News | 2003年6月17日 08:24 PM 更新 |
シャープは6月17日、液晶TV「AQUOS」シリーズ新製品として、地上デジタル放送に対応したハイビジョン液晶TVなど計5機種を発表した。6月27日から順次発売する。
新製品のラインアップは、37V型2機種「LC-37AD1」(77万円、7月9日発売)、「LC-37AD2」(80万円、8月8日発売)、30V型2機種「LC-30AD1」(56万円、6月27日発売)、「LC-30AD2」(58万円、7月18日発売)、22V型1機種「LC-22AA1」(25万円、7月1日発売)。
新製品では音質面での向上を図るため、オーディオ分野で定評のある同社独自の1ビットデジタルアンプを採用。1ビット専用に設計した独立スピーカーボックス方式の2ウェイ4スピーカーシステムを搭載している。このスピーカーをディスプレイの下部に設置したモデルがAD1シリーズで、従来モデル同様にディスプレイの横に設置したモデルがAD2シリーズとなる。
37V型と30V型の計4機種には、FPD(フラットパネルディスプレイ)としては業界初となる地上デジタルハイビジョンチューナーを搭載。3種類のデジタル放送に対応したデジタルチューナーユニットを新たに開発した。BS/110度CSなど既存のデジタル放送のほか、今年12月から3大都市圏でスタートする地上デジタル放送をTV本体のみで楽しむことができる。
チャンネルの増加にともなって、リモコンにも工夫が施されており、リモコンの放送切り替えボタンに「地上D」ボタンを新たに追加。将来的には上部のアナログ用チャンネル部分が不要になることを想定して、チャンネル登録をユーザーが自由にカスタマイズできる「お好み登録」機能も用意されている。
全機種に高画質な映像を再現する独自のASV方式低反射ブラックTFT液晶を搭載。明るい部屋でも黒が引き締まってみえる高コントラスト性(37V型が800対1、30V型が700対1、22V型が500対1)と、上下左右170度の広視野角、450カンデラ/平方メートルの高輝度を実現した。
30V型には新開発の高画質液晶パネル(1280×768ピクセル、約295万画素)を採用。従来モデル(LC-30BV5)に比べてコントラスト比を1.4倍向上させた。37V型に使われたハイビジョン用液晶パネル(1366×768ピクセル、約315万画素)と、22V型のワイドテレビ専用液晶パネル(854×480ピクセル、約123万画素)は、従来モデルと同じ液晶パネルを使用している。
同社は地上デジタル放送を、本格的な液晶TV普及の起爆剤と位置付け、生産体制の強化を行っている。
今年1月には、当初2004年5月からだった亀山工場の稼動を、2004年1月からに前倒しすることを発表。現在、同社の液晶TV向けパネル生産が行われている多気工場のマザーガラス基板サイズは640×880ミリだが、亀山の新工場では1500×1800ミリとなり、従来に比べて約6倍弱の液晶パネル生産が行えるようになる。
「液晶をはじめとするFPDは、本格的な需要拡大期に入った。年末から始まる地上デジタルにいち早く対応したAQUOS新シリーズで、2003年度は全世界で150万台(1300億円)を目標とし、2005年までにブラウン管をすべて液晶に置き換える計画。亀山の新工場が、生産拡大の原動力となる」(同社)
やや見切り発車? 試験放送前の“地上デジタル対応”
同社が地上デジタルへの対応を“FPDでは業界初”と言っていることからも分かるように、ブラウン管タイプでは東芝が今年4月、他社に先駆けて地上デジタル対応TVを発表している。
年末からの地上デジタル放送開始を見越してTVの買い控えが懸念されている中で、店頭では現在のところ唯一の地上デジタル対応機種ということもあり、この東芝「“FACE“ DIGITAL4000」シリーズは、いち早く地上デジタルをアピールしたい販売店にとって格好の商材になっているようだ。
業界が需要喚起の起爆剤として期待する地上デジタル放送が、わずか半年後に迫っているというのに、各メーカーから対応製品がなかなか登場しない背景には、各テレビ局が本格的な試験放送を開始するのが今年8月からとなっているからだ。BSデジタルのスタート前後に起きた受信機の不具合といった前例もあることから、実際に各テレビ局が出す地上デジタルの電波を受信して検証するまでは、メーカー側も“製品を出したくても出せない”という現状だ。
東芝の場合は、地上デジタル放送用チューナーやOFDM復調LSIなどをあらかじめ内蔵し、スマートメディア経由でソフトウェアをアップグレードすることではじめて地上デジタル放送が視聴できるようなるという“荒業”で、先行販売に踏み切った。この方法なら、試験放送の状況を踏まえてソフトウェアのブラッシュアップが行えるため、受信機の不具合といったトラブルも未然に防ぐことができる。
だが、今回のAQUOS新製品は、地上デジタル放送用チューナーというハードウェアに、受信するためのソフトウェアをあらかじめ組み込んたカタチで登場した。購入ユーザーは12月の放送開始時に、スイッチを入れるだけで期待の次世代放送がすぐに見られる“はず”だ。しかし、各メーカーが本格試験放送の状況を踏まえて製品化しようとしている中で、7〜8月初旬には店頭に並ぶ新AQUOSは、やや“見切り発車”的な不安も残る。
この件に関して同社は「実証実験というカタチでの試験放送は8月からだが、試験電波を使ったハードメーカーとしての検証はすでに終わっており、製品化には何の問題もない。また、社内に地上デジタル放送の試験環境を作って検証しているが、そこでも不具合はなかった。地上デジタルの放送規格自体はすでに固まっているので、その規格に基づいて作られている今回の新製品は、心配ないものとみている。また、ダウンロードによる機能追加のシステムも用意されており、試験放送を踏まえた微調整にも対応可能」と述べている。
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[西坂真人, ITmedia]
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