赤坂にある出版社の編集部に勤務する細野由華(23歳)。この物語は、ひとりの新米女性編集者がタブレットPCを使って立派に成長していく過程を追ったフィクションである。大学の後輩から、ある日突然の電話。ゆかゆかが勤務する赤坂の出版社に就職を希望しているという。OG訪問を申し込まれたゆかゆかは、勢いでこれを引き受けてしまう。しかしこの後輩はかなり図々しいキャラの持ち主だった……
7月吉日、雨。
ある日、ゆかゆかのケータイに着信が! 相手は非通知設定です。こりゃイタ電か!? 校了時期でイライラ気味の由華ちゃんです……
細野 「(ひとりごと)だれかしら? またワンギリ業者? 最近多いのよねえ。でも、とりあえず出てみるか……」
後輩 「あ、由華センパイですか? 私、センパイの会社を受けてみたくてお電話したんです。どうですか、センパイの会社って?」
細野 「あら、ひさしぶり! 『どう』って言われても……。編集長が近くにいるし、ココじゃ詳しいことは……。だいたいあなた、なんで非通知にしてんのよ?」
後輩 「で、OG訪問なんですけど、いつなら空いてますか?」
細野 「えーっ!? OG訪問? いつの間に話が進んでんのよ! 第一、いま校了でいろいろと忙しいんですけど(イライラ)」
後輩 「あ、わかった。来週の月曜午後イチでどうですか? 軽ーくランチでもしながら。会社で話せないこともあるんでしょう、センパイ?」
細野 「そりゃ、ココじゃ言えないことはいろいろと……えっ、待ってよ。私、月曜日は、えーと」
後輩 「じゃ、私、他にもいろいろ電話しなくっちゃなので。よろですぅ。失礼しまーす」
細野 「えっ、あの」
ガチャーン。ブーッ、ブーッ……
細野 「ちょっと、何なのよ、もー」
編集長 「細野君、ココじゃ言えないことって、何かなー?」
細野 「いやあ……。デヘヘ」
後日。
昼下がりのアジア料理店にて。
後輩の訪問を受けて、まずはランチするふたり。ゆかゆか、タブちゃんでメールチェックしながら……
細野 「(ひとりごと)で、アタシ、なんでこいつにランチをおごらにゃならんのよお? 給料日前だっつーのにぃ」
後輩 「しっかし、センパイも変わってますよね。音大出て、IT系に行くなんてー。びっくりですよ」
細野 「なに言ってんのよ、こっちがびっくりよ。突然電話してきて、まったく。あんたも音大じゃないの」
後輩 「だってどこも受からないから……ココは何ていうか、ついでというか。ドコでもいいんですよ、不本意な会社でも」
細野 「なによ、それ。ちょっと編集部の人に失礼の無いようにしてよね。あたし、立場が一番低いペーペーなんだから」
後輩、ガツガツ食ってて、まるで聞いてない模様。ゆかゆか、心の中で「だみだこりゃ」です。
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