できるようにしていました。ダイヤルアップ環境だったので,映像は秒1コマぐらいだったのですが,トータルで1万人くらいはアクセスしたんじゃないでしょうか。いろんなタイプがあって,PHSモジュールを内蔵したタイプも開発していました。ネットワークとの接点が玩具業界にまだなかった時代なので,会社に内緒でこっそりやってたんですけどね(笑)

ZDNet:「ハイテク玩具のハイテク化」といったらおかしいですが,最近,玩具もどんどん機能が増えていますよね。なかなか侮れません。そんな中,来年あたりはネットワーク対応ロボットがブームになりそうな気もするのですが。

芳賀:確かに,子供だましじゃ通用しなくなってきていますね。ただ,正直なところ,ネットワーク対応ロボットという市場が,どの程度あるのか分かりません。大きいかもしれないし,そうではないかもしれない。

 ただ,これだけは言えると思うのですが,「面白いもの」は絶対売れると思います。用途は別として,遠隔地のロボットを操作するというのは,直感的に「やってみたい」と思うでしょうし,ロボットのパイロットになったような気分も味わえます。問題は,切り口なんですよ。どんなコンテンツを提供するか,とも言えますね。

ZDNet:ネットボーグ以外にも,ネットワーク対応ロボットを製品化する予定はありますか?

芳賀:もちろん,製品化していくつもりです。現状ではなんとも言えませんが……。例えば,戦略開発室の担当ではないですが,ザクのデジタルカメラとして,2002年3月に「Digital Mono Eye MS-06 ZAKUII」を発売します。

 これは,ザクのモノアイが30万画素のCMOSセンサーになっていて,頭部に8Mバイトのメモリを搭載するUSBカメラです。PCと接続するだけでなく,プラモデルの「パーフェクトグレード MS-06 ZAKUII」の頭部と交換できるという優れものです(笑)


「Digital Mono Eye MS-06 ZAKUII」

 これのどこがネットワーク対応かというと,Windows XP搭載PCに接続すれば,ザクカメラを使ってビデオチャットも可能だからです。これだけだとインパクトが弱いかもしれませんが,添付のCD-ROMには,カメラ映像のフレームがザクのコックピットになる専用アプリケーションも同梱されています。

 また,バンダイでは定番玩具を開発するイノベーティブトイ事業部や,キャラクターの特性を活かした玩具を開発するキャラクタートイ事業部が玩具を開発していますが,そうした方面でも,今後は,“ネットワーク対応”がキーワードになることは間違いないでしょう。

(文中敬称略)

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[中村琢磨, ITmedia]

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