PX-V500は、「PX-Vインク」を採用した顔料インク4色機だ。ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色独立タンクとなっているほか、昨年から登場した「つよインク」なので、耐オゾン性30年、耐光性45年となっている。また、顔料インクのため、耐水性にも優れる。
インクドロップサイズは最小で3ピコリットル(PX-V600と同じ)。ノズル数は黒90、カラー87(各29ノズル×3)となっている。
ここまでのスペックでピン、と来た方はプリンタに詳しい部類に入る。そう、ノズル数が圧倒的に足りないのだ。
たとえば、このPX-V500の上位機種、PX-V600ですら黒180ノズル、カラー177ノズル(59×3)あり、PX-V500の倍だ。最上位機種のPX-G900に至っては、黒360ノズル(180×2)、カラー1080ノズル(180×6)となっている。ノズル数は印字速度に直結する。
実際、ある日のITmediaトップページを印刷してみたが、3ページ分をドライバの「はやい」設定で印刷しても約5分かかってしまった。デジカメ画像をL版で、「きれい」モードにて印刷した場合でも、同様に約5分だ。
確かに印字中のヘッドの動きを見てもとても速いとは言えないし、一つの文書を打ち出すのにあまりにも時間がかかりすぎる、という印象は否めない。セイコーエプソンのWebサイトでも、PX-G900では写真を中心とした速度を掲載しているのに対して、PX-V500はビジネス文書での速度しか掲示していない。
しかし、ただ「遅い」だけで、使えないプリンタと言ってしまうのは早計のようだ。先ほど述べた、印刷に5分かかったデジカメ画像の印刷結果は以下の通りだ。
Webサイトでは実際の画像をお見せできないのが残念だが、筆者の率直な印象では「これ、1万円のプリンタ?」というのが正直な感想だった。意地悪く言えば、どうせたいした画像ではないだろうと思っていたのだが、最高で2880×720dpiの画質を持つだけあって、それなりにきれいな印刷結果と言えよう。
ただ、用紙が「フォト光沢紙/顔料専用」で、「光沢」といってもいわゆるツルピカとは遠く、マット系の光沢感なので、染料系のインクで利用できる「写真用紙<光沢>」と比べると、写真の見栄えはあまりよくない。
しかしスナップ写真をたまに印刷して保存したり、Webサイトをメモ代わりに印刷するといった程度ならば、十分に実用に耐えると思う。確かに印刷速度は速くないが、「これだけのコストなのでこの程度の速度」という割り切りはできそうだ。
PX-V500クラスのプリンタの場合は、家で週に1度か2度、Webサイトを印刷したり、たまにデジカメ画像を印刷する、といった用途にはそれなりに適応できるだろう。年に数回ある程度の印刷シーンならば、それほど高いプリンタは必要ない。低価格でも満足できる印刷画質を持っているのが、PX-V500だと思う。
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