News 2002年10月15日 11:25 PM 更新

「XPのサポートでBluetoothは躍進する」――シーエスアール社長

先日、Windows XPでのBluetoothサポートが始まった。メジャーOSによるBluetoothサポートの意味と今後のBluetooth市場の可能性について、Bluetoothチップメーカー最大手Cambridge Silicon Radio(CSR)の日本法人社長に聞いた

 先日、MicrosoftがWindows XPにBluetoothサポートを追加するためのアップデートソフトをPCメーカー向けにリリースした(9月30日の記事を参照)。Windows Updateによるコンシューマ向け配布も、秒読み段階に入っている。これによって、期待されながらもなかなか普及が進まなかったこの“次世代近距離無線技術”が、PCの世界で一気に普及する可能性が出てきた。

 Bluetoothチップメーカー最大手Cambridge Silicon Radio(CSR)の日本法人であるシーエスアールの塚越明義社長に、メジャーOSによるBluetoothサポートの意味と今後のBluetooth市場の可能性、そしてBluetoothリーディングカンパニーとしての同社の役割について聞いた。


シーエスアールの塚越明義社長

 塚越氏は「Microsoftの発表は、Bluetooth普及に向けての画期的なアナウンスだった」と語る。

 CSRは今年5月に、第2世代の1チップBluetoothチップ「BlueCore2」にWindowsソフトウェアをバンドルしたPCメーカー向けBluetoothパッケージ「BlueCore2-PC」を発表。PCメーカーがPCにBluetooth機能を組み込むことを容易にしている。塚越氏は、XPのBluetoothサポートが、BlueCore2-PCなど同社のPC向けソリューション製品の普及が加速されるとアピールする。

 「メジャーOSのサポートによって、使う側からも、製品を開発する側からも、PC上からのBluetoothの取り扱いが簡単になってBluetoothとPCの世界が非常に密接になった。かつてUSBがWindows 2000/98でサポートされた時に、USBが一気に普及したような状況が、Bluetoothでも起きると期待している」(塚越氏)。

 塚越氏によると、この追い風によって、2001年には1000万ユニットにも満たなかったBluetoothの市場規模が、2003年には1億8000万ユニットと一気に拡大。それ以降も、2005年には8億ユニット、2006年には13億ユニットと爆発的な普及が見込めるという。

普及のポイントとなるコスト面のブレークスルーは?

 日本市場はCSRの最大の取引先で、売り上げ全体の6割以上を占める。アルプス電気や村田製作所、太陽誘電など国内の大手モジュールメーカーが提供するBluetoothモジュールのほとんどが、CSRのBluetoothチップを採用しているからだ。


国内の大手モジュールメーカーのほとんどが、CSRのBluetoothチップを採用

 先日開催されたCEATECで、これらBluetoothモジュールメーカーにセットメーカーのBluetooth採用の現状について聞いたところ、「セットメーカー自体は、いろんな製品にBluetoothを組み込みたいのだが、コスト面で二の足を踏んでいるようだ」という声が寄せられた(10月3日の記事を参照)。

 モジュールメーカー側の意見としては「CSRが提供するBluetoothチップがもう少し安くなれば……」という声が多かった。現在のBluetoothの普及に、チップのコスト高が足かせになっている点は否めない。コスト面でのブレークスルーはあるのだろうか。

 この点について塚越氏は「当社のBluetoothチップ“BlueCore”は、今年から第1世代から第2世代への移行が始まっている。従来製品に比べてコストが30%ほど下がっている第2世代チップの採用が増えてくるに従って、Bluetoothモジュールのコストも下がってくるだろう」と語る。

 また塚越氏は、コストダウンに向けたソリューションの1つとして、今年の9月に発表した「BlueCore2-ROM」を挙げる。これは、RF/ベースバンド/マイクロコントローラに加えてROMをワンチップに集積したもの。従来のチップは、外付けのフラッシュメモリにファームウェアを書き込むタイプだったが、これをROM化することで外部メモリが不要となり、低コストにつながるというものだ。

 「ROM化のメリットは、数ドルするフラッシュメモリがなくなるだけでなく、外部メモリ搭載に必要だった構成部品も要らなくなる。外部メモリに使っていた分の消費電力も減るし、実装面積も小さくなる。これらのメリットは、モジュールになったときに総合的なコストに反映される」(塚越氏)。

 また、Windows XPのBluetoothサポートが、結果的にBluetooth製品の開発期間短縮にもつながり、それがコストダウンに結びつくという。

 「これまでBluetooth対応のPC周辺機器をセットメーカーが作ろうとする場合、PC上で動くBluetoothアプリケーションも自前で用意しなければならなかった。Bluetoothスタックメーカーやアプリケーションメーカーとタイアップしなければ開発できないため、それなりの資金を投じて相当な期間をかけていた。こうした従来の開発行程のいくつかは、XPサポートによって確実に軽減される。開発コストの低減は、製品価格に反映される」(塚越氏)。

 Windows XP発売時の正式サポートから除外され、一度は普及の道を断たれたかに見えたBluetoothだが、今回のアップデートによるサポート復活で息を吹き返した。PCで普及すれば、PCにつながる携帯電話やPDA、デジカメ、プリンタなどへの搭載も加速される。過去のデバイス規格の例からも、一度弾みがつけば爆発的に普及する可能性は高い。Bluetoothの今後の動向に注目したい。

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[西坂真人, ITmedia]

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