夏が来れば思い出すハンダのにおい

» 2004年08月03日 21時11分 公開
[今藤弘一,ITmedia]

 小学校のとき、夏休みの宿題で「1石ラジオ」を作ったことがある。当時毎月読んでいた「子供の科学」という雑誌に折りたたみの付録が付いており、そこに回路図とパーツ一覧が載っていたのだ。ピンが並んでいるだけのベークライト基板をかまぼこ板に乗せ、その上にパーツを配置してハンダ付けするという、きわめて原始的な作りだった。

 ハンダ付け作業は大変だったが楽しかった。熱にやられたトランジスタの屍を乗り越えて、クリスタルイヤホンからラジオが聞こえてきたときには感動した。そこからアキバ通いが始まり、パーツ類を漁っては作るという日々が始まった。

 さてそのパーツだが、もちろん今のようにネット通販で買えるなんてことはないわけで、秋葉原まで出向いて、一つ一つパーツを選んで買わなければならない。東京ラジオデパートにはよく通った。あそこでは今でもそうだが、並んでいるパーツの中から目的のコンデンサや抵抗を探し、レジに置いてあるような皿に一つ一つ部品を入れて買うわけだ。

 今はもうなくなっていたが、ラジオデパート2階奥の店にはよく行った(店名は忘れた)。店番のおばちゃんに、こうした流儀をすべて教えてもらった記憶がある。別に狙っていたわけではないだろうが(狙ってたのかな)、2センチ角のバリコン、静水のバーアンテナ、東芝の2SC372に至るまで、その店で全部揃えられたので重宝した。

 まあそんなところから「電子部品をいじる楽しさ」が始まり、そのうちマイコンブームに翻弄され、んでもってパソコンにつながるという、アテネ前だからいいかの論理の三段跳びとなってしまうわけだが、とにかく皆さんと同じでこの原稿を読んだ瞬間に、久々にハンダこてを握りたくなったんですよ。

 というわけで、久しぶりにラジオデパートを徘徊して見つけたのがこれ。

2センチ角のバリコンと、超アバウトな周波数が表示されている円形ダイヤル

 まるで30年前にタイムスリップしたかのようだが、まだ作っていたんですねえ。お店の人に聞いたところ、インドネシア産だとのこと。どういう用途があるのか分からないが、未だに生産されているとは奇跡に近い。これを元にラジオでも作ってみるかな。

 なお、息子の夏休みの宿題として、エレキットを買い与えた。これでIT戦士としての第1歩を着実に……。

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