News 2002年3月18日 10:19 PM 更新

イーブック端末,モノクロ版は2万円で今秋にも登場

「コンテンツベンチャープラザ2002」で,イーブックイニシアティブジャパンが,電子書籍事業の今後の展開を紹介。合わせて今秋発売予定のイーブック読書専用端末の詳細も明らかにした。

 イーブックイニシアティブジャパンは,3月18日に開催された「コンテンツベンチャープラザ2002」の会場において,電子書籍事業の今後の展開とイーブック読書専用端末のコンセプトモデルを紹介。同時に,製品版がカラー・モノクロの両モデルで今秋にも発売することを明らかにした。

 今回,同社が出展したコンテンツベンチャープラザは,デジタルコンテンツ協会が毎年開催しているもの。ベンチャー企業が開発したコンテンツやビジネスモデルを広くアピールして,ビジネスチャンスにつながる新たな出会いを創出するために行われている。今回は,8社のベンチャーがオリジナリティあふれるコンテンツを紹介したが,中でも同社が展開するイーブック事業は,特に来場者の注目を集めていた。

 同社は,通産省(現在の経済産業省)支援のもとに出版社やエレクトロニクスメーカー155社が集まった「電子書籍コンソーシアム」での実証実験の成果を引き継いで,2000年より電子書籍の事業を開始した。現在,マンガを中心に小説や写真集など約1800の作品を電子化し,インターネットやネットカフェ,雑誌へのバンドルなどを通じてユーザーに提供している。

 「特に昨年12月末にスタートした手塚治虫のマンガ全集が好評。紙の書籍の半額程度となる1冊200〜300円で購入できる点が評価されている。1冊分10Mバイト前後とデータサイズが大きいものの,ブロードバンド・常時接続が一般ユーザーに広がったことが電子書籍の普及を後押ししている」(同社)。

 今後の事業展開については,図書館や学校などのパブリックスペースや,飛行機・列車・客船内など,ある一定の場所に限って閲覧できるサービスも検討しているというが,同社が一番期待を寄せているのが,読書専用端末による個人ユースへの展開だ。

 会場では,個人で電子書籍を楽しむためのイーブック読書専用端末のコンセプトモデルが展示された。この読書専用端末は,同社と東芝,NTTデータの3社共同で開発したものだ。


読書専用端末のコンセプトモデル

製品版は今秋にも登場。モノクロは2万円前後

 今回展示されたコンセプトモデルは,昨年4月に発表した時のものと同じタイプで,デスクトップPCで制御していた。同社によると今年の秋にはカラーとモノクロの両タイプで製品版が発売される予定という。2月に凸版印刷との提携強化を発表したE Inkの電子ペーパー商品化は,2003年春といわれているので,イーブックはそれよりも先行して登場することになる。

 コンセプトモデルは東芝の低温ポリシリコンTFT液晶パネルを使ったカラー液晶を採用していたが,製品版のカラーモデルも同じパネルを使う予定。一方,モノクロモデルは国内のベンチャー企業が開発した独自のモノクロ液晶パネルを採用するという。

 解像度はカラー・モノクロ両モデルともに200ppi(1インチあたり200ピクセル)と,高精細表示が可能。「現在の液晶ディスプレイは100ppi程度なので,倍の解像度となる。これは人間が本を手にとって見る距離でちょうど判読できる精細さ。フキダシの文字はもちろん,漢字のルビもしっかり読める」(同社)。

 書籍画面は1ページ1枚の画像として取り込まれ,独自の圧縮技術によって画像を圧縮する。電子文書のフォーマットとして一般的なPDF形式に比べて,画質を落とさずに1/3〜1/5のデータサイズに圧縮できるという。「この圧縮技術を使えば,200ページ前後の鉄腕アトムのマンガが1冊10Mバイト前後に収まる」(同社)。圧縮した画像データは,SDやコンパクトフラッシュといった小型メモリカードを介して専用端末で利用する。

 電子書籍端末で一番気になるのが,バッテリーの持ち時間と重さだ。バッテリーについて同社では「カラータイプは専用バッテリーで約10時間の連続動作を目指している。モノクロタイプでは,単3電池2本で約100冊分(1冊200ページ前後)の読書が可能になる」と語っている。

 モノクロタイプでの同社の発言が興味深いところだ。バッテリー持続時間の表現で,動作時間ではなく“約100冊読める”としている。これは,今回採用されるモノクロ液晶ディスプレイが,電源をオフにしても表示内容が保持されるタイプだからだ。

 「E Inkの電子ペーパーと“似たような方式”を使用しているので,ページをめくる時にしか電力が消費しない」(同社)。

 重さはどうだろうか。昨年4月に発表したコンセプト機では約350グラムとなっていたが,製品版ではやや重くなりカラータイプが約400グラムになるという。それでも「単行本1冊とほぼ同じ」(同社)程度の重さなので,ノートPCで閲覧するよりははるかに楽だろう。一方,モノクロタイプは約300グラムとなり,缶ジュース1本分程度の軽量ボディで登場する予定だ。

 端末の価格は,カラータイプが6万円前後となるものの,モノクロタイプは2万円前後と,かなりの普及価格で登場するという。「単3電池2本」で「100冊分の読書」ができる「缶ジュース1本分の重さ」のモノクロタイプの方が,より魅力的な製品と言えそうだ。

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[西坂真人,ITmedia]

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