三洋電機セミコンダクターカンパニーは3月15日、DVD+Rの12倍速記録に対応したDVD±R/RWドライブ用LSI「LC897491」を開発。3月中旬からサンプル出荷を開始すると発表した。サンプル価格は2000円/個。今年第2四半期から月産100万個規模での生産をスタートする。
LC897491は、業界最高レベルのDVD書き込み速度となるDVD+Rの12倍速記録が行えるほか、DVD-R/±RWは8倍速、CD-Rは52倍速、CD-RWは32倍速と、あらゆる光磁気ディスクメディアでの高速書き込みに対応した。また、市販読み込み速度はDVD-ROM16倍速、CD-ROM52倍速、DVD-RAM2倍速。
市販のCD-Rメディアに2倍(約1.4Gバイト)の容量を記録できる独自の高密度記録技術「HD-BURN」に対応するほか、BURN-Proofもサポートする。
8Mビットフラッシュメモリをマルチチップパッケージで搭載してフラッシュメモリの外付けを不要にしたほか、同LSIとRFアンプの組み合わせでDVD±R/RWドライブのすべての信号処理に対応できるため、ドライブの大幅な合理化が可能になったという。
「最近、8Mビットクラスの小容量フラッシュメモリが入手し辛くなっているので、われわれチップメーカーが供給を確保するという意味でユーザー側のメリットは大きいのでは。もちろん、搭載するフラッシュメモリは三洋電機製なので、単純にLSIとセットで拡販できるメリットもある」(同社)
同LSIは、3月10日にプレクスターが発表した12倍速記録対応DVD±R/RWドライブ「PX-712SA/JP」に採用。同プレクスター製品がLC897491の初採用ドライブとなる。「そのほか、海外メーカーで3社ほどLC897491の採用を検討している」(同社)
好調な光ディスクドライブ市場の中でも、記録型DVDの出荷は右肩上がりの順調な成長を見せており、この市場に向けたLSIの開発も盛んだ。
記録型DVDのトレンドは、DVD記録の高速化。特にPC用では、高速化でリードするDVD+R規格が2003年後半に4倍速から8倍速へ到達。さらに2004年末には16倍速が登場するといわれており、3月11日にはPhilipsがDVD+Rの16倍速記録対応リファレンスデザインを発表している。
「年内」という近い将来に16倍速が出てくるのに、なぜ今、“12倍速のLSI”なのだろうか?
実は同社でも市場ニーズに対応するため、DVD+Rの16倍速記録が行えるLSIを現在開発中。だが、「16倍速は記録型DVDの最終形だけに開発も困難を極める。チップメーカーの開発も、メディアメーカーの16倍速対応も遅れ気味」という現状がある。
「もし仮に16倍速の登場が来年にずれ込めば、8倍速の市場が1年半も続くことになる。そうなれば、価格競争の激化で部品の値下がりは避けられない。業界としても、8倍と16倍の間にはどうしても12倍が必要」(同社)
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