一方、昨年3月に発表されたPentium MをベースにしたCentrinoプラットフォーム戦略を成功させたアナンド・チャンドラシーカ氏は、鼻息が荒い。チャンドラシーカ氏はCentrino成功の実績が認められ、モバイル・プラットフォーム事業本部長と兼任でコーポレート副社長に就任して間もない。
「2003は非常に好調、モバイルPCが様々な地域に普及した(チャンドラシーカ氏)」さらにこの成長を継続するため、モバイルに適したソフトウェアが鍵になるという。インテルはCentrinoの発表以来、モバイル環境での使いやすさを向上させるソフトウェアを開発する企業に多額の投資・支援を行ってきた。その結果「この1年で180以上のソフトが登場した」とチャンドラシーカ氏はいう。
これらのソフトウェアには、日本のMVNOが開発し、発表直前のワイヤレスWANとワイヤレスLANをシームレスに切り替えるユーティリティなどが含まれる。米国ではアドビと共同で、ワイヤレスのモバイルPCやPDAを用いたペーパーレスソリューションを提供し、ファイザー製薬において1億数1000万ドル規模の大幅なコスト削減を達成した。
こうした昨年からの戦略は、今後も強力に推し進める。Centrnoに組み合わされる新しい無線LANチップは、従来比20%も消費電力を削減しながら、IEEE802.11b/gへの対応を実現し、通信可能な距離も伸ばしている。また、2四半期ずれ込んだものの第2四半期にはDothanを提供。2次キャッシュメモリを1Mバイトから2Mバイトに増加させることで、従来のPentium Mに比べて同一クロック周波数で20%の性能向上を果たしている(2003年2月20日の記事参照)。さらに、低価格のCeleron Mシリーズを発表し、モバイルプロセッサのラインナップをローエンドにまで拡張した。
インテルはPrescottとDothanで導入する“プロセッサモデルナンバー”(3月18日の記事参照)で、Pentium MにモバイルPentium 4よりも大きなモデルナンバーを与え(Pentium Mが7xxに対し、モバイルPentium 4は5xx)、よりモバイルプロセッサとして高い付加価値であることをエンドユーザーに訴求するとともに、PCベンダーとPentium Mのモバイル性能を活かしたコンシューマ製品の開発を進めている。
チャンドラシーカ氏は「昨年、企業向けノートPC市場において、モバイルPentium 4、モバイルCeleromを抑え、Pentium Mは60%を占めた。一方、コンシューマ市場におけるPentium Mの占有率は低い。これが年内にに70〜80%のレベルにまで高まるだろう」という。
インテルは今年後半、高速シリアルI/O技術のPCI ExpressやシリアルATA、デュアルチャネルメモリバス、高品質オーディオ、IEEE802.11a/b/gサポートの無線LANチップCalexico 2、などの機能を持ち、Dothanとセットで構成されるSonomaプラットフォームを展開。さらなる躍進を狙う(2月20日の記事参照)。
Sonomaベースの製品は、TPM1.2に対応したハードウェアによるセキュリティ機能、Windows XP SP2でサポートされるNo Execution Capability(ウィルス実行の危険を回避する機能)といったセキュリティ機能の強化が図られているのも特徴である。
2月のサンフランシスコで行われたIDFでも披露された、Sonomaを基礎とするコンセプトモデル「フローレンス」も、日本で初めて披露した(7日の記事参照)。フローレンスには12.1インチ液晶採用でタブレット機能を統合したオンザゴーPCから、151インチ薄型モバイルPCのバーチャルオフィスPC、17インチ液晶パネル採用で部屋間移動を意識したデスクトップライクなモバイルエンターテイメントPCの3つのタイプがある。いずれも、指紋認証で簡単に自分の環境にログインするなどの機能を持つ。
「セキュアコンピューティングは重要なテーマだ。企業の知的財産を守るために、ハードウェアやソフトウェアの革新で対応する。今年後半には、TPM1.2が組み込まれ、ウイルスの活動を防ぐNo Execution機能が追加される。またこの2年間、セキュアなコンピューティング環境を実現するLa Grandeテクノロジにも取り組んできた。La Grandeはデスクトップとモバイルの両方に同時に提供される。これによって、現在とは桁違いに改善されたセキュリティを実現できる(チャンドラシーカ氏)」
チャンドラシーカ氏は「Centrinoの好調とDothanの投入により、成長を達成できるとかなり楽観視している。日本のPCベンダーも、この分野では非常に顧客からの評判がいい。日本製品(の良さ)が受け入れられている」と日本のPCベンダーを持ち上げ、現在審議中のモバイル版WiMAX(802.16e)を、将来のCentrinoプラットフォームに取り込んでいくことを明言した。
ただし、家庭へのブロードバンドの普及が進んでいない北米では、WiMAXが家庭へのブロードバンド普及を牽引し、至る所にWiMAXのサービスエリアが出現すると見込まれているが、すでにブロードバンドが普及している日本では、このシナリオは通用しない。
この点に関してチャンドラシーカ氏に質問したところ「日本におけるシナリオはまだ構築できていない。しかし、WiMAXは(ラストワンマイル問題の解決だけでなく)モバイル向けに強力なソリューションだ。現在、各方面と調整を進めているが、日本でも将来的には広く使われることになるだろう」と応えた。
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