抜群の色表現力と印刷速度を誇るPIXUSシリーズのフラグシップモデル――キヤノン PIXUS 9900i(2/3 ページ)

» 2004年04月05日 23時33分 公開
[リアクション,ITmedia]

色表現力と印刷スピードは文句なし

 それでは、9900iの画質について、少し詳しく見ていこう。9900iで一番利用されると思われる、純正専用紙の「スーパーフォトペーパー」や「プロフェッショナルフォトペーパー」を使った写真印刷についての考察だ。

 全体論から述べると、シャドウ/中間調/ハイライトという階調全域において、グラデーションはとても滑らかだ。高彩度、高コントラストへの余裕もあり、色表現の懐がとても深い。

 Gインクの効用は、やはり草木の発色で顕著だ。高彩度の緑が出せるため、これからの季節の新緑が持つ、鮮やかさ、若々しさ、瑞々しさがしっかりと伝わってくる。実際の画質や発色は、次ページの印刷サンプルで確認してほしい。

 付属ツールのEasy-PhotoPrintから印刷した場合、記憶色を重視したメリハリのある発色が基本だ。Easy-PhotoPrintの「自動画像補正処理」を有効にすると、彩度とコントラストが高くなり、カリッとした硬質な印象になる。より自然な雰囲気を望むなら、自動画像補正処理を無効にしよう。これはすべてのPIXUSシリーズとEasy-PhotoPrintで見られる傾向だ。

 9900iの真骨頂は、ドライバと同時にインストールされる、メディアプロファイルを使った出力だ。利用可能なメディアプロファイルは、プロフェッショナルフォトペーパー用、スーパーフォトペーパー用、マットフォトペーパー用の3種類となる。

 カラーマッチングに対応したアプリケーション(アドビシステムズの「Photoshop」や「Photoshop Elements」など)から、用紙に合わせたメディアプロファイルを指定し、プリンタドライバ側の色調整を「なし」にして出力する。これにより、画像データ本来の色合いを再現できたり、ディスプレイ表示とのカラーマッチが図れるわけだ。詳しくはICCプロファイルガイドWebページを参照してほしい。

 実際、画像データのプロファイルに合わせてsRGBやAdobe RGBでカラーマッチングさせて印刷すると、ほとんどの場合で発色と階調表現がよくなる。感覚的な言い方になってしまうが、色の深みや階調の豊かさが違う。

 続いて、デジカメ画像をA3やA3ノビに出力する場合を考えてみよう。今回はいろいろなデジカメで撮ったデータを出力してみたが、9900iの表現力に対して、デジカメ画像のクオリティが追いつかないケースが多かった。具体的には次の2点だ。

 一つは、デジカメ画像の解像度が足りずに、ピンぼけしたようなネムい出力になってしまうこと。詳細は省くが、A3/A3ノビ出力するなら500万画素以上のデジカメがほしい。とはいえ、200〜300万画素クラスのデジカメ画像でも、Easy-PhotoPrintで印刷すると、それなりにうまく補完出力してくれる。

 もう一つは、デジカメ自体の階調表現力とノイズ耐性能力が、ストレートかそれ以上に反映されることだ。ダイナミックレンジが狭く(階調に幅がなく、白とびや黒つぶれしやすい)、ノイズが多いデジカメ画像をA3/A3ノビ出力すると、画質的に破綻してしまう。グラデーションが雑になり、いたるところに赤や青や黄色のランダムノイズが見えてしまう。特に人肌のザラザラ感はひどいものだ(インクの粒状感ではない)。

 ちなみに、ノイズに関しては、プリンタドライバの「デジタルカメラノイズリダクション」機能が効果的だ。強度は「標準」と「強」の2段階が選べるが、意外と控えめな処理なので「強」から試してもよいだろう。画像の立体感が損なわれる場合もあるが、暗部や背景のザラザラ感をかなり減らせる(次ページの印刷サンプルを参照)。

 印刷速度は、速い、の一言だ。ドライバ標準設定の「きれい」で印刷すると、L版がたったの30秒ちょっとで出力されてくる。A4/A3/A3ノビでも、用紙サイズを考えると驚異的なスピードだ。最高画質設定の「品位1」にすると遅くなるが、「きれい」と比べて目視で分かる画質差は皆無である。ルーペで見ても判別に悩むくらいだ。

PIXUS 9900iの印刷速度結果。L版フチなし(印刷品質設定は「きれい」)が約30秒で印刷できる
インクジェット官製はがきとA4普通紙への印刷速度結果。()内はドライバの印刷品質設定

 9900iは、少なくとも現時点では、性能的には文句の付けようがない。設置スペース、予算、A3/A3ノビ印刷のランニングコスト(フォト用紙+インクで1枚あたり約200〜300円)がクリアできれば、すばらしいデジタルプリンティングの世界が開けるだろう。冒頭でも述べたが、個人ユースはA4機と頭から決めてかからずに、A3機にも目を向けてみることをおすすめしたい。

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