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2004/01/30 18:05:00 更新

わかりたい人のための動画エンコード講座
「DVDをリッピングしてDivXでエンコしてWinMXでP2Pする」人たちへの説教も含め、いろいろと考えていきたい

世の中、何だかおかしい。よくわからないが、10年前だったら、ただツラくて地味な作業であった動画のエンコード作業が、「エンコ」などと略されて、その筋の人たち(どの筋だかわからないが……)の間ではもてはやされているようなのだ。

はじめに

 世の中、何だかおかしい。

 よくわからないが、10年前だったら、ただツラくて地味な作業であった動画のエンコード作業が、「エンコ」などと略されて、その筋の人たち(どの筋だかわからないが……)の間ではもてはやされているようなのだ。

 長いこと動画に携わっているが、どうして世の中で「DivXでエンコ」などというものが流行るのか、しばらくは全然理解できなかった。が、今は、ちょっとだけわかってきた。アンダーグラウンドの世界を中心に、「DVDをリッピングしてDivXでエンコしてWinMXでP2Pする」世の中らしいのである。

 また、「どうも、何がなんだかよくわからないまま、ひたすらエンコードしている人たちがいるらしい」ということもわかっていた。まあ、著作権を侵害しない限り、誰がどうエンコードしてもいいのだが、動画に対しての基本的な理解を深めておけば、無駄な時間を使わずに済む。ここで一つ、基本的なことをおさらいしてしまいましょう、というのが今回の主旨である。

 今後は、「DVDをリッピングしてDivXでエンコしてWinMXでP2Pする」(これらの言葉については、いずれきちんと解説していくつもりである)人たちへの説教も含めて、動画に関することをいろいろと考えていきたいと思う次第である。

「エンコ」って何?

 「エンコ」というのは、エンコードのことである(私はこの略語がキラいなので、以後、二度と使わない)。「圧縮」と訳されることが多いが、圧縮の訳語はコンプレッション。エンコードに対応する言葉としては、「符号化」が正しい。ただ、多くの場合、動画の場合、符号化の目的は「圧縮すること」だったりするので、まあ、圧縮と訳しても間違いではない。ただ、「圧縮しないエンコード」だって世の中には存在するということだけおさえておけばいいだろう。

 ついでに言うとエンコードの逆、つまり逆符号化(もしくは伸長)はデコード、そしてエンコードとデコードの両方を行う装置やソフトウェアのことをコーデックという。コーデックは、単純にそのエンコード/デコード技術の名前として使われることもある(例:「このムービーでは〜というコーデックが扱われている」)。

 さて、動画のエンコードの話である。

「何のために動画を圧縮するのでしょうかか?」

「はい、動画はデータ量が大きいから、小さくするためであります」。

 この答は間違いではないと思う。が、模範解答とは言えない。私にとっての模範解答は「メディアの転送速度に合わせるため」である。別の言い方をすれば、動画圧縮は「7Gバイトのデータを700MバイトのCD-ROMに収める」ために行うのではなく、「秒間3Mバイトもあって再生が困難なデータを、CD-ROMでも再生できるように秒間300Kバイトまで落とす」といった作業だということになる。

 もちろん、結果として全体の容量は小さくなるワケだが、まずこの考え方を基本として持っていないと、「CD-ROMには入っているけど、ハードディスクにコピーしなければ再生できないデータ」などができあがってしまったりするのだ。忘れ去られてしまっていることが多いのだが、ここは絶対におさえておいてほしいポイントである。だから圧縮の時には「ビットレート」「データ転送レート」といったものが重視されるのだ。

技術の進歩と負荷の増大

 動画エンコード技術は日々進化しており、高い圧縮率で、かつ劣化を抑えてエンコードができる技術がいろいろと現れている。が、圧縮してちっちゃくなったものは、そのまま再生できるワケではない。デコード作業によって、瞬間的にモドさなければ再生できない。

 例えば、「シネパック圧縮されたQuickTimeムービーファイルをQuickTime Playerで再生する」といった場合、実はQuickTimeの内部にあるデコーダさんが頑張ってせっせとほどいてくれるのだ。この作業は何となく甘く見られているが、デコーダさんは、圧縮されたものを一瞬でほどいていかなければならない。かなりタイヘンな作業をしているワケだ。

 技術は確かに進んでいるが、CPUなどへの負担もどんどん大きくなってきている。いや、CPUが良くなったから技術が進歩したのかもしれないが、とにかく、高品位を実現する新しい技術というのは、一般的にハイスペックなCPUを要求するものであったりするものなのだ。だから、自分の手元で再生できるファイルを、万人が同じように再生できるとは思わないでほしい。動画というのは、リアルタイム性が求められる上に、デカくて負担が大きい、なかなかにヤッカイな存在なのだ。

ファイルフォーマットとコーデック

 では、動画のコーデック(圧縮フォーマットといってもいいだろう)にはどのようなものがあるかというと、今度はファイルフォーマット(ファイル形式)の話をしなければならなくなってしまう。「動画にはいろいろなファイルフォーマットが存在し、その中で扱えるコーデックは限られている」ということである。

 例えば、QuickTimeファイルフォーマットにおいてはSorenson Video、AVIにおいてはIndeo、Windows MediaにおいてはWindows Media Video、Real MediaにおいてはReal Video、といったような動画コーデックが存在する。これらのコーデックは、それぞれのプレイヤーなりDLL(Dynamic Link Library)なりに内蔵されている場合もあれば、サードパーティ製のコーデックをインストールすることによって扱えるようになるものもある。

 「じゃあ、どれを使ったらいいの?」という話だが、あまり単純に「これがイイ」とは言えないものだ。目的あってのコーデックなのである。編集の前段階として圧縮する場合にWindows Media Videoを使うヤツはいないし、インターネット経由で配信したいのにDVコーデックを選ぶヤツはいない。要は特性を知って正しく扱うことがたいせつなのである。

DivXの普及を考える

 では、どういう点に気をつけてどのコーデックを選べば良いのかということなのだが、一つずつ追っていくと、結構なボリュームになってしまう。そこで、最近、幅をきかせているDivXなるコーデックが何故ウケているかということを考えてみたい。それを1つのヒントにしていただきたいのだ。

1.AVIで扱える

 Windows MediaやらReal Mediaやらは、基本的に動画を配信するために扱われるファイル形式である。編集を前提としていないし、Real Mediaなどは「フォーマットそのものに他のフォーマットに変換しちゃダメ!」というきまりがあったりする。で、編集する側の人間は普通、QuickTimeやAVIを扱う。これらは編集段階で長いこと使われてきたフォーマットで、ビデオ編集ソフトも、これらのフォーマットに対応しているのだ。

 DivXは基本的に「AVIフォーマット」の中で扱うように設計されているものである。なので、多くのビデオ編集ソフト、ビデオ圧縮ソフトで扱える。そして、コーデックさえインストールすれば、MacでもWindowsでも、標準的なアプリケーションで再生できるようになる。まあ、そうじゃなければなかなか普及しないだろう。

 DivXの開発元であるDivX Networksは、一時期、DivXファイルフォーマットなるものを普及させようとしていたが、それはどこかに消えてしまった。今でもDivXコーデックを使ったAVIフォーマットのことを「DivXフォーマット」などと言っていることがあるが、これはAVIフォーマットのことである。紛らわしいのでやめてほしいと思うのは私だけ?

2.細かな設定ができる

 エンコード技術は進化し、細かくパラメータを設定しなくても、そこそこの品質を生み出すことができるようになってきた。そこで最近は安易にプリセットを選んで、「ハイ!」とクリックとすると、結構な品質/圧縮率のファイルが作り出せることができるようになった。だが、それでは「究極」にはならないし、マニア心はくすぐられない……。その点、DivX Proでは、細かな部分でこだわりを持って設定ができるのだ。もちろん、それによって結果が変わってくる。

3.民生機器の対応

 そして、実は民生用のPVR(パーソナル・ビデオ・レコーダー)やDVDプレイヤーなどにも、DivX対応のものが存在している。デコーダが内蔵されていて、さらにAVIフォーマットに対応しているという機器である。

4.MPEG-4準拠である

 本当は普及そのものにはあまり関係ないのだが、DivXはMPEG-4のビデオ圧縮に準拠した規格なのである。ここでMPEG、ならびにMPEG-4に関して説明しようとするとスゴい分量になってしまう……。わかりやすく言うと、MPEGという業界標準を定める団体による標準規格の一部を満たしているということである。もっと言えば、「MPEG-4という広範囲に及ぶ規格のうち、動画部分の規格として定めたられたプロファイルの一部は、DivXでもカバーされている」のだが、これじゃ、よくわからないだろう……。

 ただ、DivX Proを使ってMPEG-4ファイルを制作することはできない。MPEG-4の標準ファイルフォーマットは「.mp4」である。いくらMPEG-4ビデオに準拠していても、入れ物が違うのである。が、中身が同じであれば、いずれ応用のしようもあるであろうと、私は解釈している。

 ちなみに、サンヨーの「ナンジャコリャー!」のXacty DMX-C1は、入れ物も中身もパーフェクトにMPEG-4な製品である。

5.編集向けにもエンコードできる

 配信用の動画圧縮では、圧縮率を高めるために、「コマごとの差分を見て、差分だけをデータとして持つ」という技術がよく使われている。これはデータを減らす方法としてはナイスだが、オリジナルの映像が持つ情報量を、確実に、1コマ毎に落としているということになる。こうやってできたデータで1コマ単位の編集をするヤツはいない。ところが、DivXには、一枚毎に圧縮をかけるという律儀なモードが用意されている。これであれば、編集前の作業でも扱える。

 といったところが普及した原因……かもしれない。実は、もう一つ「妙なツールとともに、アンダーグラウンドな世界で『裏ツール』として名を轟かせた」ということも大きいのだが(このあたりについては、今後の連載でも話題となっていく部分である)、これは今のDivXとはあまり関係がない。少なくともDivX Networksが扱っているDivXという技術は、由緒正しい技術なのである。国内では、ホロンから「DivX PRO」というパッケージとして販売されている。マニュアルも圧縮の基本がしっかりわかるような良心的なものとなっている。全然アヤしくはないのだ。

「高品質な圧縮」

 「高品質」については、あえて挙げなかった。この「高品質」を説明するのは、実はそれほど簡単ではない。それこそ、圧縮する人間の技量によっても変わるし、各技術を並べて比較しても、「これがサイコー!」ということはなかなか言えない。どの技術を使ったものでも、各社のサイトにあるサンプルは非常に美しい。

 そこを、たいした用途で使わないクセにネチネチと細かく調べていると、バカバカしくなってしまうこともある。最新の技術を使って、きちんと設定すれば、少なくとも私は困らないレベルの映像が得られる。それが今の世の中だ(ただ、私のようにそこで満足してしまうと、そこで話は終わってしまう……)。今後もおそらく、いろいろな圧縮技術が登場して皆さんを満足させていくのだろう。

 ただ、動画圧縮というのは、多くの場合、非可逆圧縮である。確実に元の映像を汚くする技術なのである。圧縮によって品質が向上することはあり得ないし、一度圧縮したムービーを再圧縮したら、ますます劣化する。もし今後、「使えば使うほどきれいになるコーデック」などというものが出現したとすれば、おそらくは、そのコーデックが持つ「きれいに見せかけるためのアルゴリズム」が優秀なのであって、それでも内部データは確実に劣化しているハズだ。つまるところ、「劣化するのはしょうがないが、なるべく抑えよう」というのが圧縮なのだ。将来的には、こんなことで苦労しないほうが幸せなハズである。

 話が妙な方向に進んでしまった……。世の中には、「このコーデックがサイコー!」とか「これが究極の設定!」といった話がいろいろと転がっている。それを受け入れるのは結構だが、魔法はあり得ない。そういうことを知った上で、木だけを見ずに森を見る習慣をつけて、圧縮活動(?)に励んでいただきたいものである。

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関連リンク
▼ホロン

[姉歯康,ITmedia]

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