今までのPowerShot Sシリーズは、他のPowerShotと比べてユーザーインタフェースにクセがあり、どことなくシリーズ中の異端児的な面があった。そもそもレンズカバーを開くと起動するという仕組み自体が、PowerShot Sシリーズだけの仕様だ。
だが冒頭にも書いたようにそれもS60で改善された。レンズカバーを開くと電源が入るという仕様は受け継がれたが、横長の円筒形状だった十字キーがしっかりと背面に円形十字キーとして設置され、中央に「SET」ボタンも用意された。そしてシャッターボタンの向こうに小さくついていたズームレバーも背面側(親指側)へ移動。シャッターボタンに指をかけたままズーミング操作ができる。
円形十字キーの回りには再生ボタン(電源オフ時に長押しすると再生モードで電源が入る)、ダイレクトプリントボタン、ディスプレイボタン、MENUボタンが並ぶ。Sシリーズ独特のボディ左側に「FUNC」、「MF」、測光モードボタンが縦に並ぶというデザインはそのまま受け継がれ、両手でしっかり持って撮るというコンセプトは変わらない。
FUNCキーでは露出補正、ホワイトバランス、ドライブモード、ISO感度、色効果モード、オートブラケット、発光量補正、画像サイズとクオリティと多彩な設定ができ、そこにおさまらない初期設定的な内容は、メニューボタンで表示されるメニューの中に用意されている。FUNCやMENUの表示が従来モデルとはややリニューアルされ、少しカラフルになり、動きに演出がほどこされた。
マニュアル志向のモデルだけあり、セットできる内容も多彩だ。
ISO感度は50から400。ホワイトバランスにはカスタム設定が用意されているし、別売のハウジングを使用した際に使うための、水中用ホワイトバランスも新たに用意された。CCDRAWモード時に、同時にJPEG画像を記録できるのだが、その際のJPEGの画像サイズもセットできる。
露出モードはシーンモードとプログラムAEと絞り優先、シャッタースピード優先AE、マニュアル露出が用意され、さらに任意のセッティングの組み合わせをひとつ記録できるカスタムポジションもある。
ただ、従来モデルから改善されなかった点もある。露出補正を行うのにFUNCメニューに入る必要があることや、プログラムAEからマニュアル露出のポジションにあるときは「9点測距AiAF」が使えないことだ(その代わり、画面上の任意のポジションにピントを合わせられる)。その辺はやや残念である。
もうひとつは再生の速度。もうちょっと速くなってもらえるとありがたい。特に縦位置で撮った写真を縦位置で表示してくれるのはありがたいのだが、その際ちょっと時間がかかる。これもキヤノンのデジカメ全体に共通する欠点といえよう。
液晶モニタは1.8インチ。バッテリーは従来と同じリチウムイオン充電池で、7.4V 720mAhの電圧が高いタイプとなっている。記録メディアはコンパクトフラッシュ(CF)で、マイクロドライブにも対応している。
PowerShot S60はコンパクト機ではあるが、無理に小さくするよりは必要最低限の機能をしっかり保持することを選んだデジカメだ。そこには高級高機能コンパクトとしての矜持がある。その上で望まれていた広角系のズームレンズを搭載してきた。
確かに普通のコンパクトデジカメに比べるとやや高価ではあるが、これだけしっかりした性能・完成度を持っていて、28ミリからのズームレンズを持つ製品は非常に数少ない。気軽に携帯したいけれども性能には妥協したくないという人は、まずこれを手に取ってみるべきだろう。
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