企画プロデュースとデジタルノートについてサラリーマンのためのタブレットPC使いこなしガイド 第24回

「企画」を立てるとはどのようなことか? 営業における企画は営業企画、もしくは販促企画、製品開発には製品企画や商品企画、会社全体の計画に関わる経営企画など、見回せば企画はあちこちにある。場所を選ばず気軽にメモができるタブレットPCこそが「重宝」するその理由は――。

» 2004年06月08日 17時02分 公開
[神崎洋治(トライセック),ITmedia]
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 今回は、私の仕事の一部を紹介したいと思う。私は、テクニカルライターやコラムニストなどの肩書きで物書きを営んではいるが、ビジネスとしての割合は企画立案やプロデュースの方が大きい。プロデュースする内容は様々だが、製品プロダクトや企業ブランド、販促キャンペーン、Webサイトなどが具体例だ。

 もともとは企業の中で企画の仕事をやっていたのだが、8年前、独立して本拠をシリコンバレーに構え、現地の製品を日本向けにローカライズし、販促企画を行うとプロジェクトに携わってから、クライアントが成功するための製品プロデュースを行ってきた。活動を再び日本に移した今日まで、企画がずっとビジネスの中心となっている。

「企画」とは何か?

 企画プロデュースという仕事は、企画から制作、運用まで、プロジェクトを計画し、進行をマネジメントしていく仕事だ。仕事していて、知人やクライアントから、よく聞かれる質問がある。

「企画はあるときパッと頭に浮かぶんですか? やはり発想する能力を訓練しているんですか? 」と。

 経験がないのに企画部に配属されて青ざめていた後輩にもそう聞かれたことがある。しかし、この質問は的はずれだ。あえて言い切ると、企画には発想なんてほんの少しあれば十分だ。

 「企画とは計画を立てること」であって発想とはちがうのである。

 企画はずいぶんと曖昧な日本人向けの言葉だ。それでいて企画という職種は学生や転職希望者にとって結構人気が高いらしい。みんな、いったいどんな仕事をしていると想像しているのだろう。

 「企画」を大辞林で引くと「計画を立てること。立案すること。また、その計画や案。」とある。「"新製品を企画する"」などと使う。「企画」という言葉は、どちらかといえば"立案すること"というイメージが強く、"計画を立てること"が含まれることを意外に感じた人も多いのではないだろうか?

 もうひとつ意外っぽいことを言えば、「企画」というのは、ゴール(目標)を明確にし、それを達成するためにやるべきことを書き出していくことなのである。企画とは、実行するために計画を立てること、実は言葉の意味そのものなのである。

 既にビジネスで企画に携わっていて「どうもうまくいかない」と悩んでいる人がいたら、企画という本質を思い起こすべきかもしれない。プレゼンテーションの資料がうまく作れない、というのもこの問題と同じかもしれない。

 プレゼンテーションが企画を発表する場と言い換えれば、次の一手ばかり強調されたプレゼンテーションは魅力がない。ゴールがない、スケジュールや手順がない、ゴール達成を裏付けるプロセスがない、といった、ないないづくしになってはいないだろうか。

 企画もプレゼンテーションもゴールを最初に決定する。それからゴール達成のためのプロセスを埋めていく。プロセスは、追加したり、削除したり、入れ替えたり、決まるまでにはいろいろと変更しながら煮詰めていく。タブレットPCなら、考えが煮詰まったら公園のベンチや喫茶店に場所を移してできる。

ゴールを決めてからプロセスを決定する。追加したり、削除したり、入れ替えたり、決まるまでには、それらを自由に変更できるツールこそ便利だ。タブレットPCとOneNoteは場所を選ばず、ラフ書きを行うことができるツールだ
カードの順番を変えるようにプロセスの並び替えも簡単にできる。AとCをドラッグして入れ替えているところ

日常、自然とやっている企画

 企画とは、日常生活でみると同窓会や忘年会、ゴルフコンペの幹事などがいい例だ。

 すこしイメージと違ってガッカリするかもしれないが、それが現実だ。いつどこでどんなことをやるか(ゴール)をまず決定し、それまでに何をすべきかを計画することこそが「企画」なのだ。

 何をすべきかを具体的に挙げると、会場を調べ、会場を予約し、同級生の最新の住所を調べ、お知らせを作り、発送し、参加者リストを作り、未返却者には電話で確認し、参加人数を会場に連絡し、当日楽しめるイベントやゲームを用意する……やることをリスト化(To Doリスト、チェックリスト)する。

 仕事でイベントをプロデュースする場合もこれと全く同じこと。ゴールを決めて、やることをリスト出しし、いろんなリストを作り、進行をチェックして、来場者が印象に残るものを用意する。

エクセルで作成した会員リストをOneNoteで活用している例。このようなエクセルとの連携は次回詳しく解説するのでお楽しみに

 「計画を立てることが企画だとしたら、どんな仕事にも企画はあるじゃないか?」と思う人もいるかもしれない。その通り。営業における企画は営業企画、もしくは販促企画、製品開発には製品企画や商品企画、会社全体の計画に関わる経営企画など、見回せば企画はあちこちにある。企画はどんな仕事にも存在する。そして、中でも企画担当者という職業は、効率良くプロジェクトが進行する計画を立て、その進捗を管理し、目標実現の精度を上げる担当者なのである。

まず大切なのは概要やラフ作り

 当然のことだが、商品企画では市場でヒットすることを目標に商品づくりを行う。

 その過程(プロセス)において商品のデザインや梱包箱などのデザイン(工業デザインや意匠デザイン)を検討することになる。また、販促(販売促進)企画の中には、広告のデザインやイベントのブースのデザインに関わることもある。

 多くの場合、企画がコンセプトを立案し、デザインはデザイナーが創作する。デザイナーが創作したデザインを検討し、変更し、完成させていくことは進行である企画の仕事となる。だからこそ、企画担当者に必要なものは、デザインについてのセンスや時流をつかむ意識、市場のニーズ。市場のニーズを掴むのに必要なものは、企画担当者の思いこみではなく「情報」だ。

 情報はインターネットや雑誌、新聞などから集めることができる。できるだけ多方面から何重にも情報を検証した方が精度は格段に上がる。情報収集もまた、企画やプロデュースには必要な能力だと思う。

ゴールの目標を達成するために、市場のニーズを調査した結果と照らし合わせながらプロセスを作っていく。こんなキャラクター商品のアイディアのラフスケッチもその一つ。駅や空港での待ち時間、喫茶店など、ちょっとしたアイディアをラフに書き留めておくことにも使える

 タブレットPCでは、企画に関するプロセスを組み直したり、アイディアをラフ書きしたり、収集した情報を管理するのに多大に活用できるし、実際に行っている。やっているとすぐに行き詰まるので、気分転換に場所を変えたり、喫茶店やテラスなどで作業することもあるので、場所を選ばないペン操作にはとても重宝している。

第25回へ続く


著者紹介
神崎洋治:トライセック代表取締役。パソコンや周辺機器、インターネットに詳しいコラムニスト。シリコンバレー在住時は、取材による米ベンチャー企業の最新技術動向をレポート。ペン・コンピューティングデバイスの先駆けである「Palm Pilot」を、製品写真や開発者取材を通して日本のメディアに初めて紹介したひとり。
 マーケティングにも精通し、ライターやデザイナーとしても幅広く活躍中。主な著書は「ひと目でわかるMicrosoft Office OneNote 2003 マイクロソフト公式解説書」「学び直すDVDのしくみ」(日経BPソフトプレス)ほか。
 Webサイトではコラム「進め!インターネットマン21」を連載中。

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