「HDDがLonghornのボトルネックに」、MSが設計変更を要請

» 2004年05月11日 18時13分 公開
[IDG Japan]
IDG

 ハードウェアメーカーに課題を提示するだけでは飽き足らず、Microsoftは今やHDDメーカーに読み書き速度を高速化する必要があると伝え、さらには「フラッシュメモリキャッシュを追加せよ」とそのやり方まで指示している。

 問題となっているのは、プロセッサが次のタスクに移る前に、ディスクデータの読み書きが完了するまで待機することだ。読み書きが遅れる主な要因は、ディスクヘッドをHDDの該当箇所に移動させる待ち時間にある。どのデータが次に必要になるかを予測し、そのデータをHDD内のキャッシュメモリに前もって取り出しておくことで、HDDの待機時間を大きく減らすことが可能になる。

 マイクロプロセッサはこれと同じ技術を用い、次に必要になる可能性の高い命令を事前に取り出して、アプリケーションの処理を高速化している。

 Microsoftは、コンピュータがクラッシュしても書き込みデータが失われないよう、HDDにキャッシュ――実際は回転するハードディスクと併せて設置するソリッドステートディスク――を加えるよう望んでいる。現時点では、システムのクラッシュ時や電源の供給が切れた際には、コンピュータメモリ内の書き込みデータはどれも消失する。

 ノートPCにHDDキャッシュを加えれば、HDDへの書き込みが約10分おきに一括して行われるというメリットがあるとMicrosoftは説明している。Microsoftが独自に実施したテストでは、平均的なノートPCユーザーは10分ごとに100Mバイト以下のデータを書き込むという結果が出ている。同社の言う通りにすれば、ノートPCの必要電力が減り、HDDの寿命が延びる可能性がある。

 フラッシュメモリは、10万回ほどの読み書きサイクルで寿命を迎える。ヘビーユーザーは2年ほどで寿命がつきることになるだろうが、ライトユーザーのノートPCならばフラッシュメモリの寿命を使い切るまで最大で40年持つと言われている。

 もちろん、これはすべて次世代版Windows「Longhorn」に関連する話だ。Longhornの正式リリース日はまだ定まっておらず、プロモーションよりも、スケジュールを遅らせる方に多くの時間を費やしているようだ。しかし、Microsoftがハイスペックを求める態勢から脱却できないでいることがあらためて浮き彫りになりつつある。

 今回の1件を除いても、Microsoftはあらゆる企業に同社のOSに合わせて製品に変更を加えるよう訴えている。HDDベンダーがフラッシュメモリモジュールをドライブに組み込むには1年以上かかる――もっとも、各社がそれに同意すればの話だが。

 MicrosoftのWindows Server担当技術製品マネジャー、クリストファー・ホワイト氏によると、Longhornはディスクを読み込むたびに、フラッシュキャッシュにファイルの「近接するブロックを読み込む」という。「これは速度に関連する処理だ」と同氏。フラッシュメモリチップをHDDに組み込む費用は128Mバイトで6ドル。それほど高くないように聞こえるが、そうしたHDDが販売されるころには、1度に数千台のHDDを購入する顧客にとって大きな差になっているかもしれない。

 シカゴ取引所や米国政府で採用されているように、ソリッドステートディスクの導入は広まっている。プロセッサとメモリの高速化は、ディスクI/Oの高速化を大幅に上回るペースで進み、システム全体の性能において、ディスクI/O速度はますます足を引っ張るようになっている。Microsoftはこの問題を、Longhornが登場し、同社の要求する性能ベンチマークを超えられないという事態にならないうちに解決しようとしている。

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