Bluetooth経由のタブレットPCで開発してます ロボット専業メーカーZMPレポートレポート

 nuvoは、ZMPの発表した家庭用小型ロボットだ。実はこのロボット、タブレットPCで動作パターン構築などを行っている。実際にタブレットPCで動かすところを見せてもらい、nuvoの開発コンセプトを聞いた。

» 2004年05月14日 20時45分 公開
[こばやしゆたか,ITmedia]

我々は専業メーカー、短期的に事業化できなければ意味がない

―― ZMPはロボット専業メーカーだ。本業がある会社とは別の覚悟があると、株式会社ゼットエムピー(以下ZMP)社長の谷口恒氏は言う。

 ロボットというものは、メカトロの追求という感じがしますよね。モーターを良くするとか、コンピュータの性能をあげるだとか。そうやって最高のものを使っているのが、一般的なロボット開発だったりするわけです。でも、そうすると値段が高くなってしまって、なかなか商業化はできない。彼らは、家庭で使えるっていう目標は、10年〜10数年後に置いて研究しているわけで、必ずしも採算は考えていない。

 それはそれでいいと思うのですが、われわれは専業メーカーなので、1〜2年後とか3〜5年後とか、短期的中期的に事業になるものをやらなくてはならない。

株式会社ゼットエムピー・代表取締役社長の谷口恒氏

小型・軽量こそ、あまりやりたがる人がいない

―― 昨今各種のロボットがメディアをにぎわしているが、ZMPのロボットは一味違う。それは、小型・軽量という点に重きを置いていることだ。

 そこで考え出したのが「小型化」。10年以内に家庭に入れるロボットというのは小型化されたものしかないだろうと。

 理由は簡単で、(ロボットは)必ず転倒するからです。数10キロあるものが倒れると、そこに赤ちゃんが寝てたりすると、非常にあぶない。nuvoは39センチで2.5キロなので、これなら人の上に倒れても怪我はさせません。二足歩行をさせる限り現状の技術では転倒を絶対に防ぐことなど不可能ですので、倒れても安全っていうのは重要なのです。

 小型軽量にすることで部品代も安くなるのです。大きな部品はひとつ数十万円しますから、あまり使えませんね。また、携帯電話くらいに小さすぎても部品代が高価になります。私の夢は携帯電話サイズのロボットで、歩いて、電話もできる。でも、それは高くなってしまいます。

 また、大きいロボットは、そばに置いておくのがむずかしいですね。小さいのなら、気にしないでいられる。そうして、携帯電話みたいに気がついたら手放せないようなそういうものにしたいです。

 たとえば、他社で同じようなサイズのロボットがありますが、nuvoの3倍ぐらいの重さがあります。大部分が金属で構成されていますから。

 ロボット屋というのは金属を多用しガチガチに剛性を高めようとされます。薄い板がたわんだりすると計算が狂いますから。しかし結果重くなります。これに外装つけたらもっと重くなりますね。

 nuvoは金属をほとんど使っていないのです。ABS樹脂を使って、蟹の甲羅みたいに外骨格にして、それが構造材になっています。それで一気に軽くしました。

タブレットPCのポータブル性は魅力

―― nuvoの開発シーンで、タブレットPCには助けれられているという。

 nuvoのコントロールは、音声もOK、携帯電話でもいいし、携帯を赤外線リモコンとして使うのもいい。もちろんパソコンやタブレットPCでもOKです。ちなみに先日NTTドコモがヴィジュアルコントローラーを発表しましたが、そのときにnuvoを使って発表していただきました。5月11日から東京ビッグサイトで開催されたビジネスショー2004でも、ドコモのブースにnuvoコーナーを設け、来場者に実際にFOMAによるコントロールを体験していただきました。

 なかでもタブレットPCを使っていてよさを実感したのは、nuvoの開発プロセスです。ロボットの動きを早稲田大学と共同開発したパターンジェネレータで作るのですが、それはロボットに向かいながらの作業で、なかなかデスクに向かってという訳に行きません。ですのでポータブルなタブレットPCというのは、便利ですね。

 また、外でプレゼンテーションをするときなども、このポータブル性は魅力です。

nuvoの動作開発のプロセス

ロボットはロボットじゃない業界とも組むことでブレイクスルーする

―― ロボット専業メーカーの社長にもかかわらず、冗談半分に「ロボット屋ではない」と谷口恒氏は笑う。

 私はもともとロボット屋ではないので、実を言うと、あんまりロボットらしくないほうが、好きなんです。ロボットはロボットじゃない業界とも組むことでブレイクスルーする。

 いままでのロボットというのは、ほとんど「ロボットを作りたい人」がやっていると思います。私はそうじゃない。少しはたから見ている。そうすると、なるべく客観的な視点で今の技術でいけるところというのがわかるんですね。

 モーターなどでも、この1〜2年では大きな飛躍はないだろうし、現状の制御をやっていたら、大きなブレークスルーはないだろう。そういうのが見えてくる。研究はされてても実現はもっと先だろう。それなら(専業メーカーとしては)やることは他にあるだろうと。

 私は、ソフト会社とかゲーム関係、またアーティストたちと仲良くて、遊びに行ったりしています。そこで例えばロボットをゲームの端末として利用できないかとか、ロボットに何をやらせるかとか、話をする。僕も、ロボットがいまできるのはこの程度だよ、このくらいしかできないよ、という情報を出して、それをいかに活用するかの方法を考える。

 ロボットやる人は、みんなメカトロへの知識が深いですね。新しいセンサーができたから載せたいとか。でも、それでちょっとは安定するでしょうけど、その程度です。だったら、もっと違う方法があると思っています。

 ロボットというのは人間をまねているものですから、人間をよく知っている人間工学のプロと組もうと考え、ミズノに行き、靴をはかせました。これで、だいぶ安定性やエネルギー効率が良くなり、電池の保ちが変わりました。振動や衝撃による部品のゆるみもなくなったので、耐久性も増しました。

 私のやることは、見かけ重視ブランド重視に見られがちのようなのですが、……半分くらいそうなのですけど……でも、ちゃんと性能もアップしていますよ。

ミズノとの提携の経緯を熱く語る谷口氏

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.