PCからプリンタを使用するときの設定画面は、デザインこそ独特だが項目はシンプルで理解しやすい。用紙種類は自動判別と先述したが、さらに用紙サイズに応じて印刷品質まで自動設定される。普通紙とコート紙は標準画質、フォト用紙や光沢紙は写真画質といった具合だ。もちろん、用紙種類と印刷品質は手動でも設定できる。
スキャナ使用時のTWAINドライバもシンプルだが、操作性はよくない。プレビュー表示が小さく、一部分の拡大プレビューもできない。プレビュー上で読み取り指定した範囲と、実画像のズレも気になった。
解像度やスキャン画質の調整などは、詳細設定で別ウィンドウを開く必要がある。設定した内容がメイン画面に表示されず、プレビューにも反映されないのはどうかと思う。メイン画面だけで気軽に使うぶんには問題ないが、それ以外の設定をしようとしたとたんに使いにくくなる。
また、アプリケーションからTWAINとして呼び出すと、1回のスキャンでTWAIN画面が閉じてしまうのも欠点だ。複数の原稿をスキャンする場合、1回ごとにTWAINを呼び出さなければならない。ただし、付属ツールの「AIOナビ」を使い、任意のアプリケーションに画像を転送する設定にすれば、複数原稿の連続スキャンが可能だ。
それでは、印刷とスキャンの画質を見ていこう。まずは印刷画質だが、純正フォト用紙への6色最高画質出力は、従来のレックスマーク製品よりかなりよくなった。発色が赤やマゼンタに転ぶことがなくなり、色調がおおむね適正になっている。第一印象の違和感が消え、写真画質としてはまずまずだ。
ただし、少し突っ込んで眺めると弱点も多い。かなり明るく印刷されるため、シャドウが浮きやすい。プリンタドライバの設定画面では、このあたりの調整ができないので、あらかじめ印刷データを暗めに補正してから出力することで改善できる。
階調の表現能力もいまひとつなので、シャドウ側のトーンジャンプ、高彩度領域の色飽和が発生しやすい。細部の解像力も弱く、特に髪の毛といった細かい描写のリアリティに欠ける。風景写真や集合写真のL判、はがき印刷程度なら目立たないが、メインの被写体が大きく映ったポートレートや、2L判以上の印刷サイズではちょっと気になるレベルだ。
ランニングコストは、最新カタログの公称値(A4印刷可能枚数)から計算すると、4色カラーで約7.4円である。ただ、インク消費が少ない「下書きモード」の数字であり、印刷データの内容も分からないため、あまり参考にならない。
スキャン画質は若干アンダー気味で彩度が高いものの、フォトレタッチソフトで簡単に補正できる。細部の表現力も問題ない。雑誌ページなどのテキストをカラースキャンすると、文字の輪郭で偽色が多い。
X5270の長所は、コンパクトさと圧倒的な低価格だ。機能面では不十分な点はあるものの、スタンドアロンの単純なコピー用途がメインで、導入コストを少しでも安くしたいなら、検討の余地があるだろう。
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