ATI Technologiesは、先日リリースしたPCI Express対応グラフィックス関連製品のローンチイベントをCOMPUTEX TAIPEI 2004会場に隣接したホールで6月3日に行った。
イベントではデスクトップPC向けのラインアップ以外にも、ノートPCやワークステーション対応の製品が紹介された。また、NVIDIAがすでに発表しているノートPC向けPCI Express対応モジュール規格「MXM」に対応する新しいモジュールの実物も公開した。
イベントの冒頭で、今年の主力GPU「RADEON X」シリーズのイメージキャラクター「RUBY」に導かれて同社CEOのデーブ・オートン氏が登場。「今年のCOMPUTEX TAIPEI 2004はじつに最高のタイミングで開催された。この時期に合わせて、ATIはデスクトップ、ノート、ワークステーションといったすべての市場にたいしPCI Expressに対応したグラフィックスカードを投入できた」と、アジア最大のITイベントに製品発表が間に合った喜び(安堵?)を述べた。
オートン氏は「これから、第4世代のコンピューティングがはじまる。ホームユースPCは“ビジュアルデバイス”として使われるようになる」と、「Visual age」と名付けたPCの新しい時代では、よりグラフィックス機能が重要になってくると主張。「Visual ageのPCを実現するのはPCI Expressがもたらすパフォーマンスである」とPCI Express対応グラフィックスカードの必要性を訴えた。
説明会には先日GIGA-BYTEと合同で行ったマザーボードテクニカルセミナーで、Intel 925X/915ファミリーの概要を説明したインテルのロジャー・ピーン氏(デスクトッププラットフォームグループチップセットプロダクトマーケティングマネージャー)がゲストとして出席。
「インテルとATIは強い協力関係のもとPCI Expressの開発を進めてきた。ATIが開発した製品の最終工程ではインテルが検証作業を行っている」と述べ、「PCI Expressを利用することで、パフォーマンスは向上し、消費電力は削減できる」と、グラフィックスカードがPCI Expressを利用するメリットをアピールした。
デスクトップ向けラインアップは、すでに報道されているように「RADEON X800」「RADEON X600」「RADEON X300」といったハイエンド、ミドルレンジ、バリュークラスの3種類で構成され、それぞれのレンジで上位モデルと下位モデルが用意されている。すべての製品がPCI Express 16Xにネイティブで対応しており、アップストリームとダウンストリームがそれぞれ独立して高速のデータ転送を行うことができる。
RADEON X800はすでに発表されているPCI対応RADEON X800と同じアーキテクチャを採用。ただしPCI対応RADEON X800シリーズと異なり、上位モデル「RADEON X800 XT Platinum Edition」も下位モデル「RADEON X800 XT」もパイプラインを16本実装している(PCI対応RADEON X800下位モデル「RADEON X800 Pro」は使えるパイプラインが12本に“設定”されている)。
RADEON X600とRADEON X300は、それぞれ昨年登場している「RADEON 9600」「RADEON 9200」シリーズのアーキテクチャを継承したもの。RADEON X600の動作クロックは、コアクロックでRADEON 9600 XTと同じ500MHzだが、メモリクロックは上位モデルの「RADEON X600 XT」でRADEON 9600 XTの600MHzから740MHzと高速化されている(下位モデル「RADEON X600 Pro」はコアクロック400MHzにメモリクロック600MHz)。
RADEON X300はバリュークラスながら、グラフィックスカードとしては初めて0.11マイクロプロセスルールを採用した。TSMC製のこのプロセスルールを採用することで、ダイ面積を0.13マイクロプロセスルールダイと比較して20%も削減、バリュークラスで重要になる低価格を実現した。また、四つのPixel pipelineを実装することで、これまでのバリュークラスGPU「RADEON 9200」と比べて2倍のパフォーマンスを発揮し、最新の3Dゲームも十分に動作できるとATIは説明している。
なお、上位モデル「RADEON X300」と下位モデル「RADEON X300 SE」は動作クロックが同じ(コアクロック325MHz、メモリクロック400MHz)だが、メモリインタフェースのバス幅が上位モデルで128ビット、下位モデルで64ビットと異なっている。ATIもRADEON X300 SEに適している用途として、ゲームなどのホームユースよりも、エンタープライズ市場を想定している。
ノートPC向けのPCI Express対応GPU「MOBILITY RADEON X600」は従来のMOBILITY RADEON 9600 XTと同じく層間絶縁膜に低誘電体(Low-K)を採用したのに加え、新たに液晶ディスプレイの画質を改善するために「LCD-EE」(LCD Enhancement Engine)を取り入れている。LCD-EEは、解像度のスケーリング処理における画質改善を行う「RMX」やLCDの反応速度を向上させる「LRTC」といった技術を導入することで、高解像度のワイド液晶への対応や表示画質の向上を実現した。
また、GPUの負荷や温度を検知して動的なパワーマネジメントを行うPOWERPLAYも「POWERPLAY 5.0」にバージョンアップ。PCI Expressで導入されるパワーマネジメント機能をMOBILITY RADEON X600でも利用できるようになった。
発表会ではATIがノートPC向けPCI Expressモジュールの規格として発表した「AXIOM」(Advanced eXpress I/O Module)の実物を披露。将来のノートPCにおけるGPUの実装形態として、Thin&Lightマシンにはいままでどおりオンボードにチップを実装し、PerformanceマシンではAXIOM対応カードで搭載すると説明した。
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